中国の不動産大手「恒大集団」の信用不安を嫌気して欧米株式が急落

 9月20日、欧米株式は軒並み大きく下落しました。NYダウは前週末比614ドル(1.8%)安の3万3,970ドルとなりました。一時970ドル安まで売られましたが引けでは下げ幅を縮めました。

 ドイツDAX指数は前週末比2.3%安、イギリスのFTSE指数は0.9%安となりました。恒大集団の信用不安を嫌気して投資家心理が悪化しました。

 これを受けて、CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)日経平均先物(12月限)は、日本時間の21日午前6時時点で2万9,510円まで下がっています。今日の日経平均は、3万円を割れて始まる見込みです。

 巨額の負債を抱える「恒大集団」の信用不安が高まっていることが、中国経済にとって重大な懸念材料となっています。2020年末時点で日本円換算33兆円以上の負債をかかえたまま、恒大集団の資金繰りが悪化しています。

 もし破綻となると、連鎖的な破綻が広がり、中国経済に大きなダメージが及ぶ可能性があります。世界の金融市場への悪影響も懸念されます。

 日本だと、波及効果が大きい巨大企業が破綻しそうになると、金融危機の連鎖を防ぐために公的資金の投入が検討されますが、中国では事情が異なります。中国政府は十分な資金を有していますが、今のところ支援する意図は表明していません。

 この問題がどのような形で決着するかわかるまで、中国株・中国経済の不安に留まらず、日本や世界の株式市場にもネガティブな影響が及ぶ可能性があります。

 中国は恒常的に経常黒字を稼ぎ、対外負債は少なく、対外純資産が高水準です。したがって、恒大集団の信用不安だけで国家全体が揺らぐことはありません。

 それでも、恒大集団の信用問題の処理を誤ると、一時的に世界全体の金融システムへ不安が広がる可能性はあります。しばらく、この問題の進展を注意して見る必要があります。

先週までは好調だった日本株

 先週(9月13~17日)の日経平均は1週間で118円上昇し、3万500円となりました。4週連続の上昇となりました。外国人の買いが日本株の上昇をけん引しました。政局相場が続きました。

 29日投開票の自民党総裁選への期待に加え、日本でワクチン接種率が急速に高まっていること、10月から沖縄を除き緊急事態宣言が解除される見通しが出てきたことが好感されました。

日経平均・TOPIX・S&P500・ナスダック総合の動き比較:2020年末~2021年9月17日

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成、2020年末の値を100として指数化

 2021年に入ってから、一時米国株のパフォーマンスが日本株を大幅に上回っていましたが、9月に入ってから米国株が少し下がる中で、日本株が大きく上昇した結果、2021年通算で見ると、米国株と日本株のパフォーマンスに大きな差はなくなりました。

 それが上のチャートでわかります。米国を代表する株価指数であるS&P500が、日本株全体を代表するTOPIX(東証株価指数)とほぼ同じパフォーマンスになっています。

 日本の政局不安は、政局への期待感に変わりました。衆院選で自民党が大敗して政権が弱体化する不安が低下、自民党新総裁の元で出される経済政策への期待が出ています。ワクチン接種率が急速に上昇していることにより、経済が正常化に向かう期待もあります。

米国・中国への不安が日本株の上値も抑える

 過去4週間の日本株の上昇は、世界的な株高・世界的なリスク・オン相場の中での上昇ではありませんでした。世界全体を見渡すと不安材料が増えて、世界的に株が調整ぎみに推移した中で、日本株の独歩高となっていました。

 米国株については、以下3つの不安が上値を抑えています。

【1】米国景気減速懸念

 ワクチン接種の進展でリベンジ消費(コロナ禍で抑えられていた消費がまとめて出ること)が盛り上がっていたが、そろそろ一巡。コロナ変異種の感染拡大も逆風に。

 来年にかけて財政のガケが発生する懸念も。今年巨額の財政出動が景気を支えたが、来年は今年よりも財政出動は縮小。それが景気にマイナスに働く可能性も。

【2】バイデン政権が弱体化する懸念

 アフガニスタンでタリバン政権が復権したことを受け、アフガン撤退を性急に進めたバイデン政権への批判が米国内で高まり、大統領支持率が低下。

【3】FRBがテーパリング(金融緩和縮小)を年内に開始する懸念

 FRB(米連邦準備制度理事会)の量的緩和が世界的株高を進める要因となってきただけに、テーパリングへの不安も。

 早ければ9月21~22日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で年内のテーパリング開始が決定される可能性もあるが、米景気の減速が徐々に鮮明になってきたことを受けて、早期にテーパリングが決定されるリスクは低下。

 私は、米国経済への不安は一時的と考えています。米景気は来年減速するものの、巡航速度の景気拡大が続くと予想しているからです。米景気が過熱する懸念は薄らぎ、失速することはなく、巡航速度の拡大が来年も続くと予想しています。

 ただし、中国の恒大集団の信用不安が引き金をひいた形で、当面、世界的に株安が続く可能性もあります。最終的に中国政府が恒大集団を救済するとの見方があることから、20日の下げは一定範囲で収まりましたが、救済が見込めなくなると、世界株安がさらに進むリスクがあります。

日経平均は調整が続く

 日本の政局・ワクチン接種進展に期待がありますが、米国株・中国株への不安が広がる中で、日本株にも外国人の売りが波及する懸念があります。長期的には割安な日本株に上昇余地があると考えていますが、しばらく調整局面が続く懸念があります。

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