株主優待ファンには有名な、ようこりんさん。ようこりんさんが初めて株式投資をしたのは2005年12月ごろです。その後、株主優待銘柄をメインに投資を進め、現在は「優待投資家」として、テレビや雑誌などのメディアにも登場しています。

 しかし、実は「ほんわか優待投資家」ではない、もう一つの「下げ相場に強い投資家」としての顔も持っています。心臓を握られるような局面を何度も乗り越え、約1億5,000万円の資産を築いてきたという、ようこりんさんにその投資術を聞きました。

ようこりんさんPROFILE
主婦でもある優待投資家。投資歴は20年以上で、保有する株主優待銘柄は400を超える。株主優待はじめ投資情報や日常を発信するブログ「ほんわかようこりん」を運営し、ほぼ毎日更新。普段は愛知県で生活しながらも、東京近郊で行われる株主総会出席のため、2019年には東京に家を購入した。

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本当は知らなかった?株主優待

──株主優待投資について、たっぷりお伺いしたいと思います。

ようこりんさん(以下敬称略) はい。ただ私、「優待投資家」とよく言われるのですが、優待専門というわけではないんですよ。優待株だけで資産を築いたわけではないですし。

──初めての投資も、優待銘柄ではなかったのですか?

ようこりん いえ、最初に買ったのは優待銘柄です。ただ、それはたまたまで、優待銘柄とは知らなかったんです。

 もう20年ほど前のことですが、友人に「日本金銭機械(6418)という貨幣製造会社の株が上がるだろうから買ってみたら」と勧められたんです。その頃、500円玉が新しくなるという話があったので。それで、証券口座を開設し、少しだけ買ってみました。

 すると、友人が言った通り株価が上昇して、かなり稼がせてもらったのです。その銘柄が優待銘柄で。その後しばらく、カタログギフトが年に一度届くのが不思議でしょうがなかったんです(笑)。後で、これが株主優待だったのかと知ったんです。

──それから優待投資家になったのですか。

ようこりん いえ、優待メインの投資はしばらく先、2012~2013年くらいかな。

──それまでは投資から遠さがっていたのですか。

ようこりん いえ、どっぷり漬かっていました(笑)。優待銘柄うんぬんでなく、普通に株を買っていました。

──日本金銭機械の「2匹目のどじょう」狙いですか。

ようこりん まあ、そんな感じですね。当時、親の相続と、生活をやりくりして貯めたお金が1,000万円ほどあったんです。へそくりというと額が大きすぎますが、家計とは別にしていたお金です。これを元手に株式投資していました。成績はまずまずで、一時は1,200万円まで増やしました。

──最初から順調だったんですね。

ようこりん でも、最初だけだったんですよ。この勢いで2倍、3倍に増やすぞと息巻いていたら、リーマン・ショックがきて、どん底に突き落とされました。当時を経験した人ならわかると思いますが、毎日ものすごい勢いで資産が目減りして、生きた心地がしなかったですね。

──ご主人には話したのですか。

ようこりん 言えるわけないですよ。ろくに顔も見られませんでした(笑)。

転機はトヨタ自動車を一点買い!

──暴落した株はどうされたんですか。

ようこりん あのとき私は「もう日本は終わった」と思いました(笑)。日本中のあらゆる企業がどん底まで転げ落ち、しばらく立ち直れないだろうと。だから、保有株を全部処分して退散するしかないかなと、いったんは腹をくくりました。

──どれくらい減らしたのですか。

ようこりん 1,200万円が700万円まで減りました。「どうしよう、どうしよう」と慌てふためいているうちに、500万円も吹き飛んでしまったんです。ただ、元手は1,000万円なので、実質的には300万円の損なので、あきらめるしかないかという感じでした。

──でも、退散しなかったんですね。

ようこりん やっぱり悔しいですよね。せっかくコツコツ増やしたのに、元手を300万円失ってしまったわけなので。このまま黙って引き下がるのは我慢ならなかったのです。しばらく悩んだ末、勝負に打って出ることにしたんです。

──勝負に出たというのは?

