※このインタビューは2019/01/11に公開した記事となります。

 投資を始めて5年半で10億円の資産を築きながら、ライブドア・ショックでその半分を失うなど山あり谷ありの投資人生を送ってきたDAIBOUCHOUさん。今回はリーマン・ショック後の経緯を聞きました。

安定性を重視し、底値が固い株主優待株を購入

──著書を拝見すると、リーマン・ショック後、一度すべての資産を現金化されていますよね。投資をやめようと思ったのですか。

 そのときはすでに個別株は持っていませんでしたから、REITをすべて売却しました。実は、ライブドア・ショックの翌年に結婚したんです。それで、それまでのように自分の意思だけで好き勝手にリスクの高い投資をするわけにはいかなくなったというか。

──奥様に投資を反対された?

 いえ、そういうわけではなく、2人で将来について話し合う中で決めました。当時は相場もあまりよくなかったし、いったん退却して様子を見ようと。

──引退を決め込んだわけではない?

 もちろんです。その頃はもう会社を辞めて専業投資家という立場でしたから、何もしないわけにはいかないですし(笑)。

──では、どうされたのですか。

不動産会社が早く売りたがっている雰囲気がバンバン伝わってきた物件を一棟購入。「売り急いでいたため、エリアや築年数の割には非常にお得な買い物ができた」とDAIBOUCHOUさん。相当無茶をしない限り、生活できる基盤がここで整った。

 ライブドア・ショックとリーマン・ショックで大きな損失を出したとはいえ、まだ億単位の資産が残っていました。そこでまず不動産投資を始めました。都内のある中古マンションが破格の値段で売りに出されていたので、それを投資用に1棟買いしたんです。10戸ほどの小さなマンションですが、今も年間1,000万円近い家賃収入があるので、いい投資だったと思っています。これに加えて、米国の社債を数千万円購入しました。

──結局、株式投資はいつ再開されたのですか。

 2010年の春ごろですね。自由に使えるお金が数百万円できたので、それを元手に再開しました。

──前と同じようなやり方で?

 いえいえ。そもそも資金が限られていたし、妻の目もあるので(笑)、目いっぱい信用買いするとか無茶なことはできませんし、する気もありませんでした。アベノミクス前で相場もよくありませんでしたし。

──では、どんな銘柄を?

 いろいろ物色し、株主優待株に狙いを定めました。株主優待株というのは、当然、優待が欲しくて買う人が多いわけですが、そういう人は長期にわたって保有する傾向があります。優待が続く限り、持ち続ける。つまり、売る人が少ないわけで、それはすなわち底値が固いことを意味します。

──優待狙いではなく、安定性が魅力だった?

 資金に余裕がなかったので、いきなり半分失うようことは絶対に避けたかったんです。だから、何より安定性を重視しました。

──ということは分散投資も意識されましたか?

 もちろんです。どこかに集中投資するのはリスクが大きいですから。おかげでいろんな優待をもらいました。これはいらんなあ、と思うものは現化もしました。

現在は割安成長株を200銘柄保有する

──それから7、8年経つわけですが、現在も株主優待株がメインですか。

 いえ、当時とはずいぶん変わりました。といって昔のやり方に戻ったかというと、そうではありません。

──今の投資スタイルについて聞かせてください。

 しばらくは株主優待株メインでしたが、その後、少しずつほかの銘柄を増やしていきました。これは投資を始めた頃から一貫していますが、割安で、なおかつ成長する可能性を秘めた銘柄を狙うというのが基本です。結果、少しずつ資産も増えていったので、2016年6月に信用取引を再開しました。ただし、昔のように現物1に対して信用2といった強気の買い方はしていません。現物1に対して信用は0.1から0.3くらい。信用取引でドカンと稼ごうというわけではなく、そのときどき必要に応じて信用取引を行うという感じです。

管理している銘柄をエクセルでまとめた表を見せてくれたDAIBOUCHOUさん。A4用紙にぎっしりと並んだ銘柄はバラエティに富んでいる。気合の入った分散投資型。

──現在は何銘柄保有しているのですか。

 200銘柄くらいですかね。

──めちゃくちゃ多いですねえ。

 そうですね。超分散投資です(笑)。

──以前は十数銘柄だったわけですよね。アーネストワンを主力にしていたときは資産全体の75%を注ぎ込んでいたとのことですし。その頃からすると投資スタイルが大きく変わった?

 今は1年で資産10倍にしようとかそういう発想はないんです。少しずつ地道に増やしていければいい。それにはどんな方法が適しているのかをじっくり考え、今のスタイルにたどり着きました。

──銘柄の入れ替えはけっこうするんですか。

 はい、しょっちゅうしています。毎日いろんな情報をチェックしていますから、買ってみたいと思う銘柄はいくらでもあるんです。オフ会のときなど、投資仲間から役立つ情報を教えてもらうこともよくありますし。でも、新しい銘柄を買うには、ある程度は売らなければならない。だから、当然、入れ替えることになります。

──どのくらいの単位で買うのですか。

 それはまちまちですね。例えばPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)などの指標を調べても買おうか買うまいか迷うことが当然、あります。そういうときは100株だけ買ってみたり。まずは少なめに買い、感触がよかったらさらに買い足す、ダメだったらすぐに売るということが多いですかね。

不動産業界では管理や賃貸関連に投資!

──では、最近、どんな銘柄を購入されましたか?

 例えば都心を中心にビルの賃貸事業とホテル事業を展開しているユニゾホールディングスなどですね。不動産業界というだけで警戒心を抱く人も多いかもしれませんが、都心の地価が大きく下がる可能性は低いので、少なくともオフィス賃貸事業を手掛けているような会社は手堅いと思います。

──かつては不動産関連銘柄に集中投資していましたよね。今も不動産関連株は多く保有しているのですか。

 今も多少は持っていますが、デベロッパーより不動産管理や賃貸の会社が多いですね。

──ユニゾホールディングスはホテル事業も展開している?

 そう、それも魅力の1つです。というのもこの会社は株主優待制度も導入しているのですが、持株数によってはホテルの無料宿泊券がもらえるんです。

──ホテルの宿泊券ってうれしいですよね(笑)。他にはありますか?

 1つは「ライフネット生命保険」です。現在のPBRの値を見ると2倍を超えますから、割高に思えるかもしれません。でも、生保業界は顧客を獲得してから利益を実現するまでの期間が長いという特徴があるため、いちがいに割高とは言い切れないんです。とくにライフネット生命保険はここ数年、業績の伸びが目覚ましいので、今後どのように株価が推移するかをチェックしています。

 不動産関連と金融関連を挙げたので、まったく違う分野から2つ目は「ズーム」という銘柄を挙げておきます。デジタルミキサーやエフェクターなど音楽用電子機器の製造・販売を手掛ける会社で、プロのミュージシャンなどにはよく知られているのですが、昨年秋、バーチャルリアリティ用の集音マイクを発売しました。これがかなり画期的なもので、ゲーム業界や音楽業界のクリエイター、さらにはユーチューバーなどにも人気を博すだろうといわれています。このところ、株価は下がっていましたが、これを機に回復する可能性があると思います。

──どれも面白そうですね。次は投資初心者へのアドバイスを伺います。
 

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