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著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
3月決算 5つの注目点 円安・資源高・ロシア・中国・リオープン 企業業績にどう響く?​

1-3月業績に変調ある?新年度見通しは?

 米インフレ&ウクライナ・ショックの先行きが見通せないため、日米とも株の上値が重くなっています。そうした中、これから1-3月決算の発表が本格化します。10-12月まで好調だった日米の企業業績に何らかの変調があるか、注目度がきわめて高くなっています。

 日本株は、10-12月まで業績好調だったにもかかわらず、年明けから株価が大きく下がったため、東証プライムの予想PER(株価収益率)は約14倍まで低下しています。PERで見て、割安と判断できる水準です。ここから日本企業の利益が一転して悪化に向かうのでなければ、いずれ割安な株価が見直されて日経平均株価は戻りトレンドに入ると予想しています。

NYダウと日経平均の推移:2020年末~2022年4月19日(NYダウは18日まで)

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

決算発表、5つの注目点

 1-3月の業績にどんな変化があるか、慎重に見極める必要があります。また、3月期決算企業では、新年度(2023年3月期)の業績予想も発表されます。期初の予想は保守的(低め)に出す企業が多いものの、それでも新年度をどうみているか、おおまかな方向性はつかめます。

 1-3月の実績および新年度の予想をみる際、注目すべきポイントが5つあります。

【1】円安は日本企業全体の業績にプラスかマイナスか?

 私はプラス効果の方が大きいと考えています。ところが、最近「悪い円安」説が広まっていて、円安が企業業績にもマイナス影響を及ぼすと考える人もいます。輸出企業や内需企業にどういう影響を及ぼすか、決算発表から読み解いていきたいと考えています。

【2】資源高は日本企業全体の業績にプラスかマイナスか?

 資源関連企業の業績は好調が見込まれます。一方、原料高に苦しむ企業も増える見込みです。企業業績全体への影響で見ると、1-3月はまだプラスと見ています。安値在庫を保有している影響がプラスに出るからです。
 ただし、新年度になると安値在庫がなくなり、原料高が企業業績を直撃するようになります。新年度については、原料高の重しが大きくなると予想しています。
 個々の企業が資源高の影響をどうみているか、決算発表から読み解いていきたいと考えています。

【3】ロシア事業の損失がどれだけ出るか?

 1-3月決算でロシア事業からかなりの損失が出ると考えられます。ロシア向けの売上が減る、あるいはロシアでおこなっている事業の操業度低下(または操業停止)による損失だけならば、重大な影響はないと思います。事業の継続が不可能になることを前提に、減損損失を建てる必要があると、巨額の損失につながる可能性もあります。
 現時点で先行きを見通すことは困難ですが、ロシア事業を抱える企業が、困難な中でどのような決算を出してくるか、注目されます。

【4】中国事業の利益はどうなるか?

 中国景気の減速が鮮明になってきています。不動産大手「恒大集団」の経営悪化や、ロックダウン(都市封鎖)の影響が懸念されます。
 そうした中で、中国でビジネスを行う日本の「中国関連株」の業績にどのような変化があるか、注目されます。

【5】リオープン(経済再開)で消費回復見込めるか?

 まん防(まん延防止等重点措置)が終了し、国内消費に回復機運が出ています。その影響が新年度の予想にどう出るか、消費サービス関連産業の決算も注目されます。

日本企業の業績拡大は続くと予想

 私は、いろいろな不安はあっても、新年度も日本企業の業績拡大が続くと予想しています。したがって、日本株は、短期的には下値波乱があっても、長期的には良い買い場となっていると判断しています。その判断で良いか、これから本格化する3月決算の発表を慎重に見極める必要があります。

 参考までに再編前の東証一部、3月期決算主要841社の業績推移をご覧ください。

再編前の東証一部上場3月期決算、主要841社の連結純利益(前期比)

出所:各社決算資料等から集計。期初予想は5月時点の発表。実績は最終着地。2022年3月期の会社予想を公表していないソフトバンクGではQUICKコンセンサス予想を使用。楽天証券経済研究所が作成

 3月期決算主要841社の2018年3月期実績から2022年3月期(会社予想)までを掲載しました。各年度の期初会社予想と、実績(最終着地)を比較してご覧ください。期初→実績が増額修正となっている年度は日経平均が上昇、期初→実績が減額修正となっている年度は日経平均が下落する傾向が強いことが分かります。

 今期(2022年3月期)は、期初(2021年5月時点)会社予想が19.1%の増益でしたが、4月19日時点で、35.2%増益に増額修正されています。ところが、日経平均は前年度末(2021年3月末)対比で7.5%下落しています。今後、利益予想の減額修正が急速に増えない限り、日本株はいずれ業績を見直した買いが入ると予想しています。

 最後に、著書発売のお知らせです。4月18日、主婦の友社より私の著書「クボッチ先生のやさしい投資入門」が発売されました。

 私にとって初めて、マンガで解説する投資入門書です。投資信託・ETF(上場投資信託)・日本株・米国株・成長株・割安株・NISA(少額投資非課税制度)・iDeCo(個人型確定拠出年金)などなど、これから資産形成を始める人が知っておくべき内容を、ひと通りぎゅっと詰め込みました。ぜひ、ご参照ください。

▼著者おすすめのバックナンバー

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2022年3月30日:JT、ロシア事業のリスクが顕在化。予想配当利回り7.1%を信頼して良いか?