米国株、日本株投資家・エルさん×2022年の2大注目銘柄

▼エルさんプロフィール

 投資歴30年を誇るベテラン個人投資家。大手金融機関に入社して2年目に株式投資を開始。しばらくは日本株がメインだったが、2015年ごろ、米国株投資を本格化。それを機に大きく資産を増やし、1億円を達成した。2019年には会社を早期退職してFIRE(Financial Independence, Retire Early:経済的自立と早期リタイア)を実現。現在は、米国株、日本株両方に投資する傍ら、投資ブログ【L】米国株投資実践日記やツイッターで投資情報を発信している。今年2月には著書『英語力・知識ゼロから始める!【エル式】米国株投資で1億円』を刊行した。

今年はどんな年だった?

Q:2021年を振り返って、どんな年でしたか?

A:米国株以上に日本株で大きな成果を上げた1年に!

 2021年は、2月に初めての著書を刊行、4月に転居、8月に京都に長期ステイ、10月に白内障手術による視力回復など数々のイベントがあり、充実した1年になりました。私は2019年に長年勤めた会社を早期リタイアしたのですが、それらを実現できたのもFIREに踏み切ったからだと思います。

 投資に関しても1月から10月までの10カ月中7カ月はプラスで終えましたし、年間を通して安定した成績を残すことができました。

 私は、家族4人の生活費などの支出後ベースで、毎日マネーフォワードで時価を管理しているのですが、それによると我が家の純資産は年初来で+20%を達成しました(2021/11/19時点)。今は給与収入があるわけではなく、運用で得た利益の一部を生活費に充てているので、実際にはもう少しプラスになっています。

 ただし、私が得意としている米国株投資は、今年大きく上昇したエネルギー株や銀行株をポートフォリオに組み入れていないこともあり、指数対比ではアンダーパフォームで終えました。

 一方、会社を辞めた後、再開し、現在は米国株以上に時間を割いている日本株投資のほうは、コンスタントに利益を積み上げ、指数を上回るキャピタルゲインを獲得できました。2021年は米国株よりも日本株で大きな成果を残せた1年でした。

来年はどうなる?

Q:2022年はこんな年になる!という予測を教えてください

A:2021年に起きた問題は継続すると想定。米国株よりも日本株に期待!

 2021年は新型コロナウイルス、インフレ、半導体不足、サプライチェーン混乱、中国不動産などが話題となり、株式市場に大きな影響を及ぼしました。それらはすべて2022年に持ち越されそうですから、今後も動向を注視しておく必要があるでしょう。

 米国株についていうと、先日、FRB(米連邦準備制度理事会)がテーパリング(量的緩和の縮小)を開始しましたし、新たな局面を迎える可能性があるように思います。基本的にはボックス圏で推移するなかで、「さすがの米国株も今年はダメか」と思わせる局面がやってくるかもしれません。

 一方、日本株については、各企業の業績回復が顕著であり、グローバル展開する有力メーカーなどの株価は堅調に推移すると予想しています。米国株を差し置いて日本株だけ大きく伸びるということはないにせよ、相対的に見ると米国株よりも日本株のほうがパフォーマンスがよい1年になると思います。

 私自身、米国株に関しては、これまで同様、生活必需品セクターの配分を多くするなど守りを固めたポートフォリオを堅持することになるでしょう。日本株のほうは、ときに機動的なスイングトレードを併用しながら、小さくとも確実に利益を積み上げていく戦法を取っていくつもりです。

 特定のセクターで勝負するのでなく、日本株全体に分散投資する。そして、市場の行き過ぎを感じたら、ある程度リスクを取って積極投資していく──。そんなイメージを思い描いています。

2022年の2大注目銘柄その1:自身の最注目銘柄は!?

Q:2022年に最も注目している銘柄を1つ教えてください

A:ソニーグループ(6758)

 1つということなら、ソニーグループ(6758)を挙げます。1946年に資本金19万円、従業員数約20名という規模でスタートを切ったソニーは、高度成長期を経て、日本を代表する企業へと成長を遂げました。

 しかし、ITバブル崩壊以降、かつての勢いを失っていきます。世界のブランド評価においては高い評価をキープする一方で、業績の低迷を余儀なくされます。日本の代表選手であるソニーでさえ、もはや世界では通用しないのか──。そんな嘆きがそこかしこから聞こえてきました。

 しかし、CEO(最高経営責任者)に日本人が戻った頃から復活の道を歩み始めます。もともと高度な技術力を有していて、優秀な人材を多く抱えるだけに簡単には死ななかった。本業はもとより、ゲーム、音楽、映画、半導体関連、金融などの分野でも成功を収め、再び輝きを取り戻しているのです。

 現在、ソニーは1兆円程度の利益を出せる企業へと変貌を遂げています。そしてそれにともない株価も上昇を続け、2021年には過去最高値水準に到達。いまや時価総額は、日本企業ではトヨタに次ぐ第2位まで登りつめています。

 日本企業はまだまだ死んではいない。世界に伍して戦える力を秘めている企業が数多くある──。そのことを証明する意味でも、ソニーにはより一層の活躍を期待しています。

2022年の2大注目銘柄その2:投資初心者におすすめする銘柄は!?

Q:2022年から投資を始める初心者に向けて、おすすめの銘柄を1つ教えてください

A:コストコ・ホールセール(COST)

 こちらは米国株のなかから選んでみました。日本でもおなじみの有料会員制小売量販店、コストコ・ホールセール(COST)です。

 前述したように米国株は、米国政府の金融政策などを踏まえると先が読みにくいのが実情です。となると、値動きの大きいハイテク銘柄などは勧めにくい。私自身、景気に左右されにくい生活必需品セクターの銘柄をメインに据えると話しましたが、投資初心者にもそういう銘柄をおすすめします。

 なかでもイチ押しが、小売チェーンとしてはウォルマートに次ぐ第2位の規模を誇るコストコです。ここ数年、取扱商品を絞った上で調達コストとほぼ変わらない低価格で提供して、会員数を増やしています。株価も、一時、コロナ禍で下げたもののすぐに回復し、現在は史上最高値の水準にあります。投資初心者が安心して長期保有できる銘柄の、筆頭候補といえるでしょう。

初心者投資家へアドバイス!

Q:これから投資を始める人に向けて、投資方法や心構えのアドバイスを教えてください

A:少額でも株を買ってみることが大事。自分になじみのある企業から選んでみよう!

 A社の株価が史上最高値を更新した、B社の株価が大暴落した…。連日メディアではこんなニュースが飛び交っています。投資ビギナーの方は、そんなニュースや乱高下する株価を目の当たりにすると、うまく立ち回れるだろうか、大金を失うことになるのではないかなどと思うかもしれません。それは無理のないことでしょう。

 しかし、私は、少額でいいのでとにかく買ってみることを勧めます。なぜなら、自分で株を持つと、自然と経済ニュースなどを見るようになるんです。その会社のことだけでなく、景気動向なども気になってくる。

 結果、投資に対する感度が磨かれ、株式市場と実際の保有先の関係なども実感できるようになります。それで、多少なりとも自信がついたら、無理のない範囲で投資額を増やしていけばいいでしょう。

 なお、最初に買う銘柄は、自分にとってなじみのある企業、例えば普段商品やサービスを使っているとか、よくお店を利用しているとか、そういう企業を選ぶといいと思います。また、最初は個別株だけでなく、インデックス投資を併用することもおすすめします。

■エルさんインタビュー
米国株で資産1億円を実現!-米国株投資家エルさんインタビュー前編
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エルさんが厳選!米国株最強銘柄10選-米国株投資家エルさんインタビュー後編