円安で米国株投信はどう動く?
前回の本連載では、足元の相場状況を「半値戻しの状態」と表現しました。その後、日米ともに株式市場は上昇を続け、特に米国株式については、円安進行によって円換算のリターンが押し上げられた結果、「半値戻し」どころか「全値戻し」状態と好調です。
そこで今回は、足元の円安進行について整理するとともに、米国株関連の投資信託(ファンド)とのこれからの付き合い方について解説します。
まずは、円安の進行が投資信託にどのような影響を与えるかについて、改めて確認しておきましょう。
以下の通り、多くの機関投資家が運用指標とする「米S&P500種株価指数」への連動を目指す代表的なインデックスファンドと、S&P500指数の現地通貨(米ドル)ベースの値動きをざっくり比較すると、直近10日前後でリターンの差が拡大していることが分かります。
円安の進行は、S&P500指数連動型だけでなく、全世界株式型や、主要なハイテク株で構成する「米ナスダック100株価指数」連動型など、外貨建て資産に投資する投資信託にとってはプラスに働きます。
このように、為替変動で運用成績が押し上げられ、日本の投資家には心地よい環境が続いていますが、「インフレ」と、それに対処するための「利上げ」という2大要素に揺れ動く世界経済を俯瞰すると、決して楽観視はできません。本連載でも度々言及してきた通り、米国株、とりわけハイテク成長株の構成比率が高いS&P500指数にとって、利上げは逆風となるためです。
(※金利と株価のメカニズムについて、詳しくはこちら:「値下がりした投資信託、本当に今が買い時?」)
前回の本連載で、株価が上昇しているからといって集中投資したり、レバレッジ(てこ)をかけたりしてはいけないと警鐘を鳴らしたのも、以上の理由からです。
目的別、つみたてNISA×米国株投信の付き合い方
では、これから米国株投信とどのように付き合っていけば良いのでしょうか。既に米国株投信を保有している場合を想定し、二つのケースに分けてみていきます。
ケース1:つみたてNISAで米国株投信を積み立てている場合
つみたてNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)は、資産形成の第一歩を踏み出すために作られた制度のため、非課税枠に限度があり、選択できる投資信託のラインアップも絞られています。重要なのは、選択する投資信託で個性を追求することではなく、「インフレに負けないよう、十年単位の時間をかけてコツコツと資産をつくる」という意識をもつこと。
したがって、つみたてNISA口座内で米国株インデックス型投信を積み立てている場合は、現状のまま積立を継続すればよいでしょう。商品の入れ替えを検討する必要はありません。なお、積立額が毎月の限度額に到達していない場合は、増額を検討すると良いでしょう。
ケース2:つみたてNISAからステップアップして投資額を増やしたい場合
つみたてNISAは、いわば「最初の1杯」、あるいは、「乾杯のための1杯」のようなもの。肝心なのは「2杯目以降」、つまり、つみたてNISAの枠を超えた課税口座での投資です。この段階では、資産形成で達成したいことをもう少し明確にし、自分の好みや意志を商品選びに反映していきます。
不透明感漂う今のタイミングで投資額を増やすなら、米国株インデックス型投信に追加投資するよりも、インフレ対抗策としての金(ゴールド)など実物資産のほか、高配当バリュー(割安)株などに目を向け、分散投資にかじを切ることをおすすめします。
既に保有している米国株投信が苦戦を強いられる局面が来たとしても、資産全体の大きな毀損(きそん)を回避できる可能性が高まります。
※具体的な投資信託は以下の記事でご紹介しています。
- 投資信託で、インフレに強い「コモディティ」に分散投資
- 「投資信託で金(ゴールド)投資」を失敗しないための3つの重要ポイント
- 【2022年版】積立投資家の波乱相場の乗り切り方 - 今注目のバイプレーヤーたち
複数の投資信託を管理するのが煩わしいという場合は、らくらく投資を通じて、あらかじめ資産が分散されたバランス型投信に投資するというのも一つの方法です。らくらく投資では、九つの質問に答えることで、用意された五つの投資信託から自分に合ったものが提案されます。自分では気付きにくいリスク許容度をチェックするのにも活用できます。
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