10万円から始める高利回り株投資、スーパースクリーナーで銘柄選択

 日本株は、配当利回りから見て割安で、長期投資対象として魅力的と考えています。ただし、銘柄選択は大切です。1つの銘柄に集中投資するのではなく、配当利回りの高い株なるべく多数に、分散投資した方が良いと思います。

 そこで今日は、10万円以下で買える高配当利回り株をご紹介します。楽天証券ウェブサイトでは、さまざまな条件を指定して、その条件に合った銘柄をスクリーニング(抽出)する「スーパースクリーナー」というツールを提供しています。スーパースクリーナーの使い方は、以下をご参照ください。

「スーパースクリーナーを使った銘柄分析方法を動画で解説」

 今日は、スーパースクリーナーを使って選ぶ、10万円以下で投資できる高配当利回り株をご紹介します。以下の手順で絞り込みます。

【1】10万円以下で買える1,475銘柄を抽出

 まず、東証一部・二部・東証マザーズ・ジャスダック・名証に上場する銘柄について、「投資金額10万円以下」の条件を指定すると、1,475銘柄が出てきます。この1,475銘柄が、2021年12月8日時点で、最小投資単位100株を買うのに必要な金額が10万円以下の銘柄です。

【2】予想配当利回り3.5%以上の77銘柄を抽出、証券業を除き72銘柄に絞り込み

 10万円以下で買える銘柄から、配当利回りが高いものを抽出します。「配当利回り(予想)が3.5%以上」という条件を加えると、銘柄数は、一気に77まで減ります。これが、10万円以下で買える高配当利回り株の候補となります。
 私は、コンプライアンス上の理由で、証券業に属する銘柄の投資判断を述べることができませんので、証券業に入る5社を除外します。すると、72銘柄が残ります。

【3】さらに時価総額が1,000億円以上の銘柄に絞り込む

 高配当利回り銘柄を選別する際、注意すべきことがあります。配当利回り(予想)は高ければ高いほど、良いというわけではないことです。なぜならば、株の配当利回りは、確定利回りではないからです。業績が悪化して、減配(1株当たり配当金を減らすこと)になり、株価が下がることもあります。
 したがって、上記リストから高配当利回りの投資銘柄を選ぶ時は、見かけ上の配当利回りの高さではなく、減配リスクが低いと判断される銘柄を選ぶべきです。
 減配リスクの低い銘柄にさらに絞りこむ方法は、いろいろあります。減配リスクが低い銘柄には、一般的に以下の特色があります。

◆時価総額が大きい
◆経常利益率が高い
◆自己資本比率が高い(借金が少ない)
◆景気の影響を受けにくい業種(ディフェンシブ株)
◆経営者が株主への利益配分に積極的

 すべてを満たす銘柄はありません。上記の1つか2つを満たせば十分と考えます。今日は、一番単純でわかりやすい「時価総額が大きい」(時価総額1,000億円以上)という条件で絞り込みます。
 その方法で絞り込むと、30銘柄が抽出されます。

10万円以下で買える、時価総額1,000億円以上、配当利回り3.5%以上の30銘柄

コード 銘柄名 配当
利回り
株価
12月8日
1株当たり
配当金
1605 INPEX 4.0% 989.0 40.0
1719 安藤・間 4.5% 885.0 40.0
1802 大林組 3.6% 880.0 32.0
1803 清水建設 3.2% 723.0 23.0
3167 TOKAI HD 3.5% 858.0 30.0
4005 住友化学 4.4% 550.0 24.0
4202 ダイセル 3.9% 825.0 32.0
4902 コニカミノルタ 6.1% 493.0 30.0
5020 ENEOS HD 5.0% 438.9 22.0
5406 神戸製鋼所 4.5% 581.0 26.0
6178 日本郵政 5.7% 884.3 50.0
7167 めぶきフィナンシャルG 4.7% 235.0 11.0
7182 ゆうちょ銀行 4.9% 963.0 47.0
7186 コンコルディアFG 4.2% 431.0 18.0
8306 三菱UFJ FG 4.4% 634.5 28.0
8308 りそなHD 4.8% 440.1 21.0
8334 群馬銀行 4.1% 343.0 14.0
8359 八十二銀行 3.7% 375.0 14.0
8377 ほくほくFG 4.3% 808.0 35.0
8410 セブン銀行 4.6% 238.0 11.0
8418 山口FG 4.3% 648.0 28.0
8593 三菱HCキャピタル 4.7% 559.0 26.0
9412 スカパーJSAT HD 4.2% 426.0 18.0
9506 東北電力 5.0% 803.0 40.0
9507 四国電力 3.7% 816.0 30.0
9508 九州電力 4.7% 859.0 40.0
9509 北海道電力 4.1% 491.0 20.0
9831 ヤマダHD 4.0% 396.0 16.0
出所:銘柄は楽天証券スーパースクリーナーで抽出、配当利回りは1株当たり年間配当金(会社予想)を12月8日株価で割って算出。配当予想を発表していない神戸鋼・ヤマダHDは、市場予想を使用。配当金と株価の単位は円

