10~12月が強いと1月は弱い:1月のアノマリー

 12月の日経平均株価は、29年8カ月ぶりの高値を更新し、2万6,000円台の後半まで上昇しました。12月30日大納会まで大きな材料は出ず、このまま高値圏で推移する可能性もあります。それでは、1月4日大発会から始まる新しい年の相場は、どうなるでしょう?

 1つ、気になるのは、1月のアノマリー(季節ごとに繰り返す相場のパターン)です。日本株でも米国株でも、1月は、相場の流れ・物色動向が変わりやすいことで、知られています。実際、過去の日経平均を見ると、「12月まで高く、1月から安い」あるいは「12月まで安く、1月から高い」パターンが多いことが分かります。

 昨年(2019年)は年末高―年初安で相場の流れが変わりました(2019年10~12月に8.7%上昇した日経平均が2020年1月に▲1.9%下落)。その前年(2018年)は、逆のパターンで、年末安―年初高でした(2018年10~12月に▲17.0%下落した日経平均が2019年1月に3.8%上昇)。

 ただし、2018年のような年末安―年初高は、近年では珍しいパターンです。近年は、圧倒的に年末高―年初安のパターンが多くなっています。

<10~12月の日経平均騰落率と、翌年1月の騰落率比較:2001年~2020年まで、2020年10~12月の騰落率は12月15日まで>

 2001~2019年の平均を見ると、10~12月は日経平均が4.4%上昇、翌年1月は▲1.5%下落していることが分かります。年末強く、年始に安くなるパターンが多かったことが分かります。

 ただし、上の表には、年末に急落するパターンの年も含まれています。金融システム不安があった2002年10~12月の日経平均は▲8.6%、リーマンショック前後の2007年10~12月は▲8.8%、2008年10~12月は▲21.3%、世界景気悪化で売られた2018年10~12月は▲17.0%でした。年末に日経平均が急落したこの4年を除いて、上記の表を作り直すと以下の通りとなります。

<10~12月の日経平均騰落率と、翌年1月の騰落率比較:2001年~2019年まで(2002年・2007年・2008年・2018年は除く)>

 上記を見ると、10~12月に強かった(+9.2%)日経平均が翌年1月に小反落(▲0.6%)するパターンが多いことが分かります。

 日経平均だけでなく、NYダウも、近年は1月に下がる傾向がありました。10~12月まで強かったNYダウが、1月は利益確定売りから始まるパターンがよく見られました。

 アノマリーと言われているものには、ただの偶然もあります。たまたま過去がそうだっただけで、今後も同じことが起こる理由が何もない場合もあります。たとえば「節分天井、彼岸底」という相場格言がそうです。「株が2月はじめに天井をつけて下がり、3月後半に底をつけて反発に転じる」という意味ですが、最近は、まったく当たっていません。

 私は、過去25年、ファンドマネージャーをやってきましたが、アノマリーなるものを、ほとんど無視して運用してきました。ただし、「1月に相場の流れが変わる」アノマリーだけは、無視することができませんでした。何回も、繰り返し起こるからです。

1月に相場の流れが変わるのは、「やるべきことは年内に」と考える人間心理が原因

 1月に相場の流れが変わるのは、偶然ではありません。それが起こりやすい理由がはっきりあります。それは、「やるべきことは年内にやっておこう」と考える人間心理が原因だと思います。その結果、以下のパターンを繰り返しています。

◆みんなが強気で10~12月に株が強いと、年明けに下落
 多くの人は、今年やるべきことは今年中に済ませようとします。新しい年に向けて、準備すべきことは年内に準備しておこうとします。たとえば、来年、日本株が大きく上昇するというのが、コンセンサスになっていたとします。すると、多くの人は、年内に株を買ってしまおうと考えます。「株を枕に越年で、よい初夢を」と考えるわけです。

 ところが、ほとんどの人が年内に株を買ってしまうと、皮肉なことに年明けから株の買い手がいなくなります。そこで1月には、わずかな利益確定売りから相場が崩れやすくなります。

◆みんなが弱気一色なら10~12月が弱く、年明けに上昇
 弱気がまん延していると、多くの人は年内に株を売ってしまおうと考えます。株なんか持っていたら、安心して越年できないというわけです。この場合は、年明けにはもう売り手がいなくなるので、上昇を始めます。

◆強気と弱気が混在していて、10~12月は方向感のない相場となると、1月に相場の転換は起こりません。リターン・リバーサルが起こるのは、あくまでも、10~12月になんらかのコンセンサスがあって、相場が一方向に動いたときだけです。

1月のリターン・リバーサル:過去の事例

 私は、ファンドマネージャー時代に、1月に物色動向ががらりと変わるケースをたくさん見てきました。代表的なものだけ紹介すると、以下のようなものです。

<1月のリターン・リバーサル:過去の事例>

◆1987年12月→1988年1月
 1987年10月にブラックマンデーがあって世界的に株が急落。12月まで下げ相場が続いたが、1988年1月から急反発。

◆1989年12月→1990年1月
 1989年12月末に日経平均は史上最高値(3万8,915円)をつけ強気一色だったが、1990年1月から急落。

◆1999年12月→2000年1月
 1999年12月までITバブル相場でIT関連株が急騰したが、2000年1月からIT関連株が急落。

◆2005年12月→2006年1月
 2005年12月までミニITバブル相場でIT関連株が急騰したが、2006年1月から急落。

◆2008年12月→2009年1月
 2008年10月にリーマンショックが起こり12月まで景気敏感株が急落したが、2009年1月から景気敏感株は急反発。

 上記は、1月に極端なリターン・リバーサルが起こったケースです。小さなリターン・リバーサルはもっとたくさん起こっています。たとえば、2017年12月まで景気敏感株が大きく上昇していましたが、2018年1月から急落しました。2018年12月まで景気敏感株が急落していましたが、2019年1月から急反発しています。

 さて、2021年はどうなるでしょうか? 1月4日からの相場をじっくり見たいと思います。

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