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著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「米国株積立、設定日どうする?投信ならいつでもOK、ETFは月初1日を避けた方が無難」
米国株をグロース株投資のコアに
いつもは日本株の投資判断について書いていますが、今日は米国株の投資魅力について私の考えをお伝えします。米国株は、グロース(成長)株投資のコア(中核)として投資していくべきと考えています。これには5つの理由があります。
【1】米企業が世界のITインフラを支配
GAFAM(グーグル・アマゾン・フェイスブック<メタ>・アップル・マイクロソフト)など世界のITインフラを支配する企業は、米国に集中しています。今後、世界でAI(人工知能)、IoT(モノのインターネット化)による技術革新が加速するに従い、米IT大手の成長が続くと考えられます。
GAFAMと比較すると、日本のIT大手の業績は冴えません。世界標準を取ることができず、狭い日本で過当競争に陥り、収益が悪化している例が増えています。
中国には、アリババ・テンセント・バイドゥなど、中国市場を支配して巨大化したIT企業があります。ただし、米IT大手のように、世界のインフラを支配する力はありません。
【2】シェール・オイル&ガス革命の恩恵が米国に大きい
米国はかつて、世界最大の原油輸入国でした。ところが、シェール・オイルの増産が続き、2018年には世界最大の産油国となりました。
かつて採掘することができなかったシェール層から大量のシェール・オイル&ガスを産出するようになった効果はとても大きく、米国経済の競争力を高めました。その恩恵が、今も続いています。
【3】移民パワーが、米国の成長力を高めてきた
トランプ元大統領が「移民拒否」を打ち出し移民が入りにくくなる懸念が一時出ていました。それでも米国が世界でもっとも移民を受け入れてきた国で、これからも移民なしでは成り立たない国であることに変わりはないと思います。
移民は当初、低賃金の労働力として米国経済を支え、一定の貯蓄を作ると有効需要(消費)の拡大に寄与します。また、米国発の巨大ITベンチャーの創業者に移民が多いことからもわかるように、米国経済の発展に移民は多大な貢献をしてきました。
【4】資本主義、民主主義を重視する国であること
トランプ元大統領が「保護貿易、反グローバリズム」を打ち出したことで、米国が資本主義から遠ざかっていく懸念が一時出ていました。それでも、世界中の資本主義国を比較すると、米国がもっとも規制が少なく自由な競争経済を実現している事実に変わりはありません。
資本主義・民主主義は、株式投資でパフォーマンスを得ていくのに必要な仕組みです。それを守っている国である米国は、グローバル投資のコアとして外せないと思います。
【5】米国には世界中の成長企業が上場している
米国に投資するだけで、世界中の成長企業の多くに投資することが可能となります。なぜならば、米国には世界中の成長企業が上場しているからです。
たとえば、中国のIT大手アリババも、米国で最初に上場して時価総額を大きく伸ばしました。米国上場は、世界中の成長企業が目指してきたことです。米国が世界の金融の中心で、成長企業に潤沢な成長資金を提供できるからです。
NYダウは過去32年日経平均を上回るパフォーマンスを実現
最近、米国株の強さに対し日本株の上値の重さが目立っていますが、NYダウ(ダウ工業株30種平均)が強く日経平均株価が弱いのは今に始まったことではありません。
日経平均がバブル相場で最高値(3万8,915円)をつけた1989年12月末から比較すると、日米の株価パフォーマンスには以下のように、大きな差がついています。
日経平均・NYダウの動き比較:1989年末~2022年1月(18日)
上のチャートを見ると、NYダウがバブルのように見えますが、そうではありません。バブル相場では、利益を無視して夢だけで株価が上昇しますが、NYダウは利益を無視して上昇してきたわけではありません。1株当たり利益の増加を反映して、上昇したのです。
