先週の日経平均は、1週間で105円上がり、2万3,516円となりました。米大統領選という一大イベントを控え、上下とも大きくは動きにくくなっています。また、これから日米で7-9月の決算発表が始まりますが、決算内容を見極めないことには、大きく動きにくいという事情もあります。

日経平均週足:2019年10月1日~2020年10月23日

 日経平均だけ見ていると、株式市場の動きが小さくなっているように見えます。ところが、東証マザーズ指数を見ると、まったく違う景色が見えます。

 東証マザーズ指数は、4月以降、急騰が続いていました。ところが、先週は大きく下げました。10月22日には、1日で▲4.5%も下がりました。値上がりの速さに警戒感が広がり、利益確定売りが広がりました。

東証マザーズ指数週足:2019年10月1日~2020年10月23日

 東証マザーズには、コロナ禍が追い風になるITサービス銘柄が多数あります。2月にはコロナショックで急落しましたが、4月以降、「倍返し」以上の上昇を演じています。3月の安値(557.86ポイント)と10月の高値(1,365.49ポイント)を比較すると、実に2.4倍です。さすがに、上昇ピッチが速すぎることに警戒が広がりました。

 東証マザーズ指数と比較されるのが、コロナ後に、最高値を更新した米ナスダック総合指数です。コロナ禍で、成長性が高まったと考えられるGAFA(グーグル・アマゾン・フェイスブック・アップル)など大型ハイテク株の構成比が高いことから、8月まで世界中の投資マネーを集め、連日のように最高値を更新していました。

米ナスダック総合指数週足:2019年10月1日~2020年10月23日

 コロナ禍でリモートワーク、リモート会議などITを使った技術革新が世界中に広がったため、成長期待がさらに高まりました。ただし、7-8月の上昇ピッチが速過ぎたことから、9月以降、利益確定売りが集中し、上値が重くなっています。

 GAFAによる独占を問題視し、規制導入を考えている米民主党が、11月3日に実施される米大統領選・議会選で優勢と見られていることも、ナスダックの不安材料となっています。
今週、10月29日(米国時間)に、GAFA4社が一斉に7-9月決算を発表します。期待される利益が出てくるか、決算後の株価反応がどうなるか、注目されます。

東証マザーズ指数は、米ナスダック指数をも凌駕する急騰だった

 コロナショックで、世界の株価が急落を始めた2月半ば以降の東証マザーズ・米ナスダック総合指数・日経平均・NYダウの動きを比較した、以下のグラフをご覧ください。

NYダウ週足:2019年10月1日~2020年10月16日

注:2020年2月21日の値を100として指数化、10月23日まで

 日経平均とNYダウは、暴落前2月21日の水準に戻りつつある中で、上値が重くなっています。一方、東証マザーズとナスダックは、暴落前の高値を大幅に更新しています。

 東証マザーズとナスダックを比較すると、驚くべきことに、マザーズの方がかなり大きな上昇となっています。ナスダックの時価総額上位に、世界のITインフラを支配して高い利益を上げている会社が多いことに比べると、東証マザーズの時価総額上位は、まだ赤字の会社も多数あります。さすがに上昇ピッチが速すぎるとのムードが広がってきたと言えます。

東証マザーズには、利益がまだあまり出ていない銘柄が多い

 東証マザーズ指数の過去3年の動きを、振り返ってみましょう。

東証マザーズ指数の動き:2017年10月~2020年10月(24日)

 東証マザーズ指数は、2018年1月に高値(1355.55)をつけた後、下落が続き、コロナショック後の2020年3月には、一時557.86まで下げました。そこから急騰、2020年10月には、一時1,365.49まで上昇し、2018年1月の高値を少しだけ超えました。そこから、高値警戒感が強まって、急反落したところです。

 東証マザーズには、時代の波に乗った成長株が多く、それが人気の理由です。ところが、現時点でまだ赤字や、わずかしか利益が出ていない銘柄が多いことが難点です。

 2018年1月に高値をつけた時、マザーズの時価総額上位には、そーせい(4565)ミクシィ(2121)サイバーダイン(7779)ジーエヌアイ(2160)サンバイオ(4592)などがありました。当時、ミクシィ以外は、赤字でした。

 その後、ミクシィは東証一部に移り、そーせいとジーエヌアイは黒字化しました。ただし、サイバーダインとサンバイオは今も赤字が続いています。

 今月、東証マザーズは、2018年1月の高値を一時抜きました。現在、東証マザーズ市場の時価総額上位を見てみましょう。メルカリ(4385)フリー(4478)ラクス(3923)弁護士ドットコム(6027)BASE(4477)などがあります。うち、メルカリ・フリー・BASEはまだ赤字見通しです。メルカリは国内メルカリ事業で高い利益を上げていますが、海外事業などの赤字が響いて、赤字が続いています。フリーは、売上高が大きく伸びており、将来が楽しみですが、利益はまだ赤字です。

 ラクスは黒字でも、予想PER(株価収益率)は144倍と高水準になっています。弁護士ドットコムも黒字ですが、予想PERは622倍です。

 このように東証マザーズには、将来有望な企業群が多いものの、まだ収益的には評価できない企業が多いと言えます。

 東証マザーズの見通しですが、しばらく下げが続く可能性を警戒すべきです。短期的に株価がかなり過熱しているため、長期的に有望でも、短期的には要警戒シグナルが点灯していると考えています。東証マザーズ株をたくさん持ちすぎている方は、利益確定(または損失確定)で少し売って、保有を減らして様子見することも、選択肢となると思います。

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