執筆:足立武志
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IR情報の意味、ご存じですか?

 IRとは、「Investor Relations(インベスター・リレーションズ)」の略で、企業が株主や投資家に対して、企業自身のことを知ってもらうための活動のことを言います。

 したがってIR情報とは、企業が自ら株主や投資家に向けて発信する、企業自身の情報のことです。

 具体的には次のような情報です。

○3カ月に1度の決算発表の際に開示される「決算短信」「四半期決算短信」「有価証券報告書」「四半期報告書」や業績予想の修正発表

○他社との資本・業務提携の発表、合併や企業買収の発表、TOBやMBOによる株式公開買付けの発表など、企業にとって大きな影響が生じると想定される事象の発生

 これらは重要な情報として上場企業に対し発表が義務付けられているものです。

 それ以外に、月次での売上高の発表、新商品発売や新製品開発の発表や、決算短信の内容をより分かりやすく説明した決算説明会資料、中長期的な企業の展望について書かれた中期経営計画資料などのように、法律などで定められていないものの、企業が独自の判断で発表する情報もあります。

 その意味からすれば、企業のホームページそのものも全てがIR情報の塊、ととらえることだってできますし、工場見学会のようなものも企業を知ってもらうために行うわけですからIR活動の一環となります。

企業はなぜIR情報を開示しているのか

 では、企業はなぜIR情報を開示しているのでしょうか。その理由は主に2つです。

 1つ目の理由は、法律などの要請により開示しなければならないIR情報があるためという消極的理由です。

 2つ目の理由は、自社のことを株主だけではなく広く投資家に知ってもらい、魅力を感じてもらって実際に株を買ってもらいたいからという積極的理由です。

 ただ、何でもかんでもIR情報を開示すればよいというわけではありませんし、よい情報だけ開示し、都合の悪い情報は開示しない、という企業は、やはりマイナスイメージがついてしまいますから、好ましくありません。

 個人投資家にとって有益なのは、個人投資家が企業のことを知り、投資するかどうかの判断のために有用な情報を、プラス面・マイナス面含めてしっかりと開示してくれる企業です。

 ですから、決してIR情報を数多く出していればよいというわけではありません。中には投資家に株を買ってもらって株価を上昇させたいという思いが強い企業もあり、そうした企業はIR情報の数こそ多いものの、中身を見ると特段IRするほどでもない、株価にも影響を与えないような情報を連発しているケースも見受けられます。

 筆者個人的には、決算短信など法定で開示しなければならない資料に加え、決算説明会の資料と中期経営計画の資料がウェブサイト上に掲載されていて、個人投資家含め誰でも閲覧できる状態になっている企業が、望ましい姿の最低線と考えています。そして飲食、小売りなどの業種ならば、月次売上高などの業績にかかわるタイムリーな情報があると、なおよいです。

個人投資家が重視すべきIR情報とは?

 では、個人投資家は数あるIR情報のうち、どれを重視すればよいのでしょうか?

 真っ先に挙げられるのが決算の情報です。具体的には「決算短信」「四半期決算短信」です。

 やはり、決算の内容により株価が動くケースが圧倒的に多いですし、長期的に見れば企業業績と株価は連動して動きます。決算内容は速やかにチェックしておくべきでしょう。

 また、決算発表に先立って、業績予想の修正発表というものがなされることがあります。これは、当初企業側が発表した業績予想の数値の最新値よりも、売上高であれば10%、利益であれば30%以上の変動があることが明らかになった時点で開示しなければいけないことになっています。

※参考:東京証券取引所ウェブサイト・業績予想の修正、予想値と決算値との差異等

 決算発表の前であっても、この業績予想の修正発表の段階で株価は大きく動くことが多いので、こちらも注意しておきましょう。

 なお、決算短信や四半期決算短信が発表された後、より詳しい内容が掲載された「有価証券報告書」「四半期報告書」というものも発表されます。ただ、株式投資では情報のタイムリーさが重視されるので、まずは決算短信と四半期決算短信に注目すべきです。

 無論、決算短信は決算発表の速報版という位置づけであり、企業のことそれ自体をもっと詳しく知りたい、という場合は決算短信よりも有価証券報告書を見ることをおすすめします。

決算発表のスケジュールはあらかじめ把握しておこう

 ところで皆さんは、ご自身が株を持っている企業の決算発表のスケジュールは把握していますか。

 また、株を持っていなくとも、今後機会があれば投資してみたいと考えている投資候補企業についても同様です。

 各企業の決算発表の予定日は、例えば東京証券取引所のウェブサイトに一覧で掲載されています。

東京証券取引所のウェブサイト

 または、楽天証券のウェブサイトに掲載されている「決算発表スケジュール・決算速報」で確認することができます。

楽天証券「決算発表スケジュール・決算速報」

 個人投資家の方で意外に多いのが、決算発表の内容を確認しないまま株を持ち続けてしまった結果、決算内容が悪く株価が大きく下がってしまっても売り時を逃してしまい、損失が膨らんでしまうというケースです。

『会社四季報』に過去の業績や来期以降の業績予想が載っていますから、それさえ見ておけばよいという方もいますがそれはよくありません。

 株価は常に「最新の情報」を織り込んで動きます。会社四季報の最新号が出るまでの3カ月間の間にも、新たな決算発表が行われます。でもこの決算は、現時点で最も新しい会社四季報には掲載されておらず、次の号が出るまでは掲載されないのです。

 ですから、会社四季報の情報だけを見ていては、直近の決算発表の内容を他の投資家は知っていて、それを踏まえて行動しているのに、自分だけ会社四季報の古い情報をもとに行動してしまうことになりかねません。

 決算の内容は、常に最新のものにブラッシュアップすることを忘れないようにしてください。

 次回は、個人投資家にとって最も重要なIR資料といっても過言ではない「決算短信」について、できるだけ時間をかけずにポイントを押さえてチェックする方法をお伝えします。

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<参考情報>
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IRに関する記事は、楽天証券が特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。IRに関する最新情報は、各企業のホームページをご確認ください。