今だからこそ始める! 本気で稼ぐ株式投資の教科書』という本が話題となっています。筆者は、平日は一般企業に勤務するサラリーマン投資家・たりたり社長さん。自らの投資経験、および機関投資家としての経験をもとに、安全かつ着実に資産を増やすには何から始めるべきか、いわば投資のプロが徹底して初心者向けに書いた、分かりやすさが評判の一冊。今回は、投資ブログ『たりたり機関投資家の株勉強』やツイッターでも情報を発信している、たりたり社長さんにインタビューしました。 

▼たりたり社長さんProfile
現役銀行員。就職をきっかけに投資について興味を持ち、知識ゼロ経験ゼロの状態から投資の勉強を始める。利益が生み出せるようになるまでの自身の経験をもとに、株式投資にまつわる知識をTwitterやブログなどで発信している。
ブログ:「たりたり機関投資家の株勉強
Twitter: https://mobile.twitter.com/taritariblog

まず行動!でも、知識&経験不足のまま個別株投資はリスクも!

──たりたり社長さんは、機関投資家として金融機関に勤務経験のある、いわばプロですよね。それなのに著書は、簡潔で分かりやすい短文で、次に何をすればいいかが明確に章立てしてあって、徹底して初心者向けに書かれていたので、安心して読み進められました。​

 ありがとうございます! 仕事柄、自分も投資本を何冊も読むのですが、正直、難しすぎて途中までしかまだ読めてない本や、この本を読んだら次はこれを読まないと理解が追い付かない、みたいな本が多くて(笑)。仕事で必要な私ですらこれだから、本業が別にある人にとってはもっと難しいのでは…と思ったんです。初心者のやる気が途中で折れないような本にしたい、と思って、「初心者が、この一冊だけで完結する!」を目指して書きました。私が本を読んでいて、最も挫折しやすかったのは、、ある本の理解を得るためにもう一冊別の本を読まなければいけない時、だったので、1冊で完結できることを目標にしたんです。

今だからこそ始める! 本気で稼ぐ株式投資の教科書
2020年08月19日発売/株式会社KADOKAWA
1,540円(税込)
※電子版には特別付録「応用編 個別株投資の分析」が付いています!

──初心者に対して、日本株より米国株推しであること。また、投資信託→ETF(上場投資信託)→個別株というステップを踏むことを進めているのが、印象に残りました。

 はい。例えばデイトレードとか短期間で売買差益を狙いたいというなら、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)など、身近な日本株への投資でも実現する可能性はあります。でも、長期的に安定した利益を得たいなら、米国株インデックス(S&P500など)に投資するのがよいのでは、と僕は思っています。

 日本株の中にも良い銘柄はたくさんあるのですが、投資信託などの、市場全体に投資するインデックス投資だと、日本よりも米国のほうが指数として優れている面が多いように思います。

──米国は世界第1位の経済大国であり、今後も世界がひっくり返るような出来事がない限り、経済成長は続くだろう。だから、長い目で見れば米国企業に投資するのがよさそう、ということですか?

著書『今だからこそ始める! 本気で稼ぐ株式投資の教科書』内で提唱している、投信→ETF→米国株投資という初心者向けのステップ。STEP3として提唱している「米国株」の背景と投資意義を、数値とデータをもとに詳細分析している。大事なところには下線を引いて強調してあるため読みやすい

 はい、過去50年を見ると、米国の株価は35倍に膨れあがっています。もし50年前に100万円投資していたら、3,500万円になっているということです(複利はいったん無視しています)。今後も、それと同じペースで成長することはないにせよ、株価の上昇は長期的に続くと考えています。

──でも、今回のコロナショックのようなこともありますよね…。

 もちろん、一時的に下落することはあります。過去にもリーマンショックをはじめ、何度か大きく下落していますし。でも、これまでも、やがて上昇に転じ、それ以前の株価を上回ってきました。一時的に下がっても保有し続ければ、10年後、20年後には大きな資産になると思います。

