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著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
[動画で解説]日経平均急落、オミクロン警戒 どこまで下がる?
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外国人の先物売りで日経平均急落

 先週(11月22~26日)の日経平均株価は1週間で994円下落し、2万8,751円となりました。南アフリカ共和国で新たに見つかった新型コロナウイルスの変異型「オミクロン」を、最も警戒レベルの高い変異型にWHO(世界保健機構)が指定したことを受けて、世界的にリスクオフ(株などのリスク資産を売る動き)が拡大。日経平均先物に外国人と見られる売りが増えて、日経平均も急落しました。

 オミクロンは、感染力が強く、毒性も強い可能性があります。もしオミクロンが世界で猛威をふるい、世界にロックダウン(都市封鎖)が再び広がると、来年の世界景気が腰折れするリスクが高まります。

 南アの隣国ボツアナの他、ベルギー、イスラエル、香港などで感染者が見つかっており、既に世界に感染が広がっている可能性もあることから、警戒が高まりました。

日経平均週足:2020年1月6日-2021年11月26日

出所:MSⅡより楽天証券経済研究所が作成

 コロナ後の景気回復を受けて昨年大きく上昇した日経平均は、今年は景気回復が続いているにもかかわらず、上値が重くなっています。これが、単なるスピード調整か、あるいは来年の世界景気悪化を前もって織り込む動きか、見方が割れています。

 私は、単なるスピード調整と見ています。去年の日経平均上昇ピッチが速すぎたので、業績が追い付いてくるまでスピード調整していると見ています。9月決算発表でわかった通り、日本の企業業績は好調で、日経平均はいずれ高値をトライすると予想しています。

 これに対し、今の株安が次の景気後退を織り込む動きと見る向きもいます。中国景気悪化、米インフレ高進リスクが警戒されています。それに、南アで見つかった新変異型オミクロンの蔓延が加わると、世界景気が腰折れするリスクが高まります。

オミクロンが世界景気に与える影響、楽観シナリオと悲観シナリオ

 現時点で、南アの新変異型がどのくらい世界景気に悪影響を及ぼすか、予想するのは困難です。そこで、楽観シナリオと悲観シナリオに分けて、考えてみました。

楽観シナリオ

 既存ワクチンに、かなりの感染防止効果があれば、ワクチン接種が進んでいる先進国にオミクロンの感染が広がらないと考えられる。既存ワクチンに十分な予防効果がない場合でも、オミクロンに効果のあるワクチンを新たに開発することは、短期間にできると考えらる。一部報道によると、米ファイザーと独ビオンテックは、新変異型に対応するワクチンを開発して出荷することが100日以内に可能と表明。

 RNAワクチンの開発能力が高まった今、どのような変異型が出てきても、短期に対応するワクチンを開発することは可能になっていると考えられる。経済的に余力のある先進国では、新しいワクチンを開発しすぐに無償で全国民に接種可能とすることで、経済に深刻なダメージを受けることを回避できると予想。

悲観シナリオ

 既存ワクチンはほとんど予防効果なし。効果のあるワクチンをすぐに開発することができず、オミクロンが世界中に蔓延。

 そもそもオミクロンが検出される前から、欧州では新型コロナの感染再拡大が進んでいた。オミクロンとともに従来型コロナも感染拡大し、世界にロックダウンが広がる。

 私は、楽観シナリオに近いことが実現すると予想しています。したがって、日経平均は2万8,000円近くまで下がる可能性がありますが、そこは「買い場」と考えています。

 ただし、前例のない変異型の影響について、まだわからないことが多すぎるので、悲観シナリオに近いことが起こるリスクもあります。楽観・悲観どちらのシナリオが実現しそうか考えながら、割安な日本株を少しずつ時間分散しながら買い増ししていく方針で良いと思います。

リスクオフ局面では、米国株よりも日本株の下落率が高くなる

 グローバル投資家から見て、日本株は世界景気敏感株なので、世界景気に不安が出て世界株安になる局面で、グローバル投資家はまず日経平均先物を売ってくる傾向があります。そのため、世界的なリスクオフ局面では、以下の通り、日経平均の下落率がNYダウより高くなる傾向があります。

 グローバル投資家から見て、米国株はディフェンシブ株なので、世界景気に不安が出る局面では、資金を米国株に集めておこうとする傾向があります。

日経平均とNYダウの動き比較:2012年末~2021年11月26日

出所:2012年末の値を100として指数化、QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 上のグラフをご覧いただくとわかる通り、2013年以降の9つの世界株安局面で、日経平均がNYダウより大きく下げていることがわかります。2020年2~3月のコロナショックの急落局面だけが例外です。

 さて、日経平均はどこまで下がるでしょうか? 私は、2万8,000円近くまで下がるリスクはあるものの、そこからさらに大きく下がるとは予想していません。


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