米利上げ0.25%、ややタカ派のパウエル発言でも米株上昇

 米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)は1日(日本時間2日午前4時)、0.25%の利上げを発表しました。FF(フェデラルファンド)金利の誘導目標を4.25~4.50%(中心4.375%)から4.50~4.75%(中心4.625%)へ引き上げました。利上げ幅は去年12月の利上げ(0.5%)より縮小しましたが、利上げは継続しました。

米10年・2年金利とFF金利の日次推移:2021年1月4日~2023年2月1日

出所:QUICK・ブルームバーグより楽天証券経済研究所が作成

 0.25%の利上げは、事前にFRBが示唆していた通りで、まったくサプライズ(驚き)はありませんでした。市場の関心は、今後の金融政策に集中していました。「あと何回利上げがあるか」が関心の焦点です。

 事前に金融市場に織り込まれていた市場の期待は、「あと1回0.25%の利上げがあるが、それで利上げは停止」「年後半には利下げもあり得る」と楽観的なものでした。

 それに対して、1月31日~2月1日に開かれ、利上げを決めたFOMC(米連邦公開市場委員会)声明文の内容は、「ややタカ派寄り」でした。利上げ発表後に行われたパウエルFRB議長の記者会見での発言も同様に「ややタカ派寄り」でした。

 FOMC声明文に「継続的な利上げが適切」という文言が入り、今後2回以上の利上げが続く可能性が示唆されたため、NYダウ(ダウ工業株30種平均)は一時前日比500ドル超下落しました。

 ところが、その後、パウエルFRB議長の記者会見の内容が伝わると買い戻され、1日のNYダウは前日比6ドル高の3万4,092ドルで引けました。IT銘柄の多いナスダック総合指数は、2%上昇しました。

 パウエル議長の発言は、市場期待よりは「ややタカ派寄り」でした。さらなる利上げが適切で、想定している経済環境が続けば年内の利下げはないことを示唆し、金融市場の行き過ぎた期待を戒めました。

 ただし、それでもパウエル議長の発言が伝わってから、米国株には買い戻しが増えました。「米景気が大幅に減速」「ディスインフレ(インフレ収束)が始まっている」「景気が減速しても労働市場は強い」などの認識を示したため、利上げ停止は近いとの期待をつなぐ内容と解釈されました。

 米景気が深刻なリセッション(景気後退)にならないままソフトランディング(軟着陸)する期待につながりました。

長短金利の逆転幅が拡大

 0.25%の利上げ実施により、長短金利(10年金利とFF金利)の逆転幅【注】はさらに拡大しました。

【注】長期金利は、短期金利より高いのが「普通の状態」です。ただしFRBが利上げ(短期金利の引き上げ)を続けると、短期金利が長期金利よりも高くなる「長短金利逆転」が起こることがあります。そうなると、金融引き締めによって米景気にブレーキをかけることになります。

米FF金利、長期金利、NYダウ月次推移:2004年1月~2023年2月(1日)

出所:ブルームバーグより楽天証券経済研究所が作成

 米国景気には、長短金利が逆転してから半年~1年くらい後にリセッション(景気後退)入りするという経験則があります。

 ただし、それはあくまでも経験則で、必ずそうなるわけではありません。今回、米景気は減速してきているものの雇用などは強いままで、これまでの経験則が当てはまらないという見方も根強くあります。

 それにしても長短金利逆転幅が開いてきたにもかかわらず、FRBがいつまでも利上げを続けるならば、米景気リセッション入りのリスクが高まります。今後いつ、FRBから「利上げ停止」についてのメッセージが明確に出てくるかが、今後の注目です。

日本株・米国株は良い買い場、少しずつ買い増す投資方針継続

 日本株・米国株への投資方針は、毎週述べていることと変わりません。日本株・米国株とも、長期的に良い買い場を迎えていると考えています。

 ただし、短期的なショック安はまだ終わっていない可能性もあるので、リスク管理が大切です。時間分散しながら日本株・米国株への投資を少しずつ増やしていくことが、長期的な資産形成に寄与すると考えています。

▼著者おすすめのバックナンバー

2023年1月31日:しぶとい米景気、クラッシュは回避?利上げ続くとリスクも拡大
2023年1月30日:注目は2月1日米FOMC、米景気「いい湯加減」か。インフレ低下、GDPは強い
2023年1月23日:日本株は長期投資で「買い場」、コアコア・インフレ率上昇が追い風