 上記のような配当利回りの高い銘柄群のリストを見る時の注意点です。配当利回りは確定利回りではありません。利回りが高いほど投資魅力が高いと考える方がいらっしゃいますが、そうではありません。財務内容が良好で、収益基盤がなるべく堅固な銘柄を選んだ方が、長期的なパフォーマンスは良い結果になります。

私が投資してみたいと考える6銘柄

 スクリーニングで選んだ銘柄に、機械的に投資するのは得策とはいえません。配当利回りが高い銘柄には、将来、減配になるリスクもあるからです。ここから、さらに絞り込む必要があります。

 私は、1987年から2013年まで、日本株ファンドマネージャーをやっていました。私がもし今、ファンドマネージャーならば買ってみたいと思う銘柄は、6銘柄あります。以下です。

筆者がファンドマネージャーならば買ってみたい6銘柄

コード 銘柄名 業種 配当
利回り
最低
投資額
1605 INPEX 鉱業 4.0% 98,900
4005 住友化学 化学 4.4% 55,000
5020 ENEOS HD 石油 5.0% 43,890
8306 三菱UFJ FG メガ銀行 4.4% 63,450
8593 三菱HCキャピタル リース 4.7% 55,900
9412 スカパーJSAT HD 情報通信 4.2% 42,600
出所:筆者作成、配当利回りの根拠は前表、最低投資額は12月8日終値で最低投資単位100株を買うのに必要な金額(円)

 上記6銘柄は、予想配当利回りが 4~5%と高いことに加え、以下の通り、PER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)などの株価指標で低く据え置かれているバリュー(割安)株です。PERは10倍割れ、PBRは解散価値といわれる1倍を割り込んでいます。今後、割安な株価が見直されて、株価が上昇する余地もあると思います。

上記5銘柄の予想PERとPBR:12月8日時点

コード 銘柄名 PER:倍 PBR:倍
1605 INPEX 7.4 0.50
4005 住友化学 6.4 0.83
5020 ENEOS HD 5.0 0.55
8306 三菱UFJ FG 7.7 0.45
8593 三菱HCキャピタル 8.4 0.65
9412 スカパーJSAT HD 9.5 0.51
出所:PERは、12月8日株価を今期1株当たり利益(会社予想)で割って算出。各社決算短信より楽天証券経済研究所が作成

投資したいと考える理由

 以下、6銘柄を選んだ理由を、簡単にコメントします。

【1】 INPEX

 以下のレポートを参照してください。
2021年12月1日:利回り3.7~6.2%、12月決算の高配当株5選。INPEXを「買い推奨」に引き上げ

【2】 住友化学

 電子材料・医薬品など高付加価値のスペシャリティケミカルの比率が高く、収益基盤は堅固。ただし、石油化学の利益が不安定で、サウジアラビアで展開するペトロ・ラービグ社の収益低迷が懸念材料。

【3】ENEOS HD

 ENEOS(エネオス)というと、皆さまが思い浮かべるのは、ガソリンステーションかもしれません。ガソリン小売業は、同社の、たくさんある事業の中の1つにすぎません。
 同社はエネルギー総合企業で、川上(原油資源開発)から川下(石油製品)まで、一貫生産できる強みを持ちます。また、銅鉱山の経営も行っており、最近の銅価格急騰でもメリットを受けます。
 ENEOSのメインビジネスは化石燃料の利用ですが、時代の流れに合わせて脱炭素にも取り組む総合エネルギー企業として私は評価しています。ちなみに、脱炭素に向けて水素ステーション運営も行っており、水素関連銘柄として注目されることもあります。高配当利回り株としてじっくり長期投資して良いと考えています。

【4】三菱UFJ FG

 以下のレポートを参照してください。
2021年11月17日:利回り4.3-5.4%!3メガ銀行、好決算発表でも株価がさえないのはなぜ? 

【5】三菱HCキャピタル

 三菱商事・三菱UFJ FGを大株主とするリース会社。情報関連機器や産業機械に強みを持ち、収益基盤は安定的。航空機リースの一部に貸倒れが発生する懸念があるものの、航空機リース事業全体では収益を維持していける見通し。

【6】スカパーJSAT HD

 スカパー事業の利益は不安定ですが、衛星事業(JSAT)で安定収益を稼いでいます。衛星事業では5月20日、NTTとの業務委託契約を締結し、持続可能な社会の実現に向けた、新たな宇宙事業を行うことを発表しました。
 成長性はあまり期待できませんが、安定的に収益を稼いでいく高配当利回り株として長期投資していく価値があると考えています。