米国株が上下動しながらも堅調を続ける理由

 米国株式の堅調が鮮明となっています。S&P500指数は5日連続で過去最高値を更新(6月30日)。長期金利の低位安定を支えに、6月はハイテク株が多いナスダック相場が反発を強め、バリュー株の伸び悩みを補う「循環物色」がみられました。

 図表1は、2009年以降における米国市場の金利動向と株価(S&P500指数)の推移を示したものです。

 2013年5月にみられた「バーナンキショック」や2014年のテーパリング(FRB[米連邦準備制度理事会]による資産購入額の縮小)を乗り越えて株価が堅調を続けたことがわかります。

 現在は、実質長期金利(10年国債利回り-期待インフレ率)がマイナス圏で推移しており、債券の実質的な投資魅力を勘案すると、株式を中心とするリスク資産に資金が向かいやすい金融状況がわかります。

 図表2は、S&P500指数ベースのEPS(1株当たり利益)の実績と市場予想平均(2021年から2022年)を示したものです。企業業績は2020年の前年比減益(▲18.3%)を経て、経済正常化が進む2021年は約53.4%の増益に転じて過去最高益を更新する見通しです。

 製造業も非製造業(サービス業)も総じて増収となり、コロナ禍での合理化が利益率向上に貢献する他、自社株買い効果も追い風にして2022年も過去最高益を更新する見通しです。

<図表1:金利の低位安定と実質マイナス金利が米国株高の背景>

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2009年初~2021年6月30日)

<図表2:米国市場の企業業績は過去最高益更新を見込む>

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2021年6月30日)

バフェット氏が愛妻に助言する米国株投資とは

 本稿では、米国で「投資の神様」と呼ばれるウォーレン・バフェット氏(90歳)の投資助言に注目したいと思います。同氏は、CEOを務めるバークシャー・ハサウェイ社での分散投資で莫大(ばくだい)な資産を築き上げてきました。

 そのバフェット氏は、「愛妻に残す遺産の9割をS&P500指数のインデックスファンドに投資してほしい」と助言しています。

 奥様だけでなく、投資初心者に対してのメッセージとしても有名です。本年5月に実施されたバークシャー・ハサウェイの株主総会(質疑応答)でも、同氏は「アクティブファンドと比較してコストが低いS&P500指数連動型インデックスファンドへの長期投資」を勧めました。

 S&P500指数とは、米国の時価総額加重平均を代表する指数で、企業価値の成長期待が高い(時価総額が大きい)500社で構成されています。

 現在は、GAFAM(アルファベット、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト)が時価総額ウエートの上位5社を占めています。

 米国を代表する企業群に分散投資することは、世界最大手企業群に分散投資することと同等で、世界経済の成長から恩恵を得るグローバル企業に分散投資することも意味します。

 図表3は、約30年前(1991年初)を起点にしたS&P500総収益指数のパフォーマンスを、世界株式総収益指数や日本株式(TOPIX[東証株価指数]総収益指数)と比較したものです。総収益指数とは、四半期や半期ごとに支払われる配当を再投資したベースのトータルリターン指数です。

<図表3:米国株式の長期総収益を検証する(市場実績)>

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(1991年初~2021年6月)

 S&P500総収益指数は約30年で約23倍となり、世界株式や日本株式より優勢であったことがわかります。

 バフェット氏が(奥様を含め)投資初心者にS&P500指数に連動するインデックスファンドを勧める理由は、こうした優れたパフォーマンスや米国株に対する長期的な成長期待があるとされます。

 バフェット氏は、アクティブ投資(個別銘柄の選択にこだわる投資手法)にかかるリスクとコストについても言及してきました。

 米国株式投資を検討するにあたっては、市場全体をカバーする時価総額加重平均指数に連動を目指すインデックスファンドを資産形成のコアに据えたいと思います。

米国株に積立投資すると30年で6.5倍!

 実際、約30年前の1991年初に3万円を米国株式に投資し、その後も毎月末に3万円を継続的に投資してきた場合を検証してみます。S&P500総収益指数に連動するインデックス投信やETF(上場投資信託)をイメージしたものです。

 2021年6月までに366回の定時定額投資を実践してきたとすると、累計投資額(簿価)は1,098万円(=3万円×366回)となっています。この間のドルコスト平均法と複利運用の効果で、投資元本の時価評価額は約7,087万円に膨らんできました(図表4)。

 こつこつと3万円ずつ定時定額投資(積立投資)した結果、投資元本が約6.5倍に増えてきたことがわかります(6月30日時点)。

 投資環境の変化や市場心理の揺れによって、株価や為替が一時的に乱高下したこともありましたが、シンプルな資産形成を長期の時間軸で実践することにより、資産を増やすことが可能だったことを示しています。

<図表4:米国株式の積立投資効果を検証する>

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(1991年初~2021年6月30日)

 月々3万円の積立が可能か否か、投資した資金の時価総額が一時的にせよ減少する可能性を許容できるか否かの「リスク許容度」も意識するべきでしょう。短期的なリスク(リターンのぶれ)に耐えられない投資家に長期的なリターンは期待しにくいからです。

つみたてNISAで投資効率のいいファンドはどれ?

 なお、米国市場の幅広い銘柄に分散投資する公募型投信はS&P500指数連動型インデックスファンドだけではありません。

 QUICK資産運用研究所は6月、「つみたてNISA」(積立型の少額投資非課税制度)の資金流入額上位の公募型投信を対象に、2021年5月までの3年間に毎月一定額を積立投資してきた場合の「投資効率」(リスクに対するリターン)を分析してランキングしました。

 その結果、「楽天・全米株式インデックス・ファンド」<愛称:楽天・バンガード・ファンド(全米株式)>が首位となりました(6月10日付/日本経済新聞)。

 同ファンドは、マザーファンドを通じて「バンガード・トータル・ストック・マーケットETF」(米国籍ETF:VTI)に投資する追加型投信で、運用資産総額が約3,010億円に増加している人気ファンドです。運用は楽天投信投資顧問です。

 同ファンドは「CRSP USトータル・マーケット・インデックス」(円換算ベース)に連動する投資成果を目指し、原則為替ヘッジは行いません。VTIは、米国株式市場全体の動きに連動する投資成果を目指し、大型株から小型株まで約3,800銘柄に幅広く分散投資しているETFです。

 楽天・全米株式インデックス・ファンドの基準価額の1年前比騰落率は+49.8%、年初来騰落率は+23.7%(6月30日)となっています。

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