ようこりん 日本中の企業が死にゆく中で、もし1社だけ不死鳥のようによみがえるとしたら、どんな会社だろうと考えてみたのです。私、地元が愛知で、もうお察しだと思いますが、トヨタ自動車(7203)しかないと。

 そのとき保有していた株をほとんど売り払い、それをそっくりトヨタ自動車につぎ込みました。

──残った700万円のほとんどをですか。トヨタの株価もまだ下がる可能性がありましたよね。

ようこりん もちろんです。だから、正直、トヨタさんと心中する覚悟でした。トヨタさんが死んだら私も死ぬだろう、でも、そのときは日本中の企業と、それに投資家も全員、討ち死にするだろうから、それはもうしょうがないかなと(笑)。

──すごい思い切りですね。でも、トヨタは死にませんでした。

ようこりん はい、おかげさまで。私が買ったとき、株価は2,500円台くらいでしたが、その後すぐ回復に向かったんです。それはもう、うれしかったですよね。3,000円から売り上がりして、それでかなり取り戻すことができました。

 さらにその後も「安くなったら買って、高くなったら売る」を何度か繰り返したので、トヨタさんだけでも1,000万円以上の利益を得ました。今の私があるのはトヨタさんのおかげでといっていいかもしれません(笑)。

──では自家用車は…(笑)?

ようこりん もちろんトヨタです。ライバル車に乗ったら、投資の神さまに見捨てられてしまいますよ(笑)。

勝負師・ようこりんの見極め術

──ようこりんさんというと、優待銘柄でコツコツ稼いでいるイメージだったのですが、「勝負師」の顔も持っているんですね。

ようこりん 勝負師といえるかどうかはわかりませんが、何年かに一度、大勝負を行うのは事実です。

──トヨタの大勝負以外にもあるのですか。

ようこりん チャイナ・ショック後の2017年1月に電子機器メーカーのミネベアが、ミツミ電機という会社を買収したんです。それで今は、ミネベアミツミ(6479)という社名になっています。

 このとき、ミネベアの株価が急落、ミツミ電機は赤字企業だったから、負債を増やすだけと見られたからです。でも、調べてみたら、ミネベア本体の業績は素晴らしく、このまま下がり続けるわけがない、遠からず回復に向かうと思い、一気に1万5,000株を購入しました。

──底を打ったという確信があったのですか。

ようこりん いえ、確信というものはなくて。投資仲間にもいくらなんでも無謀じゃないかと言われましたし。買ったはいいけれど、下げが止まるんだろうかと、本当のところは気が気でなりませんでした。

──とはいえ、自信がないと買えないですよね。

ようこりん 一つ言えるとしたら、トヨタ自動車のとき、1株2,500円台で買ったと言いましたが、その数年前に株価が下落したとき、2,500円で下げ止まったので、今回もそのあたりで下げ止まると思って買って、予想が的中しました。

 それで、ミネベアのときも過去のチャートを確認したんです。そうしたら、過去に下がったときの最安値に近づいていたので、このあたりが底だろうと。

──ちゃんと根拠があったのですね。

ようこりん まあ一応。だからって予想通りにいくとは限らないので、ヒヤヒヤものでしたけど(笑)。

──でも、自分を信じて突き進めるのはすごいですよね。相当な胆力がないとできません。

ようこりん そこはリーマン・ショックの経験が大きかったと思います。あの経験があるから、ちょっとや、そっとでは動じなくなったというか。

──それにやっぱり勝負師なんですね。

ようこりん 私、父を早くに亡くしているのですが、父は麻雀などの勝負ごとがめちゃくちゃ強かったらしいんです。株投資もやっていて、もうけたお金で雀荘を始めたとか聞いています。いいのか悪いのかわかりませんが、多少は父の血を受け継いでいるのかもしれません(笑)。

──お母さまも?

ようこりん いえ、母は父とは正反対で、堅実な商売人でした。投資はやらないのに商売の助けになるからって、日中はラジオで株式情報を流していたらしいのです。そんな地道にコツコツ続けることをいとわないタイプ。

 やはりずいぶん前に亡くなっていますが、私のコツコツ優待投資は、父だけでなく、母の血も流れているからなのでしょう。

中編へ続く
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