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著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
[動画で解説]どうなる日経平均?欧米で感染急拡大。
NYダウ・ナスダックは二番天井をつけて調整

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日経平均は、欧米株安を嫌気して下落も、下落率は相対的に低い

 先週の日経平均株価は、1週間で539円下がり、2万2,977円となりました。欧米で新型コロナウイルス感染が再び急拡大、回復しつつある景気が再び腰折れする懸念から欧米株式が下落した流れを受け、日本株にも外国人と見られる売りが増えました。

日経平均日足:2020年7月1日~10月30日

 日経平均は、経済再開にともなう景気の緩やかな回復を織り込んで、9月以降、レンジを切り上げ、2万2,800円から2万3,700円のレンジで推移していました。ところが、先週は、欧米株安を受けて、レンジの下値を試す動きとなっています。

 コロナ・ショック後の世界的な株高をけん引してきた米国株は、9月以降、2番天井をつけて調整色が深まっています。NYダウ平均株価・ナスダック総合指数とも、二番天井をつけて下がってきています。感染再拡大に加え、11月3日に迫る米大統領が波乱材料となるリスクも意識されています。

NYダウ日足:2020年7月1日~10月30日

ナスダック総合指数日足:2020年7月1日~10月30日

 米国株が10月に調整色を深めた要因として、以下3点があります。

【1】米国および欧州で感染が再び急拡大

 欧米で経済再開が進んでいること、また、北半球が冬場に入ったことから、欧米で新型コロナウイルスの感染が再び急拡大しています。冬場は、気温が下がり空気が乾燥することで、感染症が流行しやすい時期となります。

 来年になると予防用ワクチンが利用可能になるとの期待がありますが、ワクチンが利用可能になる前に、感染再爆発が起こり、再び都市封鎖が必要になるリスクが警戒されています。

【2】11月3日の米大統領選のリスク

 大統領選挙が実施される11月3日が近づくにつれ、大統領選をめぐる波乱に対する警戒感が強まりつつあります。

 大統領選で、優勢と考えられている民主党候補のバイデン氏は、法人増税を明言しています。トランプ大統領が実施した法人減税を酷評しており、バイデン氏が勝利すると法人増税が実施される可能性が高くなることが、米国株にとって警戒材料となっています。

 トランプ大統領は、さらなる法人減税に意欲を示しています。ただし、トランプ大統領再選の場合、中国への制裁を一段と強め、米中対立が激化する不安があります。バイデン氏が勝っても、トランプ大統領が勝っても、それぞれ期待も不安もあります。

 僅差でバイデン氏が過半数を得票した場合、トランプ大統領が郵便投票などでの不正を申し立てて敗北を認めず、選挙結果が何週間も出なくなるリスクも懸念されています。そうなると、議会はコロナ対策の追加予算を可決できず、コロナ対策の期限切れによる米景気不安が高まります。

 大統領選の結果がすんなり決まっても、同時に実施される議会選の結果によって、ねじれ議会が生じると、大統領がコロナ対策を機動的に実施できなくなる可能性もあります。民主党・バイデン候補が勝利したときに、上・下院で共和党が過半数を取ると、ねじれ議会となります。あるいは、共和党・トランプ大統領が再選したとき、上・下院を民主党が支配すると、ねじれ議会となります。

【3】 米中対立激化のリスク

 米大統領選でトランプ大統領が再選すると、対中制裁強化で、米中対立の激化が予想されます。米国は、中国が約束を守らないことを理由に、米中協議「第一段階の合意」を破棄する可能性もあります。米中対立が激化すると、世界経済にマイナス影響が及びます。

 バイデン氏勝利ならば、急激な対立激化は避けられると考えられます。ただし、それでも、米中が融和に向かう可能性は低いと考えられます。

9-10月の日経平均は相対的に堅調

 9-10月の2カ月で、日経平均は▲0.7%の下落でした。NYダウが▲6.8%、ナスダック総合指数が▲7.3%下がったことと比べると、相対的に堅調だったと言えます。

日経平均・NYダウ・ナスダック総合指数の動き比較:2020年7月1日~10月30日

注:7月1日の値を100として指数化

 9-10月の日経平均が相対的に堅調だったのには、以下3つの要因があります。

【1】7-8月の上昇率が低かった

 米国株(NYダウ・ナスダック)は7-8月に大きく上昇し、9-10月に下落しました。日経平均は7-8月の上昇率が低かった分、9-10月の下落も少なく済んでいると言えます。

【2】日本は新型コロナウイルスの感染拡大が相対的に小さい

 欧米で経済再開にともない感染が急拡大したことが、9-10月の欧米株下落の原因となりました。欧米と比べて、感染を少なく押さえている中国や日本は、9-10月は資金の避難先になりやすい面もあったと言えます。

【3】中国景気回復の恩恵を受けやすい

 中国景気が新型コロナウイルス感染拡大によって落ち込んだのは1-3月でした。4-6月からプラス成長に回帰し、7-9月のGDP(国内総生産)は前期比+4.9%と回復が強まりました。日本は、地理的にも経済的にも中国とのつながりが強く、その恩恵を受けると考えられています。

 日本の7-9月の企業業績は、まだかなり厳しい状況と考えられます。それでも、中国景気回復の恩恵を受けるセクター(自動車など)には、少し回復色が出る可能性もあります。

日本株は、長期投資で買い場の見方、継続

 東証一部の大型株は割安で、長期的に買い場との判断を継続します。11月3日に行われる米議会選で、米国株にさまざまな波乱があり得ます。米中対立の先行きにも懸念材料がたくさんあります。

 日経平均はこれからも乱高下が予想されますが、それでも来年にかけて新型コロナウイルスが徐々に収束し、世界景気が回復していくうちに、いずれ上昇トレンドに入っていくと予想しています。したがって、時間分散しながら割安な日本株に投資していくことが、長期的な資産形成に寄与すると考えています。

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