株価の割安度をはかる代表的な指標にPER(株価収益率)があります。1株当たり利益の何倍まで株価が買われているかを示します。
世界各国の主要株価指数は、だいたいPER10倍~20倍の範囲で評価されてきました。米国株のPERは、だいたい13~22倍の範囲で推移してきました。現在その上限に近いところで評価されていますが、割高感はありません。
ただ、よく見ると、NYダウも32年間継続して上昇相場だったわけではありません。
株価が大きく上昇したのは、1990~2000年までの10年と、2010~2020年までの10年です。その間の10年(2000~2010年)はほぼ横ばいで上昇していません。2回の暴落(ITバブル崩壊とリーマンショック)に見舞われたことが影響しています。
しかし、2010年以降、米国株は利益も株価も継続的に上昇してきました。シェール・オイル&ガス革命、世界のITインフラ支配、大型減税などによって、米国企業は利益を拡大させ、それに伴って株価が上昇してきました。
米国株&日本株両方に積立が良いと思う理由
ここまでの話を聞くと、「日本株に投資しても仕方ない、米国株だけでいい」という印象を持たれた方もいるかもしれません。
私は、日本株と米国株両方に分散投資した方が良いと思います。バブル崩壊を乗り越え、構造改革を経て、財務・収益力が格段に改善して割安になった日本株は、ここから投資妙味が高くなると考えています。
日本株と米国株に対する、私の基本的な考えは以下の通りです。
◆日本株:バリュー(割安)株の宝庫。グロース株もあるが少ない。
◆米国株:グロース株の宝庫。バリュー株もあるが少ない
株式相場では、バリュー優位、グロース優位が歴史的に交互に繰り返してきています。バリュー・グロースに分散、国別では日本株・米国株に分散投資することが、長期的に安定的な資産形成につながると考えています。
近年は、日経平均もNYダウと同等の上昇率となっています。アベノミクススタート以降で見ると、ほぼ同じ上昇率です。
日経平均・NYダウの動き比較:2012年末~2022年1月(18日)
ただし、NYダウには30銘柄しか入っていないことから、近年は米国を代表する指数とは言えなくなってきています。
米国の主要大型株で構成されるS&P500種指数、グロースをけん引しているGAFAMなどハイテク企業の多いナスダック総合指数の方が米国株全体の動きをよく表しています。
積立投資の設定日:投信ならいつでも良いが、ETFは月初1日に集中しない方が無難
個人投資家の中には個別銘柄に投資するリスクを負いたくない方がたくさんいます。「日々の仕事や生活に集中したい、投資で心を惑わされたくない」という方は、個別銘柄ではなく、インデックス投信やETF(上場投資信託)に毎月一定額、積立で投資していくのが良いと思います。
日本株なら日経平均やTOPIX(東証株価指数)、米国株ならS&P500種指数やナスダック総合指数などに連動する投信またはETFを選ぶのが良いと思います。
積立投資の設定日(毎月買い付けをする日)ですが、投信の場合ではいつでも良いのですが、ETFで積み立てる場合は、月初1日など特定の日に偏らず、月央~月末まで含め、幅広く設定日を分散した方が良いと思います。
投信の場合は必ずNAV(純資産価額)で買える仕組みになっているので、いつの設定でも何の問題もありません。ただし、ETFの場合は、株と同じように市場で買い付けるため、あまり月初1日に集中しない方が良いと言えます。
設定が集中している日は、多少買い値が高めとなる可能性もあります。実際にはほとんど気にするほどの違いはありません。ただ、もし可能ならば別の日に分散させた方が無難かもしれません。
繰り返しになりますが、投信の場合は月初1日に設定が集中してもなんの問題もありません。ETFだけ少し意識して、買付日をずらした方がいいかもしれない、というお話をしました。
なお、長期資産形成のための積立投資を、投信でやるかETFでやるかは、一長一短ありどちらがいいとは一概に言えません。信託報酬が低く流動性の高い海外ETFは長期積立投資にふさわしい投資対象と考えています。
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