GW10連休の間、「3分でわかる!今日の投資戦略」では、株式投資の基礎レッスン1から5をお届けしています。今日は、GW4日目。レッスン4をお届けします。

優待投資の5大失敗

 日本には「株主優待制度」という、世界でも珍しい制度があります。上場企業が株主に感謝して贈り物をする制度です。

 本来、株主には配当金を支払うことで利益還元するのが筋です。ところが、日本の個人株主の一部に、お金(配当金)をもらう以上に贈り物(株主優待)を喜ぶ風潮があることから、株主優待という制度が存続しています。小売・外食・食品・サービス業では、個人株主がそのままお客さま(会社製品の購入者)になることもあるので、広告宣伝活動の一環として自社製品を優待品に積極活用する企業が多数あります。

 とても魅力的な制度なので、積極的に活用したら良いと思います。ただし、気をつけるべきリスクもあります。今日は、優待投資でよく聞かれる以下5つの失敗談を避けるための知恵を解説します。

  1. 業績や財務に問題のある銘柄に投資。株価下落
  2. 優待廃止や減配で株価が下落したところで買い増し。株価がさらに下落
  3. 権利取り直前、株価が優待人気で吹き上がったところで投資。権利落ち後に株価下落
  4. 優待券を使わないうちに、いつも有効期限が切れる
  5. 優待しか見ない、高配当利回り株を完全に無視

【失敗談1】業績や財務に問題のある銘柄に投資。株価下落

 一番よく聞く失敗談は、業績や財務に問題のある銘柄に投資して、株価が下がってしまったという話です。株主優待目当てで株式投資を始める方には、良い意味でも悪い意味でも、あまり株価や業績を見ない方がいます。

 人気優待銘柄には、小売り・食品・サービスなど消費関連株が多数あります。消費関連株には、過去10年、アジアや国内で売上を伸ばし、株価が大幅に上昇した銘柄が多数あります。優待の魅力で投資して、「気が付かないうちに、株価が2倍以上になっていた」という話もよく聞きます。それが、良い意味で株価を見ないということです。イオン(8267)日本マクドナルドHD(2702)がその例です。

<イオン株価月次推移:2010年1月~2021年2月>

<日本マクドナルドHD株価月次推移:2010年1月~2021年2月>

 株価を頻繁に見ていると、株価が10%くらい上がっただけですぐに利益確定してしまい、その後の大きな上昇を取り損なうことが多くなります。良い意味で株価を見ない優待投資家は、長期的に上昇トレンドをたどる消費成長株をすぐに売ってしまうことがありません。

 同じ話の裏表ですが、業績も株価も見ていないうちに、株価が大幅に下がっていたということもあります。消費関連の人気優待銘柄には、昨年のコロナ禍で大きなダメージを受けたところが多数あります。特に、外食業は、甚大なダメージを受けています。構造不況に陥り、財務に不安が出ている銘柄は、売却すべきと思います。

 ただし、コロナ禍で一時的に利益が悪化している銘柄は、売る必要がありません。コロナが収束すれば、元の元気企業に戻ると判断できる銘柄はそのまま継続保有しましょう。一時的に収益が悪化し株価が下がっているだけならば、売るより買いの機会を探すべきです。

 と言われても、「一時的に悪化しているのか構造的にダメになっているのか、どうやって判断したらいいかわからない」という方が多いかと思います。以下のような基準をもって損切り売却の判断をするのも、リスク管理上、大切な知恵です。

【1】株価が買い値より20%以上、下がったら売却

 株価が買い値より20%以上、下がるということは、一時的ではなく何か構造的な問題を抱えている可能性もあります。20%の損切りルールを持っておけば、半値になるまで放っておくという問題を抱えないで済みます。

 もちろん、20%下がったところが大底で、そこから反発する銘柄もあります。そういう銘柄は「売らなければ良かった」と、後悔する人もいるでしょう。私はファンドマネージャー時代、損切りしてから株価が反発しても、後悔することはありませんでした。20%下がってそこから反発する銘柄よりも、20%下がってそこから下げが加速する銘柄の方が、はるかに多かったからです。

 20%も下がる銘柄を買ってしまったということは、買う時点で、何か重大な判断ミスをしていた可能性が高いということです。いったん売却し、頭を冷やしてから、別の有望銘柄を見つけて投資した方が良い結果につながることが多いと言えます。

【2】財務に不安が出た銘柄は、問答無用で売り

 景気悪化局面で業績が悪化し、株価が下がっているだけならば、一時的な問題と考えられます。景気が良くなれば、また業績も株価も回復すると考えられます。

 ただし、業績だけでなく財務も悪化し、資金繰りに不安が出ている場合は、問答無用で売却した方が良いと言えます。

「政府系金融機関が支援を検討」「銀行から派遣されている役員が辞職して引き上げた」「資金繰りが困難」などのニュースは、財務に問題が出たことを示します。そういう銘柄は売却するべきと思います。

 と言われても、そんな難しい判断はできない、という方も多いかと思います。そういう場合は、【1】のルールで売却すれば良いと思います。財務に不安が出る銘柄は20%以上株価が下がることが多いので、それで売却判断ができます。

【3】優待廃止、減配など発表したら、売り

 一時的に業績が悪化しているだけならば、日本企業はなるべく配当や優待を維持しようとします。ところが、構造的に収益が悪化、あるいは、財務に不安が出た場合は、優待廃止・減配に動くことがあります。

