全財産90万円から会社員が資産2億円?

 今さまざまな投資本が出版されています。その中の1冊に投資本らしくない表紙の『どん底サラリーマンが株式投資で2億円・いま息子に教えたいお金と投資の話』(ダイヤモンド社刊)があります。著者は50代半ばのサラリーマン投資家、DokGen(ドクゲン)さん。

 35歳で離婚してシングルファーザーになり、子育てしながらの会社勤め。残業代も出ないという八方ふさがりの環境にもかかわらず、全財産90万円から2億円以上の資産を築くまでの道のりが描かれています。

 投資ブログ「資産90万から2億円達成。普通のサラリーマンの『ちょっとだけアーリーなリタイア』への独り言」でも、投資家のために情報を発信するDokGenさんにインタビューを敢行しました。

DokGenさんインタビュー前編
DokGenさんインタビュー中編
DokGenさんインタビュー後編

「別れた妻を見返したい」で資産1億円を目指す

──著書、読ませていただきました。奥さまの浮気がきっかけで離婚し、その奥さまを見返したいという一心で、株式投資で1億円をつくろうと決意されたとか。

DokGenさん はい、不純な動機で、申し訳ないです(笑)。でも株式投資は、社会人になってすぐ始めました。私は農学部出身で、社会情勢とか経済とか疎いほうだったんですね。で、株を始めれば社会勉強になるかなと。

 ちなみに最初に買ったのは、食品会社のキッコーマンで、15万円ほど利益を出しました。ただ、ろくに勉強もせず、投資雑誌の推奨銘柄を買うとか、そんな感じでしたから、その後は勝ったり負けたりで、パッとしなかったですね。

──それでも投資で1億円貯めようと考えたのですか?

DokGenさん 一介の会社員に過ぎないし、人より秀でたものがあるわけでもないので、妻を見返すといっても、ほかに思いつかなかったんです(笑)。なので、勝算なんてまったくありません。ただ、ひょっとしたらいけるかもしれないという根拠が一つだけありました。

 当時2000年ごろ、株式投資を取り巻く環境が大きく変わりつつあったんですね。以前は証券会社に電話して注文だったのが、インターネットでリアルタイムに取引できるようになったのです。

 それと、そのころはまだ株式投資の主力層が高齢者でした。つまり、インターネットを使いこなせる人はそれほど多くなかった。その点、私はIT部門で働いていたので、インターネットは日常的に使い、そういう意味で、周りの投資家より有利かなという思いがありました。

4年間の倹約生活を送り、軍資金1,000万円

──では、株投資は順調だったのですか?

DokGenさん それがそうではないんです。というのも、1億円稼ぐぞと目標を立てたものの、ほとんど軍資金がなかった。妻が預金通帳とキャッシュカードを持っていってしまったので(笑)。

 その上、離婚直後は自暴自棄になって、証券口座に残っていた資金を全額、株投資に突っ込んでいたのです。その直後に米国同時多発テロが…。買ったばかりの株は暴落、気付いたら残高は90万円になっていました。

 このときはほんとに、泣きたい気分でした。とはいえ、いつまでもメソメソしていられない。投資で大きく利益を出すため、軍資金づくりに取り掛かりました。

──90万円でも株投資はできますよね?

DokGenさん 例えば若い人が株を始めるなら90万円でもぜんぜんOKだと思いますよ。むしろ少額から始めたほうがいいかもしれません。でも、私の目標は1億円です。さすがに90万円からでは限界があります。それと離婚当時、5歳の息子を私が育てることにしたので、なけなしの90万円全額を株に充てるわけにはいかないという事情もありました。

──軍資金の目標はいくらだったのですか?

DokGenさん 1,000万円です。当時の給与は年収400万円程度。小さい息子と2人暮らしで、残業ができなかったため、離婚後、ガクッと収入が減ったんです。

 でも、4年ほどで1,000万円貯めました。私の勤務先には社宅制度があり、住居費がほとんどかからなかったことが資金づくりに貢献しました。もちろん、外食をしないとか、会社の飲み会には参加しないとか、服はファストファッションにするとか…いろいろ細かく倹約しました。

口座を見るたびに1,000万円単位で増えていた

──その1,000万円を元手に、アッという間に1億円どころか、2億円以上になったんですね?

DokGenさん 軍資金1,000万円の達成までの生活は相当苦しかったのです。ただ、私のような給与をもらう会社員でも必死になればできると思いました。

 それから1年と少しで2億3,500万円になりました。

 ただ、ここはあまり触れてほしくない部分です(笑)。というのも2億円を超えたのは一瞬。欲を出して8,000万円まですぐに減らしてしまいまして。私にとっては稼いだというより、やらかしたという思いのほうが強いんです。

──とはいえ、2億3,500万円はすごい金額です。

DokGenさん あのときは実力で稼いだわけではなく、運に恵まれていただけでした。投資先を考えていた矢先、仕事で参加したセミナーで、「サイボウズ」の社長の話を聞く機会がありました。当時はまだ小さな会社でしたが、「日本のグループウエアでトップになる」と話されていて、この会社は伸びるだろうなと直感。

 それで1,000万円の大半を注ぎ込んだら、ジワジワ株価が上がり、アッという間に10倍を超えたんです。途中から負ける気がしなくなり、信用取引も始めたので、一気に増えました。

──サイボウズだけで2億円超え?

DokGenさん いえ、ほかにもいくつか。それらは金額的にはたいしたことはありませんが、やはり5倍くらいに上がりました。証券会社の口座を見るたびに1,000万円、2,000万円と増えていくので、怖いくらいでしたね。当時は、後に再婚した妻とつきあっていたのですが、「今日は300万円しか増えなかった」とか普通に話してましたから(笑)。

──DokGenさんはITに強かった。いわば自分の強みを生かして銘柄を選んだわけで、それが勝因の一つでは? 決して幸運だけではないと思います。

DokGenさん それはそうかもしれませんが、株価チャートを分析するとか、財務状況を調べるとか、そんなことさえせず直感だけ。それにあのころは、新興のIT企業が次々と誕生していて、プチITバブルのような様相を呈していました。今、振り返ると、その波にうまく乗れたのが最大の要因だと思います。

──ところが、その後、天国から地獄に突き落とされるわけですよね。次回はその詳細からお伺いしたく思います。

DokGenさんインタビュー前編
DokGenさんインタビュー中編
DokGenさんインタビュー後編