日経平均は17日に2万6,014円と2万6,000円台に乗せましたが、上昇スピードの速さに警戒感が出て18日は反落、286円安の2万5,728円となりました。

 新型コロナワクチン開発の進展、世界景気の回復期待を背景に、世界的な株高が進んできましたが、「先行きにまだ不透明感が強い中、株高のスピードが速過ぎる」との見方も出ています。そこで今日は、日経平均のテクニカル分析から、日経平均が過熱しているか否か、私の判断をお伝えすることとします。

テクニカル指標を見る場合、曇った目で見てはいけない

 今日は、テクニカル分析だけから、日経平均の「過熱度」を分析します。ファンダメンタルズ(景気・企業業績)の話は一切しません。というのは、テクニカル分析はとても役に立つのに、多くの投資家はそれを「曇った目」で見るために生かし切れていないからです。

 あるバイオ株が急騰したあと急落し、テクニカル分析で売りシグナルが出ても「人類の未来を変えるすばらしい企業だ」と思い込んでいる人には、テクニカル分析の警鐘が響きません。逆に、安値圏で出来高が細っているバイオ株が、突然、出来高をともなって急騰しテクニカルに買いシグナルが出ても、「どうせバブルだ」と思い込んでいる人には投資機会が目に入りません。

 日経平均のテクニカル分析をする時は、一切、先入観を持つべきでありません。「来年世界景気の回復が加速する」と思い込んでいると、どんなテクニカル指標を見ても「まだまだ行ける」と見えてしまいます。逆に「どうせ株はバブル」と思っていると、どんなテクニカル指標を見ても「ほら、やっぱり売り」としか見えません。

 今日はファンダメンタルズの話は一切無しにして、純粋にテクニカル指標だけ見ましょう。テクニカル指標だけ見た時に得られるインプリケーション(示唆)が何であるか、それだけを考えます。

逆張り指標は、短期的な投資判断にはあまり役に立たない

 今日は、オシレーター系指標(逆張り指標)を使い、日経平均が反落するタイミングについて考えます。テクニカル指標には、オシレーター系(逆張り)とトレンド系(順張り)があります。

  • オシレーター系(逆張り)指標:相場の転換点を探るもの。上がってきた株が上げ過ぎから下落に転じる転換点、あるいは、下がってきた株が下げ過ぎから上昇に転じる転換点を探る。
  • トレンド系(順張り)指標:トレンドが継続中であることを確認する指標。上がってきた株がさらに上げる、あるいは、下がってきた株がさらに下げると予想されるものを探る。

 テクニカル指標を見るとき、赤字で記載した重要ポイントは、頭に入れておいてください。

◆短期トレードでオシレーター系(逆張り)指標を使うことは原則禁物

 オシレーター系指標は、株式の短期トレードに向きません。短期トレードは、トレンド系指標で行うのが鉄則です。

 ただし、これには例外があります。それは、以下の点です。

◆オシレーター系指標で極端な値が出た時には、短期トレードでも有効な場合がある

 オシレーター系指標は、原則、中長期投資を考える際に使うべきものです。ただし、例外として、オシレーター系で極端な値が出る場合は短期トレードでも有効になることがあります。

 現在の日経平均には、オシレーター系指標で「短期やや過熱」の指標が出ています。ただ、これはあくまでも「短期的な弱い過熱感」です。これだけを頼りに日経平均先物をどんどん売っていくのは危険です。短期的な過熱感は、日経平均が現値近辺で数週間もみ合う(日柄調整)か、あるいは数百円下げれば(値幅調整)、消えます。

 最終的には、ファンダメンタルズ(来年の景気・企業業績)が日経平均の方向を決めますが、今日はその議論をしません。

「13週移動平均からの乖離率」で見ると日経平均に「やや過熱感」

 テクニカル指標には、さまざまな種類があります。指標ごとに見る切り口が異なりますので、どれも参考になります。ただし、多くの指標が基本的に同じ方向性を示すので、すべてを見る必要はありません。今日は、初心者の方にわかりやすい、移動平均線からの乖離(かいり)率で説明します。

 どの移動平均線を見るかは、目的や投資期間によって異なります。今日は、中期トレンドを見るのに参考になる「13週移動平均線からの乖離率」を使用します。短期トレードで使う短い移動平均線(5日移動平均線など)の話は、今日はしません。13週とは約3カ月です。3カ月の指標が日経平均の中期トレンドを考えるのに適しています。

日経平均と13週移動平均線:2017年1月6日~2020年11月17日

 詳しい説明は割愛しますが、13週移動平均線からの上方乖離率が10%を超えると、短期的に過熱感のあるゾーンに入っていると判断します。下方乖離率が10%を超えると、短期的に売られ過ぎと判断します。

 ただし、これはどちらもオシレーター(逆張り)指標ですので、ピンポイントの投資判断には役立ちません。上方乖離率が10%を超えてから上昇が加速することもあります。また、下方乖離率が10%を超えてから、下げが加速することもあります。乖離率がどこまで拡大したら反転するという、適切な判断基準はありません。

 ただし、乖離率が極端に大きくなった時は別です。2020年3月19日(コロナ・ショックの大底)では、下方乖離率が▲25.6%まで拡大しました。これだけ極端に下方乖離率が大きくなれば、逆張り指標といえども短期的な投資判断に使って良いと考えられます。短期リバウンド狙いで投資するに良いタイミングでした。

 そこから日経平均は急反発しましたが、反発ピッチが速すぎて、6月5日(日経平均2万2,863円)には、上方乖離率が16.6%まで拡大しました。10%を大きく上回っているので、過熱感があり、いったん売ってみて良いタイミングでした。日経平均は、その後反落して、6月15日には2万1,530円まで下げました。ただし、そこから急反発し、その後しばらくボックス推移に転じました。

 7~10月の日経平均が小動きで日柄調整が進んだだめ、過熱感は低下しました。11月17日に日経平均は2万6,014円まで急上昇しましたが、それでも13週移動平均線からの上方乖離率は9.7%です。「やや過熱感あり」という程度で、売りシグナルととらえることはできません。日経平均は18日に286円安となったので、乖離率は8.5%に縮小しました。

乖離率10%前後では、反転のサインと判断できない

 もっと長い期間で、日経平均の推移と13週移動平均線からの乖離率を見てみましょう。

日経平均と13週移動平均線からの乖離率:2012年1月6日~2020年11月17日

 上方乖離率が10%を大幅に超えたところに「過熱」と書き込んでいます。下方乖離率が10%を大きく超えたところには、「売られ過ぎ」と書き込んでいます。ここまで乖離が拡大すると、短期的に相場が反転すると判断して良いと思います。

 乖離率が10%、または▲10%前後になったら、「過熱」または「売られ過ぎ」の入り口にいると判断できます。2012年以降で、そうなったことはしばしばあります。ただし、そこからトレンドが加速することもあり。乖離率10%だけでは反転シグナルととらえることはできません。

日経平均インデックスファンド保有が大き過ぎるならば少し売るのも一法

 結論として、テクニカル分析から「やや過熱感」があるものの、売り判断をするほどの過熱感ではありません。ただし、もし日経平均インデックスファンドを持ち過ぎているならば、少し利益確定するのも一法と思います。

 ただし、私が毎日のレポートで推奨している「高配当利回り株」は割安と判断しているので、売る必要はなく今から買っていって良いと考えています。以下、著者おすすめのバックナンバーをご参照ください。

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