株式投資で利回りを稼ぐ

 株式投資というと、「値上がり益ねらい」と思い込んでいる人が多いと思いますが、少し発想を転換していただきたいと思います。今の日本株には、値上がりはあまり期待できないが、安定的に高い配当利回りが期待できる銘柄が増えているからです。

東証の平均配当利回りと長期金利(10年国債利回り)推移:1993年5月~2023年3月(6日)

出所:QUICK、ブルームバーグより楽天証券経済研究所が作成、2022年3月までは東証一部平均、2022年4月以降は東証プライム平均

 昔の日本株は、確かに、配当ではなく、値上がりを狙って買うものでした。1993年ごろ、東証(東京証券取引所)一部の平均配当利回りは、1%もありませんでした。当時、長期金利(新発10年国債利回り)が5%近くあったことを考えると、株の利回りは低すぎて、話になりませんでした。

 ところが、その後、長期金利が下がり続ける中で、日本株の利回りは上昇し続けました。
【1】株価が下落したこと
【2】日本企業が株主への利益配分を増やすようになったこと

 の二つが、利回り上昇の主な要因です。

 今、長期国債の利回りがあまりにも低くなってしまったため、国債に投資する魅力はほとんどなくなりました。そこで注目されるのが、日本株の予想配当利回りの高さです。配当利回りから日本株を見直していい時代に入ってきました。

 東証プライムの平均配当利回りは3月6日時点で約2.5%です。ただし、個別銘柄で見ると、日本を代表する大型株で配当利回り4%を超える銘柄が多数あります。大型高配当利回り株から投資していったら良いと思います。

 ただし、一つ注意が必要です。株の配当利回りは、確定利回りではありません。業績が悪化して減配になれば、利回りが低下します。株価が大きく下がる可能性もあります。銘柄選択にあたっては、単に予想配当利回りが高い銘柄を選ぶのではなく、長期的に保有して減配になりにくい銘柄を選ぶことが大切です。

予想配当利回りの高すぎる銘柄は要注意:減配リスクを見分けるための5条件

 全ての上場銘柄から予想配当利回りが高い銘柄を抽出すると、上位には、予想配当利回り7%以上の銘柄もあります。一見魅力的ですが、ここは注意が必要です。予想配当利回りが高すぎる銘柄には、減配リスクが高いものも多いからです。

 減配リスクが低い高配当の有望銘柄は、予想配当利回りで3~5%辺りにたくさんあります。

 それでは、予想配当利回りの高い銘柄から、減配リスクの低い銘柄を選ぶ方法を解説します。条件を具体的に見てみましょう。減配リスクが低い銘柄には、一般的に以下の特色があります。

【1】時価総額が大きい
【2】収益力が良好(経常利益率が高い)
【3】財務が良好(借金が少ない)
【4】景気の影響を受けにくい業種(ディフェンシブ株)
【5】経営者が株主への利益配分に積極的

 5条件全てを満たす必要はありません。また、上記の条件を全てチェックするのは大変すぎます。実際に投資銘柄を選ぶときは、上の条件のうち最上位の条件【1】だけ満たす銘柄を選べば、投資候補として十分です。

 以下、覚えておいてください。

高配当利回り株の選び方
時価総額1兆円以上から選ぶだけでも良い

 予想配当利回りの高い銘柄から、減配リスクの低い銘柄をしぼりこむ時、時価総額が大きい(例えば1兆円超)という条件だけ満たすものを選んでも、まあまあ良い銘柄を選んでいると言えます。

 時価総額が1兆円以上の銘柄には、収益力が安定的で財務が良好な銘柄がたくさんあるからです。つまり、【1】だけ満たす(時価総額が大きい)銘柄を選べば、自動的に【2】収益力や、【3】財務でも、まあまあ良い銘柄を選んでいることになります。【4】と【5】は必須条件ではありません。【4】や【5】にも該当すれば理想的というだけです。

「不況の影響をうけにくい業種から選ぶ」が、条件【4】です。情報通信・医薬品・食品などです。

一つのバスケットに全ての卵を入れるな

 高配当利回り銘柄への投資では、特定銘柄に集中投資すべきではありません。どんな銘柄にも、固有のリスクがあり、減配リスクが低く見えても、減配になって株価が下がることはあり得ます。

 1銘柄に集中投資するのは避けた方が良く、また同じ業種の銘柄ばかり買うのも望ましくありません。減配になりにくい性質を持った銘柄で、なるべくたくさんの銘柄・業種に分散投資すべきです。

 具体的な投資銘柄の候補については、以下、「著者おすすめのバックナンバー」をご参照ください。

▼著者おすすめのバックナンバー

2022年12月22日:利回り3.6~5.0%!エネルギー安全保障に貢献する高配当利回り株3選
2022年12月21日:黒田サプライズ!日経平均急落でも銀行株急騰のわけ。三菱UFJFG「買い」継続
2022年11月30日:バフェットが日本の5大商社株を買い増し。好配当利回り株として「買い」継続