 大量に人員削減を始める企業も、要注意です。日本企業は、一時的に業績が悪化しても、雇用だけは何とかして守ろうとするからです。人員削減に動く企業は、優待廃止や減配をやることが多いと言えます。従業員に痛みを強いる中、株主への還元は維持するというわけにはいかなくなることが多いと言えます。

【失敗談2】優待廃止や減配で株価が下落したところで買い増し。株価がさらに下落

【失敗談1】で説明した通り、優待廃止や減配を発表した銘柄は、損切り売却すべきと考えています。

 株の初心者で、損切りができないのはやむを得ないところもあります。問題は、下がった銘柄をさらに買い増しすることです。企業内容をよく調べて、業績が改善することを予想して買うならば良いですが、ただ株価が下がったというだけで買い増しするのは、傷を深めることが多いので厳禁です。

 個人投資家にも、いろいろな投資スタイルがあると思いますが、もっとも多いタイプは「逆張り」タイプです。「株価が上がったら売り、株価が下がったら買い」と判断する方が多いようです。その結果、個人投資家全体の売買を見ると、日経平均が上がると売りが増え、下がると買いが増える傾向が鮮明です。

 往来相場、一定の範囲で上がったり下がったりを繰り返すだけの間はそれで良いのですが、トレンドが出るときに逆張り投資は失敗します。株価が2倍になるような成長株を、たった10%くらい上がったところで売ってしまうことになるし、株価が半値になってしまうような問題銘柄を、株価が下がったというだけの理由で、買ってしまうことになるからです。

 私がファンドマネージャーの時、よくわからない理由で保有銘柄が急落した時は、理由を考える前に売却していました。理由を考えているうちに、どんどん下げが加速することが多かったからです。

【失敗談3】権利取り直前、株価が優待人気で吹き上がったところで投資。権利落ち後に株価下落

 魅力的な株主優待で有名な銘柄には、優待の権利取り直前に株価が急騰し、権利落ち後に株価が急落するものもあり、注意を要します。優待の権利取り前に、株価が急騰している銘柄は、投資を避けた方が良いと思います。

 前述した通り、株主優待目当てで株式投資している人には、いい意味でも悪い意味でも、日々の株価変動をあまり見ない人が多いようです。ストレスを感じずに、じっくり長期投資できるのは、良いことです。

 ただし、新規に優待銘柄に投資する時は、最低限、株価チャートは見ましょう。チャートを見て、もし株価が短期的に急騰した直後であれば、買いを見送るべきです。小型で人気の優待株は、権利取りの直前に株価が大きく上昇することがあります。そういう銘柄は、投資を避けた方が賢明です。

 年2回(中間決算と本決算)に分けて優待を出す銘柄では極端な値動きは少ないですが、年1回(本決算のとき)だけ人気の優待を出す小型株では、権利取り前に株価が大きく上がることがあります。そういう銘柄は、権利取りの直後に株価が大きく下がることが多いので要注意です。年1回だけの人気の優待を取るためには、権利取りの1~2カ月くらい前、優待取りの買いが入る前に投資した方が良いと言えます。

 高配当利回り株に投資する場合も同じです。権利取り直前に買うと、買ってすぐに配当金が得られるのでお得と感じますが、実際には、権利落ち後に得られる配当金以上に株価が下がって損をすることもあります。

 個人投資家には、2月に優待の権利が確定する銘柄を2月に、3月に優待の権利が確定する銘柄は3月に買うべきと考えている方が多いですが、それは必ずしも合理的な行動ではありません。株価が短期的に上がっている時は買いを控えるべきです。

【失敗談4】優待券を使わないうちに、いつも有効期限が切れる

 人気の優待券に、外食業の「食事券」があります。有効期限1年と定められていることが普通ですから、使わずに失効してしまえば、メリットを得られません(今はコロナ禍の特例で有効期限を延長する企業もあります)。

 人気の株主優待券ですと、ネット上、あるいはチケットショップで売却できる場合もありますが、かなり割引されます。500円の食事券が400円で売れれば、良い方です。500円の券が300円、あるいは、250円でしか売れないこともあります。あまり人気のない優待券は、買い取りするチケットショップがないこともあります。

 人気の株主優待割引券でも、有効期限までの期間が短いと、売れないことがあります。使うあてがない場合は、早めに売却した方がいいと思います。

 いつも優待券を使わないうちに失効させてしまう方は、自社製品(食品や飲料の詰め合わせ)などを送ってくる優待に切り替えた方が良いかもしれません。製品を送ってくる優待ならば、メリットを取り損なうことがないと言えます。

【失敗談5】優待しか見ない、高配当利回り株を完全に無視

 日本の個人投資家に、配当金よりも贈り物(株主優待)を好む傾向があります。ただ、それも度が過ぎると、非合理な行動につながります。株主への利益還元は、本来は配当金支払いによって行うのが筋です。配当金と、株主優待を総合して、メリットの大きいところを選ぶべきです。

 2,000円の自社商品(食べ物)を贈ってくれる会社を歓迎し、同じ投資金額で、5,000円の配当金(源泉税約2割を差し引くと約4,000円)を払ってくれる会社を避けるといった、非合理な行動をしていないか、考えてみてください。

▼著者おすすめのバックナンバー
2021年5月1日:いくらで買える?「指値注文」イマドキの使い方:株式投資の基礎レッスン1
2021年5月2日:「逆指値」売り注文を使って「損切り達人」になる:株式投資の基礎レッスン2
2021年5月3日:デイトレードで「指値」「成行」をどう使い分けるべきか?:株式投資の基礎レッスン3