※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「シリコンバレー銀ショック飛び火、欧米に金融不安。どうなる日経平均?」
欧米に金融不安広がる
先週(3月13~17日)は、3月10日に米国でシリコンバレー銀行が、12日にシグネチャーバンクが破たんした影響で、欧米に金融不安が広がり、世界的に金融株が売り込まれました。
先週の日本株は金融株の下げが大きく、日経平均株価は3月10日先週金曜日終値の2万8,143円から1週間で810円下がって2万7,333円となりました。
ただし、金融不安が高まったことにより、FRB(米連邦準備制度理事会)が利上げに慎重になるとの見方が広がり、米国で2年金利が急低下しました。その恩恵で、先週はグロース株が買い戻され、ナスダック総合指数が大きく反発しました。
先週(3月13~17日)・先々週(3月6~10日)の日米株価指数の騰落率
シリコンバレー銀行破たんの影響で乱高下した先々週と先週の米国株の動きを以下にまとめます。
先々週(3月6~10日)、米国株が大きく下がった主な理由は二つあります。
【1】3月21~22日のFOMC(米連邦公開市場委員会)でFRBが0.5%の利上げをする不安
【2】シリコンバレー銀行の信用不安、同社株が急落。10日に破たん発表
先週(3月13~17日)、NYダウ(ダウ工業株30種平均)が続落する中、ナスダック(ナスダック総合指数)が大きく反発した理由は以下の二つです。
【1】金融不安連鎖を避けるためにFRBは3月利上げに慎重になるとの見方が出て、米2年金利が急低下。その恩恵でナスダック上場のグロース株が反発
【2】欧米で金融不安が広がり、金融株が引き続き売り込まれた。その影響でNYダウはマイナス
クレディ・スイス、ファースト・リパブリック・バンクに信用不安が飛び火
【1】欧州に飛び火
先週は、シリコンバレー銀行およびシグニチャーバンク破たんから、欧米の金融業に信用不安が飛び火しました。欧州では、かねてより経営不安がうわさされていたクレディ・スイス(CS)の株価が急落しました。
15日に筆頭株主であるサウジ・ナショナル・バンクの会長がCSに追加出資しないと述べたと伝わると、CS株を一段と売り込む動きが出ました。
スイス当局は、スイス第二位の銀行であるCSを救済するためにすぐに動きました。スイス国立銀行(スイス中央銀行)はCSへ500億フランの資金注入を表明しました。また、スイスのトップ銀行UBSが、CSを買収することが決まりました。
【2】米地方銀行にも信用不安が飛び火
米国の地銀株全般にも、信用を嫌気した売りが広がりました。破たんしたシリコンバレー銀行には逃げ足の速い大口の法人預金が多かったことから、法人預金の多いカリフォルニア州のファースト・リパブリック・バンクの株価が大きく下落し、信用不安が高まりました。
JPモルガンやバンク・オブ・アメリカなど大手11行が16日、合計300億ドルをファースト・リパブリック・バンクに資金支援を決めましたが、同行からの預金流出は大きく、信用不安は収まっていません。
米2年金利が急低下
欧米で金融不安が広がった原因として、FRBによる利上げピッチが速すぎたということがあります。0.25%ずつ年4回の利上げが普通のペースで、それだと年1%の利上げとなります。
年1%ずつ何年かかけて金利が大幅に上昇していくならば、銀行経営が急に悪化することはありません。ところが、2022年はFF金利が1年間で4.5%も上がりました。あまりに金利上昇のピッチが速く、長期国債が暴落したために、財務に問題を抱える銀行が出てきました。
こうした環境変化を受けて、3月21~22日のFOMCで、FRBは利上げを見送るという見方も出ています。あるいは、0.25%だけ利上げするとの見方もあります。
一時優勢だった、利上げ幅拡大(0.5%の利上げ)の可能性は、ほぼなくなったと見られています。先行きの利上げ停止・利下げも織り込み、金融市場で、米2年金利が急低下しました。
米10年・2年・FF金利推移:2021年1月4日~2023年3月17日
上の金利チャートには、金融市場の先行きの金利観測があらわれています。
【1】2022年1~9月:FF金利の上昇とともに10年・2年金利も上昇
短期的にも中期的にも長期的にも、金利水準が引きあがる見通しを織り込み。
【2】2022年10月~2023年2月:FF金利が上昇しても10年金利は低下
短期金利が上がっても、10年金利は低下。短期的に金利が上がっても、長期的には下がる見通しを織り込み。
【3】2023年3月:2年金利が急低下、FF金利を大幅に下回る
短期金利が上がっても、10年・2年金利は低下。2年・10年の期間で、金利低下が見込まれている。
シリコンバレー銀行ショック、金融不安が収まれば株式市場に追い風
利上げ加速の不安で下落していた米国株で、FRBが利上げに慎重になるとの見通しが出てきたことは追い風です。金融不安が収束するか、このままどんどん連鎖破たんが広がって不安が高まるかが、今後の株式市場のカギを握ります。
NYダウと日経平均推移:2020年末~2023年3月17日
シリコンバレー銀行が、株式市場に与える影響として、3月15日のレポートに書いた通り、以下四つを想定しています。
シリコンバレー銀行破たんの影響:四つのシナリオ
現時点で、利上げ停止の時期が早まる可能性は高くなったと考えられます。上のシナリオ1または2が実現する可能性が高まりました。
3月21~22日のFOMCで、FRBが利上げを見送れば、さらにその可能性が高まります。ただし、0.25%の利上げを行うと、シナリオ3または4の可能性も残ります。
金融危機が起こるか否かが、もう一つの注目点です。歴史的に、金融危機は不動産価格が急落して、銀行に不良債権が増大する時に起きています。現時点でまだ不動産関連の不良債権が増大していることはありません。
したがって、私は、FRBが早々に利上げを停止すれば、金融危機は避けられると考えています。つまり、私はシナリオ1の可能性が高いと考えています。
ただし、シナリオ2・3・4のリスクもあり、当面、FRBの動きを慎重に見守る必要があります。
日本株の投資判断
日本株の投資判断は変わりません。日本株は割安で長期的に良い買い場を迎えていると考えています。
ただし、米利上げが続くことによる短期的なショック安はまだあるかもしれません。時間分散しながら割安な日本株を少しずつ買い増ししていくことが長期的な資産形成に寄与すると考えています。
▼著者おすすめのバックナンバー
2023年3月16日:株主優待のトリセツ。3月優待、長期投資にふさわしいと考える3銘柄
2023年3月14日:激動するドル/円レート、為替を決定づける日米金利差
2023年3月1日:荒れる日経平均・S&P500には、積み立て投資術「ドルコスト平均法」が効く
本コンテンツは情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。銘柄の選択、売買価格等の投資の最終決定は、お客様ご自身でご判断いただきますようお願いいたします。本コンテンツの情報は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証したものではありません。本コンテンツの記載内容に関するご質問・ご照会等には一切お答え致しかねますので予めご了承お願い致します。また、本コンテンツの記載内容は、予告なしに変更することがあります。