※このインタビューは2019/08/06に公開した記事となります。

 会社勤めをしながらIPO(新規公開株)をメインに株式投資を行い、2億円の資産を築き上げたカリスマ投資家、JACKさんインタビュー、後編をお届けします。今回はJACKさんが最も得意とするIPO投資について聞きました。

IPO投資の勝率は8割を超える

──ここからはIPO投資についてお伺いします。そもそも株式投資を始めたのもIPOがきっかけだったとか?

 年配の方なら、1987年にNTTが上場したときの騒ぎを覚えていると思います。1株119万7,000円という、今では信じられないような価格で売り出されたのですが、多くの個人投資家が殺到し、初値は160万円に。さらに2カ月後には318万円の高値がつきました。これによって日本中に「NTT長者」が生まれ、大ブームとなりました。実は私もその長者の1人だったんです。当時はまだ大学生でしたが、株をやっていた親のすすめでIPOに応募したところ当選したんです。

──それを元手に投資を始めるようになったのですね?

 はい、ですから、もしあのとき当選していなかったら、投資とは無縁の生活を送っていたかもしれません。

──その後もIPO狙いだったのですか?

 いえ、最初のうちはトヨタ自動車やソニーなどの大型株を購入していました。成績はまあまあでしたよ。まあ、当時は日経平均株価が右肩上がりでしたから誰がやっても勝てたと思いますが(笑)。

──では、本格的にIPOに取り組むようになったのは?

シンプレクス・テクノロジーのIPO成功体験をきっかけに、IPO熱が高まった。複数の証券会社へのマメな応募と情報収集で当選確率もアップ。

 2002年に営業マンに勧められてシンプレクス・テクノロジー(現シンプレクス)という会社のIPOに応募しました。まったく知らない会社でしたし、あまり期待はしていなかったのですが、なんとこれが公募価格の5倍の値がついたんです。それを機にIPOをメインに考えるようになりました。

──JACKさんが考えるIPO投資の魅力は?

 これはもう誰に聞いても同じ答えが返ってくると思いますが、「労せずして大きな利益を得られること」につきます。過去の例を見ても、多くの場合、初値が公募価格を上回ります。だから、公募価格で買って初値で売るだけで儲かる可能性があるんです。

──2018年に上場した企業について調べてみたら、初値が公募価格を下回ったのは96社中14社のみでした。勝率はゆうに8割を超えます。ちなみに実際には無理ですが、万が一、96社すべての抽選が当たったら2,000万円以上の利益が出ますね。

 そう、だからぜひやってみるべきです。応募するのにお金がかかるわけでもないですし。

大型案件の抽選に当たり、1,200万円の利益を得た

──JACKさんはIPOの募集があると、必ず応募するのですか。

 いえ、すべてではないですよ。なかにはどう考えても公募価格を上回るとは思えない銘柄もありますから。その場合はもちろんスルーします。ただ、そういう銘柄は当然、不人気ですから、証券会社の営業マンから「買いませんか」と電話がかかってきたりします。

──買わないのですか?

 そりゃあ、買いませんよ。だって公募数に満たないから基本、電話をかけてくるわけです。IPOに限っては営業マンの誘いに乗るのは原則、禁物です。

──でも、シンプレクス・テクノロジーは営業マンに誘われて購入したんですよね(笑)?

 実はあのときは主力銘柄の1つが大きく下落し、含み損が数百万円に膨らんでいたんです。だから、藁にもすがる思いでしたし、よくIPOの世界も知らなかったし、新規のお客さん扱いで、結果的にはよかったわけですが、本来は証券会社から薦められることですから、やっちゃいけないことだと思います。
 もし、今、同じ状況であったら、お断りして、結果を見て、地団駄を踏んでいたと思います。

──では反対に、必ず応募するのは?