──最初は投資信託から始めよう、と著書で熱く書いておられますが、投資信託が初心者に向いている!という理由を教えてください。

 最近は投資信託のメリットが広まりつつありますが、新聞やWebでも、株価の上下がニュースになることも多いので、「投資=個別株」と連想する人もまだまだ多いと思います。「××という会社が注目されているので、その会社の株を買っておけばいいのかな…」と思う初心者も多いんじゃないでしょうか。

 ニュースになるような、誰もが知っているような大型銘柄であれば、ある日突然、株価が半額になるといったことはないかもしれません。しかし、短期間で急成長した企業などは、明日何が起こるかわかりません。株価が急騰すれば大きな利益を得られますが、大暴落して大金を失うこともあり得ます。ですから、まったく未経験者がいきなり個別株を大量に購入することはあまり勧めたくありません。株の世界は奥が深く、初心者の方には想像もできないリスクが潜んでいるケースがあり、想定外の、理由から大きく下落する場合もありますから。

──個別株投資の場合、ある程度は知識が必要ですよね。

 はい。急成長した会社は明日どうなるか分からない、と言いましたが、その会社のビジネスモデルの強みや弱点を把握できるくらいの知識があれば、ある程度は予測できるでしょう。また、財務諸表などを読み解く能力があれば、事前に異変をかぎ取ることもできるかもしれません。だけど、初心者がそれを完璧にやるのは、時間も知識もかなり必要で、ハードルが高いですよね。そういった知識を持っていないと、少なくとも継続的には、利益を出すのは難しいと思います。

投資信託に慣れたらETFにトライしてみよう

──その点、投資信託なら、特別な知識はいらないのでしょうか?

 知識ゼロでOK!とは言いません。例えば投資信託を購入するときには、どれくらい手数料がかかるのか、中身がどんな銘柄を組み合わせた商品なのか、などの、手続きや商品の基本知識をチェックすることは必要です。ただ、それは、証券会社のページや記事などを読めば理解できます。初心者だとしても、そこを飛ばしてはいけません(笑)。

 ただ、それでもインデックス投資なら、個別株よりも、気を付けるべき部分がいくぶん少なくはなると思います。

──投資信託を買ったら、次はETF(上場投資信託)に挑戦することを勧めていらっしゃいますね。投資信託の次は個別株を検討する人も多いと思うのですが、たりたり社長さんが、次のステップとしてETFを推す理由を教えてください。

 投資信託(ここではアクティブファンドでなくインデックスファンドに限定して話しますが)は、日本ではいえば日経平均株価やTOPIX、米国でいえばダウ平均やS&P500といった株式指数に連動した金融商品ですが、その点はETFも一緒です。だから、ETFも個別株に比べたらリスクは少ないし、企業分析などの必要はありません。ただし、ETFは取引所に上場している商品なので、リアルタイムで株価が変動するなど、個別株投資の要素を併せ持っています。

──つまり、個別株投資の練習になるということですね?

 そう思っています。おそらくトウシルの読者の中には「自分は投資信託の積み立てで十分」「個別株も興味はあるけど、勉強が難しそうで自分には無理」と思っている方も少なくないと思います。そういう方にとっては、「投資信託一筋!」という手法もアリだと思います。ただ、投資信託に慣れてきて、「やっぱり個別株にチャレンジしてみたい…」と思い始めた人にとって、個別株を始める前のステップとして、ETFにトライすることを私は提案したいのです。

 日本の代表的なETFには商品として、「東証株価指数(TOPIX)」に連動するETFがあります。TOPIXとは、東京証券取引所によって発表される、東証第1部の全銘柄の動きを反映した株価指数のこと。このTOPIXに連動するETFは、TOPIXの値動きとほぼ同じ値動きをします。よって、個別株を単独で購入するよりも、価格の急変が起こりにくいのが魅力です。

