投資ブログ『たりたり機関投資家の株勉強』を運営、『今だからこそ始める! 本気で稼ぐ株式投資の教科書』という本を出版した兼業投資家、たりたり社長さんのインタビュー、中編をお届けします。今回は、ETF(上場投資信託)の魅力や注目銘柄について伺いました。 

IT産業が衰退するとは考えにくい

──前回、ETFの話題が出ましたが、「ETFって何だ?」という人も少なくないと思います。そこで、もう少し詳しくお聞きしたいと思いますが、そもそもETFの魅力ってどこにあるのでしょうか。

 前に話したように投資信託と比較した魅力でいえば、個別株投資に近い投資の醍醐味(だいごみ)を得られること。一方、個別株投資と比較した魅力でいえば、1つのETFで分散投資できることです。

 例えば、今、米国の個別株を買うとしたら、ハイテク銘柄を検討する人が多いと思います。しかし、その中から、どれか1つを選ぶとなるとなかなか難しい。今は優良企業に見えても、いずれ競争に敗れ、淘汰(とうた)されることもあり得ます。財務諸表をバリバリ分析することも難しいし、英語に精通して海外ニュースをリアルタイムで読むのも大変。しかも、それができたとしても今回のコロナのように、何が起こるか本当にわかりません。もし買った銘柄が予測不可能な急変を迎える可能性も当然ながらあり得ます。

 その点、僕が持っているS&P500「情報技術セクター」のETFは、この先、大幅に下落するとはちょっと考えにくい。企業単位で見れば淘汰されるところがあっても、情報技術産業全体で見れば、市場規模は間違いなく拡大すると思えるからです。

──たしかにIT産業が衰退するとは考えにくいですね。

 ですから、僕はS&P500「情報技術セクター」のETFは鉄板に近いと考えています。IT業界への個別株投資が難しい理由の一つに「参入障壁が低い」という事実があります。業界としての成長性はあるのですが、技術の進歩などが早く、さまざまな企業が参入しやすいのです。そのような業界で、1つの企業に投資して結果を出すためには、やはり専門的な技術知識や業界知識が必要になります。

──ただし、もし「この会社は間違いなく世界市場を制覇する」などと思える会社があったら、そっちに投資したほうがリターンは大きいのでは?

 それはもちろんです。ETFは勝ち組、負け組すべて合わせて株価が決まるので、一夜明けたら2倍になっていたなんてことはありません。それに対して個別銘柄は、短期間で5倍、10倍になることもあります。実際にテスラという、電気自動車メーカーは、2020年10月時点で、年初来で株価は約4倍にもなっていますから。

──ただし、実際には企業の未来を言い当てるなんて専門家でも不可能ですよね(笑)。

 はい(笑)。だから、ETFに投資するのが賢明だと僕は思います。

最初に買うとしたらバンガードの人気ETF「VOO」

──米国ETFといっても、かなり種類がありますよね。

 そうですね。日本で買えるものだけでも、たくさんあります。

──たりたり社長さんは、S&P500の「情報技術セクター」と「ヘルスケアセクター」のETFをお持ちとのことですが、具体的な商品名を聞いていいですか。

 バンガードのS&P500連動ETFに「VOO」という商品があります。この「VOO」は500銘柄全てで構成されますが、それ以外に11のセクターごとの商品もあります。僕が持っているのは、その中の「情報技術セクター」ETFと「ヘルスケアセクター」ETFです。前者は「VGT」、後者は「VHT」と呼ばれます。

──バンガード以外にもS&P500連動ETFはありますよね。なぜバンガードを選んだのですか?

 バンガードは世界最大級の運用会社であり、「VOO」シリーズはとても人気があります。そういう人気商品は資産総額が大きく、繰上償還(運用を途中でやめて、ファンドを終了させること)されにくいんです。

──メジャーな商品のほうがおトクだということですね?

