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経済的安定の早期確立、今までの世代になかった発想法

 先日、女性誌の取材でFIRE(Financial Independence, Retire Early:経済的自立と早期退職)についてコメントを求められました。メインターゲットは30歳代の独身女性という雑誌の編集部が、FIREについて記事を作ろうと考えるのは、とても興味深いことです。

 話はRE(早期リタイア)よりも、FI(経済的独立)を早期に確保することの重要性に集中しました。目の前のクレジットカードの支払いに汲々(きゅうきゅう)としていたり、むしろ赤字の家計をキャッシングでつないでいるような状態から早く脱し、数千万円の資産を持って働くことができるようになれば、これほど自由で気持ちよいことはないのだ、という話です。

 私は、FIREムーブメントのもっとも大きな意義は、若い世代が経済的安定を早期に確立することにあると考えています。

 これは、おそらく、歴史的に見ても重要な転換点だと思います。私たちの親世代、あるいはそれより昔にさかのぼっても、「経済的安定を若いうちから積極的に確保する資産管理」というのは、ほとんど意識されてこなかったからです。

 資本主義社会での庶民は、借金をしてその返済に追われつつ、幸せを買うものだと理解されてきました。クレジットカードの利用に始まり、住宅ローンに至るまで借金が先にありました。先に資産形成をするという観点はなく、むしろそのほうが損だという考え方です。

 しかし、今の時代に高金利の借金をすることは賢い選択とはいえません。むしろ、私たちの人生を拘束する重荷となります。イヤな仕事を辞めて、リセットすることすら許されません。「社畜」という言葉がありますが、経済的自由がないからこそ、私たちは働くことをやめられないのです。

 そうした中、人生が私たちの想像を超えて長期に及ぶものであることや、終身雇用制度のような安心がもはや薄らいでいることが明らかになり、資産形成の必要性を私たちは強く意識するようになってきました。

 そして、ネット証券の拡大や投資信託の利便性の向上、NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)やiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)のような制度の整備など、個人が投資を行う環境も整ってきました。

 こうした背景も踏まえ、早期から計画的に資産形成を行うムーブメントが生み出されているのではないでしょうか。

FIREのチャレンジが不成功でも、あなたのマネープランは成功する

 その意味では、1億円に近い資産規模を40~50歳代に達成するというFIREのゴールを硬直的にとらえる必要はありません。

 私たちは100万円貯まれば、自分は借金に追われず、資産形成ができるのだという自信がつきます。そしてイヤな仕事(法律違反を犯す企業とか)を拒否して違う会社に移る余裕が確保できます。

 1,000万円貯まれば、自分のキャリアをリセットして再上昇を目指すような「学び直し」もできます。仕事を1年休んで学費を払うこともできるからです。病気やケガ、ストレスへの不安もまとまったお金があれば、和らぎます。

 早期リタイアして働かない期間を長期にわたって作るのは、経済的安心を徐々に拡大していった先にある、究極的なゴールといえるわけです。

 つまり、REがうまくいかなくてもFIが成功できれば、あなたのマネープランとしては、親世代と比べて大成功といえるのです。

FIREチャレンジ1:年長者には相談しないほうがいいかも

 もう一つ、FIRE取材のエピソードを紹介しましょう。

 これは別の媒体の記者と話していたとき聞いた話ですが、FIRE成功者は喜んで取材には応じてくれるものの、自分の素性を明かさない傾向にあるそうです。

 メディアの記者は取材をするとき、本名や写真を使わせてもらうことを求めます。ネットの記事ではペンネームやイラストを使うことはあっても、伝統的な媒体ほど、そうしたことはまれです。

 しかし、記者が記事に本名を載せていいかと聞くと、FIRE成功者の多くが断るのだそうです。「顔バレ」「身バレ」はしたくないというわけですが、その気持ちはよく分かります。ねたまれるリスクもあれば、お金を貸してくれと言われるリスクもあるからです。

 FIREへのチャレンジの段階から、その努力はあまり周囲に話さないほうがいいかもしれません。年長者や近親者が、あなたのがんばりを肯定的に評価し、応援してくれるとは限りません。

 むしろ「そんな早く辞めて後悔するぞ」とか「目の前の楽しいことにもっとお金を使えばいいのに」と邪魔をするかもしれません。

 もしかすると、FIREチャレンジは孤独な冒険になるかもしれません。しかし、あなたの夢をかなえる大きな変革が始まる第一歩です。

 情報源はたくさんあります。ネットのコラム、いくつかの書籍(FIRE本に限らず、ライフプラン、マネープランに関する書籍を読むことをおすすめします)、チャレンジャーのブログなどを参考に、ぜひ経済的安定を早期に確保する取り組みをスタートしてみてください。

夢で終わらせるな!とにかく「第一歩」を踏み出すこと:FIREを実現する6つのチャレンジ

 取材で聞かれるお題として「FIREを目指すなら、まず何をすべきでしょうか」と聞かれます。これを今回のコラムの最後に紹介したいと思います。

 夢を実現したいのなら、とにかく第一歩を踏み出すことが大切です。私は以下の6つを掲げます。

年収増のチャレンジ

チャレンジ1

年収増につながる資格を取るべく、受験講座を申し込む

チャレンジ2

年収増の可能性があるか、転職アプリに登録してみる

節約のチャレンジ

チャレンジ3

家計簿アプリをインストールして、自動記帳を開始する

チャレンジ4

無感動消費、割高消費を削り、貯蓄力を高める

投資のチャレンジ

チャレンジ5

iDeCo、もしくはつみたてNISAを開設、満額の積み立てをする(できればそれ以上を目指す)

チャレンジ6

自動引き落としで、国内外に分散投資された投資信託を買い続ける

 3つのテーマについて2つずつ掲げてみましたが、ここに掲げたテーマを3つチャレンジできれば、あなたのFIREは一歩目を踏み出すことになるでしょう。

 FIREチャレンジに必要なのはとにかく実行です。毎月1万円を貯められない人に100万円の資産形成はなく、年収100万円のアップを目指さない人に、年50万円の貯蓄ペースアップは実現しません。

 そして、投資のリスクと向き合わない人には、いつまでたっても元本が増えない資産形成を行うことになります(元本が減ることもないが)。

 ぜひ、あなたの夢を終わらせないようにしてください。

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