FOMC結果発表、2023年に2回利上げ示唆。NYダウ続落
16日(日本時間では17日午前3時)、米国の金融政策を決めるFOMC(連邦公開市場委員会)の結果が発表されました。金融政策の変更はありませんでした(ゼロ金利維持・量的緩和継続)。
米政策金利(FF金利)、長期金利、NYダウ月次推移:2000年12月~2021年6月(16日)
政策変更なしは、事前予想通り、当たり前のことで、市場になんの影響もありません。市場が注目していたのは、先行きのガイダンスです。
米国にインフレ懸念、景気過熱懸念が強まる中、いつまで量的緩和を続けられるのか、どのようなガイダンスを出すかが注目点でした。
FOMCメンバー18人の腹の内を読むのに重要とみなされるものが2つあります。1つは、ドットチャート(FOMCメンバー18人による政策金利の先行き予測)、もう1つはパウエルFRB議長の記者会見です。
ドットチャートで示されたFF金利予測(中央値)
上の表をご覧いただくとわかる通り、今回、ドットチャートでは、予測中央値で「2023年に2回利上げあり」の見通しが示されました。2023年末のFF金利予測(18人の中央値)は0.625%となりました。これは現在のFF金利誘導水準0.00-0.25%が、2023年末には0.50-0.75%まで引き上げられるという予想です。つまり0.25%の利上げが2023年に2回行われると予想されています。
前回(3月17日)のFOMCでは、「2023年末まで利上げなし(ゼロ金利維持)」の見通しが示されていましたので、利上げ時期の予想が前倒しされたことになります。利上げが2023年に始まるとすると、それより先に、テーパリング(量的金融緩和の縮小)が行われることになります。来年(2022年)にもテーパリングが始まる可能性が出てきたと解釈されます。いよいよ金融緩和の終了が視野に入ってきました。
今回FRB(連邦準備制度理事会)が発表した米経済見通しでは、インフレ率見通しが引き上げられました。FRBが重視するインフレ率指標(個人消費支出デフレーター)の予想中央値では、2021年に3.4%上昇の見通しが示されました。前回見通し(2.4%上昇)より大幅に引き上げられました。さらに2022年に2.1%、2023年に2.2%上昇する見通しが示されました。
インフレ予想の引き上げ、利上げ予想時期前倒しを受け、16日の米長期(10年)金利は1.56%まで上昇し、NYダウは前日比256ドル安の3万4,033ドルと続落しました。
為替市場では、FOMC結果発表後に、ドル高(円安)が進みました。1ドル110円台の後半をつけています。
パウエル議長はテーパリング議論始まると認めたが、テーパリング・ショックは無し
注目されたパウエルFRB議長の記者会見ですが、「資産購入をどうするか議論する」とテーパリング(金融緩和縮小)の議論を始めることを認めました。ただし、インフレ率の上昇は一時的と従来の発言を繰り返し、全体を通じてハト派色(金融緩和の縮小に否定的)は維持していました。
NYダウは続落しましたが、小幅の下げで済みました。FRB議長がテーパリングに言及すると株式市場がクラッシュするという不安がありましたが、今回、そのようなクラッシュはありませんでした。
2013年5月のバーナンキ・ショック(当時FRB議長だったバーナンキ氏が「テーパリングが将来必要」と発言した直後に世界中の株が急落したショック)を踏まえて、パウエル議長が慎重な言い回しに終始していることにもよります。
今後の注目点
今回のFOMCで、FRBがテーパリングの議論を始めることがわかりました。これまでのようなハト派一色のFRBではなく、タカ派色も垣間見えました。ただ、パウエル議長が慎重な言い回しを続けていることから、テーパリング・ショックは起こらず、長期金利の上昇も小幅でした。
テーパリング議論を始めることを伝えてもショックが起こらなかったことから、日米の株式市場は当面、底堅く推移すると考えられます。
ただし、これで、米景気が年後半に過熱するリスクが払しょくされたわけではありません。ワクチン効果で、米経済が正常化に向かうタイミングで、1.9兆ドルの財政出動が行われると、米景気が過熱するリスクは続いています。過熱リスクがさらに高まれば、米長期金利やインフレリスクの上昇を通じて、金融緩和の終了時期がさらに前倒しになる可能性もあります。引き続き、米景気・長期金利の変動から目が離せません。
今回のFOMCの日本株への影響は、当面、中立と考えます。米景気好調で、1ドル110円台後半に円安が進んだことはポジティブです。ただし、FRBがテーパリングの議論を始めることに警戒が強まることは、ネガティブです。
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