FIREとは

 FIRE(Financial Independence, Retire Early: 経済的に自立して早期退職)が話題になり、関連する書籍やレポートが幅広く読まれるようになりました。FIREが関心を集める背景は、「仕事が人生にとって大きなストレス」の人が多いという事実です。多くのサラリーマンは、若年・壮年期の多くを仕事で過ごします。その仕事がストレスだとしたら、人生の大部分をストレスだらけで生きることになります。もし、生活費を気にしないで良い「経済的自立」を手に入れられれば、嫌な仕事を早く辞め、好きなことだけして生きられるようにしたいと願うのは自然と思います。

 一方、FIREを望まない人もいます。もし自分のやりたい事、好きな事がそのまま生活費を稼ぐ仕事になっていれば、FIREは望まないと思います。

目指すべきFIRE・目指すことのできないFIRE

 どうやってFIREを実現するかについて、いろいろな考えがあります。単純で分かりやすいが、目指すことが現実的でないのが「大金を得てFIRE」です。

【1】目指すことができないFIRE:大金を得てFIRE
「宝くじで10億円当てた」「暗号資産で5億円稼いだ」のような一攫千金で仕事を辞め、あとは好きなことだけして生きるというFIREです。ただ、このパターンは普通の人に真似できません。

【2】目指すべきFIRE:好きな仕事だけして生きていけるようになるためのFIRE
 現実的に目指すことが可能なのは「嫌な仕事を辞め、好きな仕事だけして生きる」ことを可能にするためのFIREだと思います。

 今やっている仕事が自分の好きな仕事であれば、そもそもFIREを目指す必要はありません。ところが、そうでない方がたくさんいます。「学生時代から大好きでやりたい事があったが、好きな事だけしても十分な収入を得る見込みがなかったから、がまんして嫌な仕事をしている」という人は、夢の実現のためにFIREを目指したら良いと思います。「WEBデザインをやりたい」「翻訳の仕事がしたい」「スポーツインストラクターをやりたい」「カフェ経営がやりたい」などなど、やりたい事を実現するためのFIREを考えたら良いと思います。

好きな仕事で収支を均衡させる

 今の仕事を辞めて、好きな仕事だけして生きていく場合でも、年間収支は均衡させないと「持続可能なFIRE」となりません。

【年間収支】
=【好きな仕事で得られる収入】+【貯蓄から得られる運用益】-【年間支出】

これをプラスにする必要があります。収支を均衡させるための鍵は以下3つです。

【1】好きな仕事で得られる収入を、堅く保守的に見積もる
 好きな仕事で得られる収入に大きな見込み違いがあると、FIRE後の収支が均衡しません。ここは、堅く保守的に見積もる必要があります。今やっている嫌な仕事を辞める前に、好きな仕事を副業として取り組み、それを本業にした時にどれだけ収入が得られるか、現実的な計算をしておく必要があります。

【2】貯蓄から得られる運用益に、過大な期待をしない
 ここも保守的に見積もる必要があります。運用益に過大な期待を寄せると、高リスク投資にのめりこむことになり、結果的に大切な貯蓄を失うことになりかねません。

 派手に稼ぐことを見込むのではなく、堅実に見積もって得られる収入を前提とすべきです。日本の高配当利回り株で組むポートフォリオで、年率4%くらいの収入を得ていくことを前提とするのは問題ないと、私は考えます。

【3】生活費の削減、やれることは何でもやる
 やりたいことがネット上でできる仕事であれば、居住地を選ばず、どこででも仕事ができます。今、生活費の高い都市部に居住しているならば、思い切って地方に移転することで、生活費を大幅に削減できる場合もあります。生活費が安い、自然の美しいところに移ることを考えても良いと思います。家族がいる場合は、もちろん家族全員で話し合う必要があります。

 都市部から離れることができない場合でも、固定費を削減する余地はたくさんあります。たとえば自動車を保有していれば、それをカーシェアリング利用(必要な時だけ自動車を借りて使う)に変えれば、大幅に固定費が下がります。その他、携帯電話を格安スマホに変える、必要性が低い保険を解約するなど、定番の固定費削減メニューで、できることは何でもやって、支出を抑える必要があります。

FIREを視野に投資すべき、日本の高配当株10選

 FIREを視野に入れる場合と入れない場合で、投資すべき銘柄が変わるわけではありません。気をつけるべきは、FIREを視野に入れた途端に、派手に稼ぐことを狙った高リスク投資にのめり込むことです。大切な貯蓄を失う結果になることもあるので、注意しましょう。

 日本株は成長性が乏しいとして嫌う人もいますが、私はとてももったいないと思います。日本でもこれから、AI(人工知能)・IoT(モノのインターネット化)・5G(第5世代移動体通信)などを活用した成長企業がたくさん出てくると思っているからです。そうした成長株に投資していくのも良いと思います。

 ただし、成長株は当たり外れがけっこう大きいことに注意が必要です。株価が倍以上に上昇する成長株もありますが、成長ストーリーが崩壊して暴落する銘柄もあります。成長株候補として、私はBASE(4477)メドレー(4480)メルカリ(4385)などに期待しています。いずれも、当たれば大きいが、外れることもある投資なので、FIREを前提にこつこつ貯蓄を積み上げていくのには向かないかもしれません。

 それよりも、日本の大型株で配当利回りが4%近く、あるいはそれ以上出る「高配当利回り株」に投資していく方が、FIREを前提とした投資には合っていると思います。具体的には、以下のような銘柄です。年率4%くらいのリターンを期待して、コツコツ投資を積み上げていくのが良いと判断しています。

高配当利回り株10選

コード 銘柄名 株価:円 配当
利回り
PER:倍 PBR:倍 1株当たり
配当金
:円
8306 三菱UFJ FG 587.1 4.6% 8.87 0.44 27
8316 三井住友 FG 3,722.0 5.4% 8.50 0.43 200
8766 東京海上HD 5,293.0 4.1% 25.71 1.00 215
8591 オリックス 1,920.0 4.1% 9.32 0.76 78
5020 ENEOS HD 463.3 4.7% 10.63 0.63 22
4502 武田薬品工業 3,700.0 4.9% 23.14 1.12 180
8058 三菱商事 3,109.0 4.3% 12.08 0.81 134
2914 日本たばこ産業 2,196.5 5.9% 16.23 1.48 130
9432 日本電信電話 2,829.0 3.9% 9.43 1.35 110
9433 KDDI 3,451.0 3.6% 11.79 1.63 125
出所:各社決算資料より作成。配当利回りは、今期1株当たり配当金(会社予想)を7月28日の株価で割って算出。今期とは2022年3月期のこと。日本たばこ産業のみ2021年12月期。PERは7月28日株価を今期1株当たり利益(会社予想または目標)で割って算出。告知事項、筆者は三井住友FG株を9,000株保有

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2021年7月7日:FIREを実現する4つの道筋、マネーのライフプランの作り方(その2)