 まずはやっぱり大型案件です。誰でも知っているような大企業や有名企業、あるいはNTTのような政府放出銘柄とか。こうした銘柄は公募価格を切る可能性はとても低いと思います。日本郵政グループやJR九州、佐川急便あたりが好例ですね。私は「鉄板IPO」と呼んでいます。
 また、昨今では当選し難いですが、以下の11カ条に当てはまるものが多ければ応募しますね。

・人気のある業種である
・将来性がある
・マザーズ上場銘柄である
・CVや大株主売り抜け防止のロックアップ期間もしくは条件がある
・そもそもの公開株数が少ない
・公募株数より売り出し株数は少なめである
・業績や利益が順調に伸びている
・赤字企業ではない
・PER(株価収益率)は妥当である
・上場目的が、換金性を含め露骨ではないか
・主幹事証券会社が信頼できるか

──成功事例を教えてください。

 最近だと2012年に上場した第一生命ですかね。公募価格は14万円でしたが、「間違いない!」という確信があったので600株獲得しました。金額にすると8,400万円分です。結果、初値は16万円に。14万円から16万円なので上昇率はさほどではありませんが、大金を投じたため、手数料や税金を除いて約1,200万円の利益を得ました。

──1,200万円はスゴいですね!

 あと、2015年に日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の郵政3社が上場して話題になりましたが、このときも3社そろって初値が公募価格を上回ったため、合計335万円の利益を得ることができました。

主幹事をはじめ、複数の証券会社に申し込む

──IPOで稼ぐには「当選する」という大きな難関を突破しなければなりませんよね? とくにJACKさんが言う鉄板IPOともなると、応募数が半端ではないでしょうから競争率はそうとう高くなるでしょう?

 大型案件は公募数が多いので、一概に倍率が高くなるとはいえませんが、でも、まあ、狭き門なのはたしかでしょう。ましては日本郵政グループ上場以後、IPOがいかにおトクか広く知られるようになったのでライバルが増えていますし。

──JACKさんはかなり当選確率が高そうですが、何か秘訣はあるのですか。

 これをやれば当選確率が飛躍的に上がるという、特効薬のようなものは残念ながらありません。ただし、これをやれば何%か確率が上がるというものはあります。だから、そういう工夫をいろいろやってみることです。

カンニング投資も、サラリーマンでも、漫然と投資していては成功できない。こまめな情報収集と少額でも利益を追求するアグレッシブさが、JACKさんの成功の秘訣!

──例えば?

 通常、IPO株はA証券とB証券とC証券に1万株ずつという具合に複数の証券会社に割り当てられます。したがって購入希望者はそれらの証券会社に申し込んで購入することになります。ところが、ほとんどの銘柄は売り出される株数より購入希望者の人数のほうが多いため、抽選になるわけです。

──つまり、A証券だけでなく、B証券やC証券にも応募したほうが確率は高まると?

 そういうことです。そのIPO株を引き受けている証券会社に片っ端から応募すればチャンスは広がります。

──いろんな証券会社に口座を作っておくと便利かもしれないですね。

 ただし、1点留意したい点があります。通常は、それぞれの証券会社に均等に割り当てられるわけではなく、そのIPOの幹事役を担う主幹事証券会社に多く割り当てられます。ですから、まずは主幹事証券会社に応募し、余裕があったらほかにも応募するというのがベターかもしれません。

──ほかに何かありますか。

 実はIPO株の配分は必ずしも抽選で行われるわけではありません。ネット証券の場合はほとんどが抽選ですが、対面証券だと営業マンの裁量1つということもあります。

──つまり、どの顧客にIPOの権利を譲るか、営業マンに委ねられることもあると?

 はい、そういうことです。だから、あえて対面証券に口座を作り、預け金額を多額に入金したり、普段なら間違いなくお断りする金融商品を購入するという結果的に担当営業マンの成績が上がるという割と古風な方法も有効です。

──JACKさんはそういう努力もされているのですか?

 最近はちょっとサボり気味ですが、時には不要な金融商品を買って恩を売るとか、いろいろやってましたよ(笑)。今思えば、それなりに成果もあったと思います。ちなみにIPOの利益は営業担当マンが薦められる株を購入して、裏でこっそりと空売りをするというようなリスクヘッジもします。笑

──でも、まあ、投資初心者は正攻法で攻めるのがいいかもしれないですね。

 そうですね、とにかくあきらめずに応募し続けることでしょう。新規上場の数は年間数十から100近くありますから、いつかチャンスをつかめるはずです。

──初心者の方や、忙しいサラリーマンでも、できる範囲でいろいろな投資方法があるということですね! 本日はありがとうございました。

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