日経平均急落。好調だったバリュー株が急反落

 3月24日の日経平均は、前日比590円(2%)下がり2万8,405円となりました。今年に入ってから上昇ピッチが加速していた景気敏感バリュー株(割安株)【注】の下げが、久々に大きくなりました。TOPIXバリュー指数はこの日2.7%下げました。

【注】バリュー株
 PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)が低い、配当利回りが高いなど、株価バリュエーションから見て割安な株を、バリュー株と呼びます。代表的なバリュー株として、私が「3大割安株」と命名しているのが、金融株・資源関連株・製造業です。2020年には世界的な金利低下や資源価格下落、製造業の不振で売られてきたため、バリュー株が多いセクターとなっています。

 今年不振のグロース株(成長株)も引き続き弱い動きでしたが、3月23日・24日の2日間だけでいうと、バリュー株の方が下落率が大きくなりました。バリュー株に利益確定売りが出ました。

TOPIXバリュー指数とTOPIXグロース指数の動き:2020年末~2021年3月24日

出所:日経QUICKより楽天証券が作成。2020年末の値を100として指数化

 2020年の始めからの動きで比べると、TOPIXグロース指数が、バリュー指数を大幅に上回る状況であることは変わりません。コロナ禍で2020年はバリュー不振・グロース好調の二極化が進んでいました。

TOPIXバリュー指数とTOPIXグロース指数の動き:2019年末~2021年3月24日

出所:日経QUICKより楽天証券が作成。2019年末の値を100として指数化

 ところが、2021年に入ってから、世界景気の回復期待が高まり、米長期金利が上昇、原油が上昇、製造業の景況が急速に改善したことから、バリュー指数のパフォーマンスが良くなりました。金利上昇で恩恵を受ける金融株、資源価格上昇で恩恵を受ける資源関連株、製造業の景況改善で製造業株の上昇が目立ちました。つまり、私が3大割安株と名づけているバリュー株の上昇が目立ちました。

 今週は、その流れに異変が生じています。久々にバリュー株の下げが大きくなりました。

 一時1.725%まで上昇した米長期金利が、今週は低下し、1.625%まで下がったことが、バリュー株に利益確定売りが出るきっかけとなりました。景気回復期待・インフレ懸念を織り込んで上昇してきた米長期金利ですが、少し上昇が速すぎると見られています。長期金利の反落にともなって、世界景気の回復期待で買われてきたバリュ-株も売られたというのが、足元の状況です。

米長期金利(10年国債利回り)の推移:2020年1月2日~2021年3月24日

金融相場から業績相場への移行期と判断

 米金利上昇の世界株に及ぼす影響について、私の意見は、これまでのレポートで述べてきた通りです。まだ金利上昇で株高が終わることを心配するのは時期尚早と考えています。景気回復の終盤で、金利上昇が株安のきっかけになることがありますが、まだその段階に入っていないと考えています。今は、景気回復初期、金利上昇初期で、金利上昇と株高が両立する局面と判断しています。

 景気・金利・株価は、密接に連携して動いています。景気が拡大・後退のサイクルを描く中で、金利・株価も一定のリズムでサイクルを描いています。

 景気・金利・株価には、一般的に、以下のような関係があります。

景気サイクルと、金利・株価サイクル

出所:筆者作成

 私は、現在の世界経済は、上記の景気拡大初期―中期にあると考えています。景気拡大初期(金融相場)から、景気拡大中期(業績相場)への移行期に当たり、まだ、金利上昇と株高が両立する局面と判断しています。 

 年後半、もっと米国・中国の景気回復が加速し世界景気に過熱の懸念が出る時、米長期金利が2%を超えていく時に、世界的な株高が終わることを心配する必要が出ると思っていますが、まだその時期ではありません。

 したがって、今の株安局面は、日本株の押し目買いの好機と考えています。今、下落率が高くなっている、景気敏感バリュー株を買い増ししていくべきと判断しています。

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