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著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
【日本株】米景気冷え込み、FRBタカ派姿勢維持。米ハードランディング不安、再び

来年も米利上げ続く見通し、米国株・日本株とも上値重い

 先週(12月12~16日)の日経平均株価は、1週間で373円下落して2万7,527円となりました。米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)のタカ派姿勢があまり変わらず、来年も利上げが続く見通しとなったことが嫌気され、米国株・日本株とも売られました。

ナスダック・日経平均の動き比較:2019年末~2022年12月16日

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成、2019年末を100として指数化

 米国株を乱高下させているのは、米景気がハードランディングとなるかソフトランディングとなるか【注】の議論です。先週は再び、ハードランディングの不安が高まりました。

【注】米景気ハードランディング説・ソフトランディング説
◆ハードランディング説:高インフレと高金利によって米景気が急速に冷え込み、リセッション(景気後退)入りするという考え。
◆ソフトランディング説:米景気が堅調なうちにインフレが沈静化に向かい米利上げ停止が視野に入り、米景気は緩やかに持ち直すという考え。

先週注目の3大イベントの結果は、1勝2敗

 米景気の先行きを考える上で重要な指標が先週、三つ発表になりました。その内、米国株にとってポジティブだったのは一つ(11月のCPI〈消費者物価指数〉)で、あと二つ(FOMC〈米連邦公開市場委員会〉結果と11月の小売売上高)はネガティブでした。つまり、1勝2敗でした。

【1】11月の米CPI(12月13日発表)

 11月の米インフレ率(CPI前年比上昇率)は7.1%まで低下しました。まだまだ高水準ですが、市場予想より低下が大きかったので、発表後に米国株は上昇しました。今後、米インフレ率の低下が加速する期待を生じました。

米インフレ率(CPI前年比上昇率)推移:2020年1月~2022年11月

出所:米労働省

【2】FOMC結果(12月14日発表)

 FRBは0.5%の利上げを実施しました(FF金利の誘導目標を3.75~4.00%から、4.25~4.50%へ引き上げ)。0.5%の利上げは事前に示唆されていた通りでまったくサプライズはありませんでした。

 ただし、その後のパウエルFRB議長の記者会見で、引き続きインフレを警戒し、利上げを続ける姿勢が示されたことがネガティブでした。また、FOMCメンバーによる来年(2023年)末のFF金利見通し(中央値)が、4.6%から5.1%へ引き上げられたこともネガティブでした。

 既に、短期金利(FF金利)と、長期金利(10年金利)は逆転していますが、その逆転幅がさらに拡大することとなり、米景気を押しつぶす可能性が高くなったと判断されました。

米FF金利と10年金利、NYダウの推移:2004年1月~2022年12月(16日)

出所:ブルームバーグ・QUICKより楽天証券経済研究所が作成

【3】11月の米小売売上高(12月15日発表)

 11月の米小売売上高(季調済)は、前月比0.6%減少と弱い数字でした。消費が全般に弱まっており、クリスマス商戦が不振となる懸念が生じました。インフレ・金利上昇によって、消費が悪化し始めている可能性があります。

米小売売上高(前月比):2021年1月~2022年11月

出所:米総務省

ハードランディングかソフトランディングか、決着はまだ先

 10月以降、米指標が発表になるたびに、ハードランディング不安が高まったり、ソフトランディング期待が高まったりして、その都度、米国株は下がったり上がったりしてきています。

 先週発表の指標の中では、FOMCメンバーの2023年末のFF金利予測が5.1%に引き上げられたことが一番ネガティブでした。ECB(欧州中央銀行)も含め、世界中の中央銀行(除く日本銀行)が引き締めスタンスを取っていることが、株式市場にとってネガティブです。

 ただ今のところ、2023年の米景気がハードランディングとなるかソフトランディングとなるか、決定的な証拠はありません。米景気指標が発表になる都度、一喜一憂する展開は続くと考えられます。

日本株・米国株、時間分散しつつ買い増し方針

 結論は変わりません。日本株は割安で長期的に良い買い場を迎えていると考えています。ただし、短期では急落する局面がまだあると思われます。時間分散しながら少しずつ買い増ししていくことが、長期的な資産形成に寄与すると考えています。

 米国株も同様に、時間分散しながら投資していくことが良策と考えています。

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