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著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 [動画で解説]日本株急落とロビンフッダー:ここは買い場?「宴の終わり」を判断する3つのシグナル」
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ゲームストップ株乱高下を嫌気して米国株急落、日本株にも売り波及
1月最終週(1月25~29日)の日経平均は、5週ぶりに反落。1週間で960円下がり、2万7,663円となりました。ナスダック総合指数、NYダウが1月27日から急落した影響で、日本株にも売りが波及しました。
日経平均、ナスダック、NYダウ、上海総合指数の動き比較:2019年末~2021年1月29日
先週、米国株式相場で「過熱」を象徴する問題が起こりました。ロビンフッダー(売買手数料無料のロビンフッド証券などを使って短期トレードを繰り返す個人投資家の総称)と言われる個人投資家がSNS「レディット」で声をかけあって、機関投資家(ヘッジファンド)が空売りを積み上げているゲーム専門店「ゲームストップ」株に一斉に買いを入れました。
「機関投資家を打ち負かす」ことを目標とする個人投資家の買いで、同社株は1日で一時2.6倍に急騰しました。ヘッジファンドは巨額の損失を出して、買い戻しを迫られました。
ゲームストップ社は赤字が予想されており、ヘッジファンドは「株式価値に対して割高」と判断して空売りを積み上げていました。ところが、そこにロビンフッダーがSNSで声をかけあって襲いかかりました。
日本のように1日の値幅制限(ストップ高・ストップ安)のない米国で、ゲームストップ株は短期急騰し、ヘッジファンドは巨額の損失を出して買い戻さざるを得なくなりました。
ところがヘッジファンドが買い戻した後、ゲームストップ株は急落。ロビンフッド証券が28日にゲームストップを含む一部銘柄の買い付けを停止した影響が出ました。SNSの書き込みに応じてゲームストップ株を高値で買った個人投資家の中には、大きな損失を抱えた者もいると考えられます。
米国の証券監督局は、このようなSNSを通じて声をかけあって一斉に買いを入れる行為が、「共謀」「株価操作」などの違反行為に当たらないか注視し始めています。株式市場が賭博場のようになっていることに対し、新たな規制が必要との議論が出る可能性もあります。
ロビンフッダーの書き込みで株式市場が大荒れとなったことをきっかけに、米国株全体の過熱感が意識され、1月27日にはナスダック・NYダウが急落しました。
投資環境は良好、この下落局面は押し目買い好機と判断
この日経平均急落が「宴の終わり」「新たな下げトレンドの開始」を意味するのか、「押し目買い好機」か、議論する必要があります。
結論から言うと、私は日本株の「押し目買い好機」と判断しています。これには3つの理由があります。
【1】企業業績に回復色が強まってきた
発表中の10-12月決算は、利益見通しを上方修正する企業が増えています。コロナのダメージが集中する外食・観光・航空・電鉄業などは不振でも、それ以外の産業では、総じて予想以上に収益回復が進んでいることがわかります。
特に、製造業の回復が目立つことが好材料です。製造業は、今回の緊急事態宣言の影響を今のところあまり受けていません。安全対策をとった上で工場操業は続けています。
半導体や自動車産業では、需要回復に生産が追いつかず生産現場が繁忙になっています。中国景気回復の恩恵、自動車の世界販売が回復している恩恵が及んでいます。
自動車産業は裾野の広い産業で、自動車が回復すると、産業用ロボット・電子部品・鉄鋼・化学・非鉄など日本の製造業全般に波及効果が期待されます。
【2】ワクチンへの期待が続いている
コロナ感染拡大、変異種の広がりなど不安材料はあっても、ワクチンへの期待は続いています。世界最速でワクチン投与を進めるイスラエルで、感染収束の兆しが見えていることが希望の灯となっています。年後半には、ワクチンの大量供給が実現し、コロナが収束に向かい、景気回復色が強まると予想しています。
【3】金融・財政のバックアップ続く
米国・中国で、大規模な財政出動が行われることも、世界景気回復に寄与します。コロナ収束と財政出動が重なると、米景気は年後半にやや過熱する可能性もあると予想しています。
パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が、大規模な金融緩和を継続すると、表明していることも、世界の株式市場の追い風となります。
FRBは米国の中央銀行ですが、事実上、世界の中央銀行の役割を果たしています。米ドルが、世界中の金融取引で使われるからです。FRBが量的緩和を続ける効果が、世界的な株高に需給面で寄与します。
何が起こったら、宴が終わる?注意すべき3つのシグナル
今、世界景気は回復しつつあるものの、多くの人が、回復の持続性に疑念を抱いています。回復に疑念を抱く人が多い間は、景気回復は株価に織り込み済みと言えません。
弱気派が減って、世の中のマジョリティ(多数派)が景気に強気になるまで、株価上昇は続くと考えています。
私は、これから景気回復が徐々に鮮明になっていき、それにしたがって、景気に強気の人が少しずつ増えていくと考えています。その間、日経平均およびNYダウは急落を挟みつつも切り返し、下値を切り上げていくと予想しています。
目先、日経平均はスピード調整局面に入った可能性がありますが、いずれ切り返して年内に3万円をつけるとの予想を継続します。
それでは、どんなことが起こった時に、株式市場の宴は終わるでしょうか? 私は、以下3つのうちのどれか、あるいはすべてが見えてくる時には、株価は景気回復の織り込みを終えて、下落局面に入る警戒が必要になると考えています。
【1】米国長期金利が2%を超える時
流動性相場がいったん終了する可能性が高まります。
【2】「財政の崖」が起こることが意識される時
2021年は米国・中国の公共投資が世界景気を押し上げると予想されます。ただし、巨額の公共投資は何年も続けてやることはできません。
2022年には財政の崖(公共投資の減少)が景気押し下げ要因となる可能性があります。米中の公共投資による景気押し上げ効果の息切れが意識されるとき、株式のラリーは終わる可能性があります。
【3】2022年の企業業績が話題になるとき
2021年は、製造業などで業績急回復が予想されます。ただし、2022年には回復が鈍化すると考えています。2021年の終盤になると、株式市場の注目点は2021年の業績ではなく、2022年の業績に移ります。その織り込みが始まる2021年の終盤には、要注意と考えています。
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