基本に返って、高配当株投資!

 日経平均株価は、11月から外国人投資家の買いで急騰し、コロナ前の高値を抜けて既に2万6,000円台に達しています。日経平均だけ見ると、日本株は高値を抜けてかなり上昇したように見えますが、実態はやや異なります。

 日経平均先物への買いが戻りをけん引してきたため、今の日本株市場で、日経平均の上昇率が、目立って高くなっています。東証一部の全上場銘柄の加重平均からなるTOPIX(東証株価指数)は、以下の通り、まだコロナ前の高値をようやく少し超えた程度です。

<日経平均・TOPIXの推移比較:2019年末~2020年12月7日>

注:2019年末の値を100として指数化。楽天証券経済研究所が作成

 私は、日本株は配当利回りや買収価値から評価して、現水準でなお割安で、長期投資で良い買い場と考えています。今から株式投資を始めるなら、私はまず、「割安な大型の高配当利回り株」から投資すべきと考えています。

 高配当利回り株への長期投資は、株式投資で最初に学ぶべき、基本中の基本です。株式投資とはそもそも会社に資本を提供し、その見返りに会社からあがる利益の一部を配当金として受け取るものです。

「いいタイミングで株を売ったり買ったりすること」ばかりにとらわれず、財務内容が良好で、収益基盤が安定的な大型高配当利回り株を買ってじっくり長期で保有することを考えた方が良いと思います。

 銘柄の選び方として、今日は米国でかつて有名になったことがある「ダウの犬」と呼ばれる手法をご紹介します。

「ダウの犬」戦略とは

 米国で有名になった投資手法です。投資方法はきわめてシンプルです。

(1)    NYダウ採用銘柄(30銘柄)を配当利回りの高い順に並べ、上位10銘柄を選びます。その10銘柄に等金額投資します。

(2)    1年後に、もう一度NYダウ採用の配当利回り上位10社をスクリーニングします。1年前に投資した銘柄で、上位10社から外れた銘柄を売却し、代わりに新規に上位10社に入った銘柄を買います。

(3)    その後も1年ごとに、上記の方法でリバランス(銘柄入れ替え)を続けます。

 たったこれだけのシンプルな投資方法で、NYダウを上回るパフォーマンスが上げられることが多かったので、「ダウの犬」戦略は有名になりました。

「ダウの犬」を日本株に応用

 このシンプルな方法は、日本株にも応用可能です。

 NYダウは米国に上場する時価総額の大きい銘柄30から構成されます。日本で言えば、時価総額上位30社から構成される「コア30」と言う指数があります。その構成銘柄から配当利回りの高い10銘柄を選べば、「ダウの犬」と同様の戦略をとることができます。

 コア30に属する銘柄のうち、今期配当予想を開示している24社から、配当利回りの高い10銘柄を選んだのが、以下の表です。

<東証1部コア30採用銘柄のうち、配当利回り上位10社:12月7日時点>

NO コード 銘柄名 業種 配当
利回り
株価:円
12月7日
1株当たり
配当金:円
1 2914 日本たばこ産業 食品 7.2% 2,140.0 154
2 8316 三井住友FG 銀行 6.2% 3,082.0 190
3 8411 みずほFG 銀行 5.6% 1,332.5 75
4 8306 三菱UFJ FG 銀行 5.6% 448.5 25
5 8058 三菱商事 商社 5.3% 2,516.0 134
6 4502 武田薬品工業 医薬品 4.7% 3,870.0 180
7 8766 東京海上HD 損保 4.5% 5,273.0 235
8 8031 三井物産 商社 4.2% 1,910.0 80
9 7751 キヤノン 電機 4.1% 1,962.5 80
10 9433 KDDI 通信 4.0% 2,969.0 120
出所:配当利回りは、1株当たり年間配当金(今期会社予想)を12月7日株価で割って算出。今期とは、日本たばこ産業・キヤノンは2020年12月期、他は2021年3月期

実際にポートフォリオを作ってみる

 それでは、上記の10銘柄を使って、実際にポートフォリオを組んでみましょう。

 完全に10銘柄に同額を投資することはできないため、なるべく等金額になるように作ったのが、以下のポートフォリオです。全体の金額は約286万円です。このポートフォリオの平均配当利回りは5.1%です。

<東証1部コア30銘柄から作った「ダウの犬」ポートフォリオ(平均配当利回り5.1%)>

銘柄名 配当
利回り
株価 投資株数 投資金額 投資比率
日本たばこ産業 7.2% 2,140.0 100 214,000 7.5%
三井住友FG 6.2% 3,082.0 100 308,200 10.8%
みずほFG 5.6% 1,332.5 200 266,500 9.3%
三菱UFJ FG 5.6% 448.5 500 224,250 7.8%
三菱商事 5.3% 2,516.0 100 251,600 8.8%
武田薬品工業 4.7% 3,870.0 100 387,000 13.5%
東京海上HD 4.5% 5,273.0 100 527,300 18.4%
三井物産 4.2% 1,910.0 100 191,000 6.7%
キヤノン 4.1% 1,962.5 100 196,250 6.9%
KDDI 4.0% 2,969.0 100 296,900 10.4%
合 計 5.1%     2,863,000 100.0%
注:楽天証券経済研究所が作成

 次に、非課税で投資できるNISA(少額投資非課税制度:年間の投資枠は120万円)で、投資できるように、投資金額を約118万円におさえて作ったのが、以下のポートフォリオです。このポートフォリオの平均配当利回りは5.0%です。

<ダウの犬ポートフォリオから、118万円で買えるように5銘柄にしぼったポートフォリオ(平均配当利回り5.0%)>

銘柄名 配当
利回り
株価 投資株数 投資金額 投資比率
日本たばこ産業 7.2% 2,140.0 100 214,000 18.2%
三菱UFJ FG 5.6% 448.5 200 89,700 7.6%
武田薬品工業 4.7% 3,870.0 100 387,000 32.8%
三井物産 4.2% 1,910.0 100 191,000 16.2%
KDDI 4.0% 2,969.0 100 296,900 25.2%
合 計 5.0%     1,178,600 100.0%
注:楽天証券経済研究所が作成

 上記はあくまでも1つの例にすぎません。他にもさまざまな高配当利回り株の組み合わせが可能です。投資信託で「高配当ファンド」を選んで買うのもいいですが、まとまった資金があるなら、こんなふうに自ら「手作りファンド」をつくるように、個別銘柄を買って長期保有するのも良いと思います。

 なお、このように自分でポートフォリオを組むときに1つ注意点があります。「同じバスケットにすべての卵を入れるな」という投資格言があります。単一のリスクを取りすぎないよう、分散投資せよという意味です。同じ業種の銘柄ばかりでなく、いろいろな業種に分散投資した方が良いと思います。

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