日経平均株価連動の2種類のETF(上場投資信託)を売買するという独自の手法で利益を出している前畑うしろさんのインタビュー後編をお届けします。今回は、前畑さんが実践するETF投資の長所や短所、さらに、投資初心者は何から始めるべきかについてもお聞きしました。

景気が悪いときでも勝つチャンスはある

──前畑さんが実践されているETF投資がどういうものか、おおよそ理解できました。そこでお伺いしたいのですが、この方法にはどのような良さがあると思いますか。

前畑さん 一番は、日経平均株価がどのような状況にあっても、利益を出すチャンスがあることでしょう。上昇トレンドであれば、どんな方法でも利益を出しやすいのですが、この方法は下降トレンドのときでも対応できます。

──景気が悪化しているときでも利益を出すチャンスがあるのはいいですね。

前畑さん はい、あと、ETF投資には倒産リスクがないというメリットがあります。個別株投資の場合、その会社が破綻したら、紙くずになってしまいますが、ETF投資にそのリスクはありません。私が売買している「1570」や「1357」は、日経平均株価を構成している225社が、全社同時に倒産しない限り、紙くずにはなりません。もちろん、暴落のリスクはありますが。

──最悪の事態を招くことはないわけですね。

前畑さん もう一つ、個別株投資との比較でいうと、日経平均株価の動向だけ目を配っていればいいというよさがあります。個別株投資を行っていたときは、会社四季報を読み漁って投資先を探したり、企業サイトから決算書をひっぱって業績を調べたりと、日々情報収集にいそしんでいました。

 PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)などのデータを調べたり、チャートを何時間も眺めたりもしていました。もちろん、今のやり方でも情報収集は重要です。前に話したように、日経平均株価の動きを予測するには、経済情勢や為替相場などを把握しておく必要がありますから。

 しかし、会社四季報を読み漁ったり、企業データを分析したりする必要はありません。この違いも大きいと思います。

──企業の決算書などを読むのが苦手という人でも始めやすい投資法ということですね。

前畑さん はい。ETF投資をしていれば自然と日経平均を気にするようになってきます。個別株だとその会社に関連した情報のみに限定されがちですが、日経平均だとニュースで常にピックアップされますし、社会経済全体の勉強になるので、幅広い知識が得られたり、情報アンテナが立つようになってきます。

 普通の投資信託デビューした後、何をしたらいいか分からずほったらかしにしている方は、日経平均連動のETF投資に挑戦してみてはどうでしょうか。

──では、反対にデメリットは?

前畑さん これも前に話しましたが、大きな利益をドカンと出すのは難しいということです。個別株投資であれば、短期間で何倍かに増やすことも不可能ではありませんが、ETF投資はそういうものではありません。昔の私のような、一獲千金を狙っているような人には向いていません。

──そういえば前畑さんが売買している「1570」は「日経平均レバレッジ・インデックス連動型」という名にあるように、レバレッジ型(指数の変動率に一定の倍数をかけた値動きをするタイプ)ですよね。

前畑さん「1570」は日経平均株価の2倍の値動きをするETFです。もう1つの「1357」も「ダブルインバース」は、日経平均と反対に2倍の値動きをします。。

──「1570」や「1357」のようなレバレッジ型であれば、大きく勝てるとまではいかなくても、それなりの利益を得られるのでは?

前畑さん それはそうです。ただ、私は投資できる金額に限界があるため、レバレッジ型でない通常のタイプだと利益が少なすぎると思い、その二つに投資しています。ただし、値動きが2倍になるということは、当然、リスクも2倍になるということです。損切りすることになったら、変動率の2倍の損失を被ります。

──ほかにも何かデメリットはありますか。

前畑さん 長期保有には向いていないことでしょう。日経平均株価が長期的にどう推移していくかを予測するのは非常に困難です。だから、長期保有を前提に買うのは勧められません。

──ご自身は買ってからどれくらいで売却するのですか。

前畑さん それは場合によります。買ってすぐ値が上がって売却することもありますし、1~2カ月後に上がって売ることもあります。ただし、通常は遅くても2~3カ月以内には上がるだろう、というもくろみで買います。それより先のことは予測しにくいですから。

まずはポイント運用やポイント投資を始めてみよう

──この投資法は、どんな人に向いていると思われますか。

前畑さん 投資信託は自分で考えるというより、お任せスタイルで長期投資が基本のため、購入後はただ見てるだけになりがちです。楽な半面、自由度が低いと感じている人にオススメできる方法だと思います。また、個別銘柄で結果が出ないし、がっつり企業研究するだけの時間がない人にもオススメだと思います。

 投資自体初めてだ、という方にも挑戦しやすい投資法だと思っているのですが、それでもやはりいきなり投資に挑戦するのが怖い、という方には、貯まったポイントで投資を疑似体験できる「ポイント運用」や、ポイントで実際の金融商品を購入できる「ポイント投資」から始めるのもオススメです。

スマホさくさくポイント投資、少額投資
2020年11月02日発売/ぱる出版/1,650円 (税込)

──ポイント運用とポイント投資はどう違うのですか。

前畑さん ポイント運用は、ポイントを現金化せず、そのままポイントで投資するというものです。うまくいけばポイントを増やし、買い物などに使うことができますし、万が一、うまくいかなくても自分が貯めたポイントを減らすだけなので、大きな痛手を被ることはありません。

 証券会社に口座をつくる必要もないので、だれでも手軽に始められるというよさもあります。スマホ一つで簡単に始められ、実際の金融商品の価格変動をもとにポイント額も上下するので、投資と同じような臨場感も味わえます。

 一方で、ポイント投資は、貯まったポイントで、株式や投資信託などの金融商品を買う方法です。こちらは証券口座をつくる必要がありますし、リターンもポイントでなく現金で受け取ります。

 この方法ならば、少額で始められるのもオススメできる点です。私は今もコンビニでアルバイトをしているのですが、私同様、非正規で働いている人や、フリーター、収入が低い方々も、少額でいいので投資を始めてほしいと思っています。

 少しでも生活にゆとりができるかもしれませんし、何よりも、先へ進もう、人生を良くしよう、という夢を持てるのが良いと思います。お金持ちでなくても生きていけますが、夢がなくては生きづらいと思います。経済面だけでなく、志(こころざし)を豊かにできるのが、投資の一番のメリットだと思っています。

──投資手法のユニークさはもちろんですが、枠にとらわれない自由な生き方にも感銘を受けました! 本日はありがとうございました!

>>前編「個人投資家&コンビニ店員 投資で叶えた「自由な生き方
>>中編「個人投資家&コンビニ店員 退場寸前でひらめいたオリジナル投資法​