 1社の株価は1日に10%以上、上下することもありますが、1,500社を合わせたTOPIXなら平均化されるので、結果的に株価の変動がマイルドになります。

──リスクが怖い人は、どうしても値動きがおとなしい投資信託の枠から飛び出す勇気が持てないですよね。

 はい。投資信託の場合、値動きは1日1回だけ、基準価額が算出されるので刻々と価格が変わるわけではありません。それに対してETFは、普通の株と同じように、市場が開いている間は、政治経済や企業情報、ニュースなど、いろんな影響を受けながらリアルタイムで株価が変動します。しかし、個別株よりは安定感がある。だから、ETFを保有していると、リスクを感じすぎない状態で、個別株投資の醍醐味(だいごみ)の一端に触れることができると思うんです。

 例えば、先日の安倍首相の辞任報道がニュースになったタイミングでは、日経平均株価が一瞬で2%下落し、その後少しずつ値を戻しました。投資信託への投資だけでは、そのような「一瞬で株価が大きく動き、そのあと回復する」という経験はできません。投資信託は買っているけれど「投資してる感がイマイチ実感できない」…と思い始めた方は、ぜひETFを検討してみてほしいですね。

S&P500連動インデックスファンドの積み立てから始めた

──ETFについては中編でしっかりお話を伺いますが、まずはたりたり社長さんの投資デビューについて教えてください。

 社会人になってすぐ投資を始めました。といっても銀行や生命保険会社、証券会社など、金融機関に勤務している人間は、金融商品取引法などによって、投機的利益の追求を目的とする有価証券の売買はできないなど、いろいろ制限があるんです。僕の勤務先も投資信託とETFは購入できますが、個別株の売買は禁じられています。

──それで、投資信託やETFを買ったわけですね。

 はい、まずは自分で投資体験を持つことも大事かなと思ったので、まずは投資信託の積み立てを始めました。

──具体的にはどんな商品ですか?

 米国の株式指数であるS&P500に連動するインデックスファンドです。

──最初から米国株だったんですね。

 はい。周囲の先輩たちに「何を買ってるんですか?」と聞いて回りました。当時はほんとに初心者だったので(笑)。そうしたら、「S&P500連動のファンド」を買ってる先輩が多かったんです。S&P500は、米国を代表する企業500銘柄で構成される指数です。つまり、S&P500連動のインデックスファンドを買うということは、米国市場そのものに投資するようなものなので、安心して保有できるのではないかと思いました。

──積立額はどれくらいでしたか?

 最初は月3万円ほどです。その後、徐々に増やしていきました。今は、何かあっても最低半年以上は生活できる、最低限の「生活防衛資金」と普段の生活費以外は、投資に回しています。

──最初は少額からのスタートだったんですね。ETFはしばらく投資信託を買った後に始めたんですか?

 はい。米国ETFにはセクターETFというものがあるんです。S&P500連動のインデックスファンドの積み立てを始めたと言いましたが、このS&P500は、電力会社など公的な事業を行う企業の集まりである「公益セクター」、金融関連会社が集まった「金融セクター」、化学素材系の会社が集まった「素材セクター」など11のセクター、つまり、分野に分かれています。これらそれぞれの分野の株式指数に連動するのが「セクターETF」です。

──500社すべてではなく、特定のセクターに投資できるということですか?

 はい。そういうことです。

──11セクターの中のどれを買ったのですか?

「情報技術セクター」と「ヘルスケアセクター」です。10年、20年先を見据えると、IT関連と健康関連は確実に成長するだろうと考えたからです。

──なるほど。運用成績はどうでしたか?

 最初はまあまあだったんですが、今は…コロナショックで…(苦笑)。とはいっても、そのあとの大幅な反動上げで、今は堅調な成績となっています。

──いったん下がってしまった時はショックだったと思いますが、買ったことを後悔していますか?

 いえ、それはありません(笑)。何度も言いますが、一時的に株価が下がるのは想定内ですし、いずれ回復すると確信していますから。今後、下落の可能性もありますが、それでも、ITとヘルスケアセクターについては長期的に成長すると信じています。

──なるほど。今後に期待ですね。中編では、たりたり社長さんのメイン銘柄「ETF」についてじっくりお話を伺います。

>>中編:結局何を買えばいい?おすすめの米国ETF5選!
>>後編:たりたり社長さんが「買いたい」個別銘柄とは?