 おトクとも言えますが…、とにかく安心感があると思います。とくに初心者の場合は、自分で比較検討するといっても難しいので、人気商品を選ぶのがいいのではないかと思います。人気商品にも不安定な商品はありますので、あくまでも最低限の知識は身に付けた上で…ですが。

 ETFが初めて!という方は、最初はセクターETFではなく、「VOO」を購入してみてはどうでしょうか。米国を代表する500銘柄全てに投資する商品ですから、万が一、情報技術産業が傾いたりしても、大きなダメージを受けることはありません。安定性という点ではピカイチだと思います。

──まずは「VOO」から始め、少し慣れたらセクターETFにトライするのがたりたり社長さんのおすすめのステップなのですね。

 はい、それが無難だと思います。それに、セクターETF投資をすることで、セクターの知識が身につくので、個別株投資をする際にも、その知識が役立つと思います。

初心者には「生活必需品」と「一般消費財」セクターがオススメ

──初心者が次に、セクターETFにステップアップするとしたら、やはりご自身が保有している「VGT」と「VHT」でしょうか?

 そこは難しいところですね。情報技術産業とヘルスケア産業が伸びるのは間違いないと思いますが、どちらも一般の人にはとっつきにくい分野ですよね。どんな企業があるのか、社長はどんな人なのか、米国ではどんな立ち位置なのか、今後どういうビジネスプランを持っているのか…なかなか日本からは見えにくいですよね。

──そういうセクターは初心者には向いていないんですか?

 自分が理解できない分野だと興味を持ちにくいですよね。ETFのよさは株式投資の醍醐味を感じられることや、個別株投資の練習になることだと言いましたが、興味が持てないと価格の変動をチェックしたりするのは相当大変。やる気も続きにくいのではと思います。そういう意味では、もっとわかりやすいというか、身近に感じられるセクターを選ぶといいんじゃないでしょうか。

──S&P500のセクターは11あるんですよね。ほかの9つはどういうセクターなんですか。

 前回、「公益」と「金融」、「素材」の3つを例に挙げましたが、ほかに「資本財」「エネルギー」「不動産」「コミュニケーション」「生活必需品」「一般消費財」があります。

著書『今だからこそ始める! 本気で稼ぐ株式投資の教科書』内でも詳細に説明されているS&P500指数の11セクター。それぞれの代表的企業も記載されており、イメージがつかみやすい

──その中で身近なセクターというと…?

 まずは「生活必需品セクター」と「一般消費財セクター」でしょう。前者はP&Gコカコーラペプシコ(ペプシコーラの会社)、コストコなど、後者はアマゾンマクドナルドナイキなど馴染みのある企業で構成されていますし。

──確かに、日本でも知名度があり、イメージしやすいですね!

 はい。この2つのセクターなら、初心者でも楽しく投資できるんじゃないかと思います。

 ちなみに「生活必需品セクター」は景気に左右されにくい「ディフェンシブ銘柄」で、「一般消費財セクター」はどちらかというと景気に左右されやすい「シクリカル銘柄(景気敏感株)」です。ですから、この2つを保有していると、景気がいいときは「一般消費財セクター」が全体を押し上げてくれて、景気が悪いときは「生活必需品セクター」が下支えしてくれます。

 その2つの投資経験があると、今後投資をしていく中で経験するであろう好景気・不景気に対しての経験を積むことができます。

──バンガードのシリーズだとそれぞれどういう呼び名なんですか。

「生活必需品セクター」は「VDC」、「一般消費財セクター」は「VCR」です。

──成長性を重視したい人は「VGT」か「VHT」、安定度や分かりやすさを重視したい人は、まずは「VDC」か「VCR」を検討してみるとよい、ということですね。

 はい。ただし、それら以外の7つもそれぞれよさがありますから、ご自身がお勤めの業界や、取引先に多いセクター、学生時代の専門分野だったなど、親しみがあるセクターなどがあれば、調べてみるといいと思います。

──ETFについてはよく分かりました。次回は個別株投資についてお伺いします。

 

 

>>前編:初心者なら投信の次はETFがおすすめ!
>>後編:たりたり社長さんが「買いたい」個別銘柄とは?