米国株式も香港株式もワシントン情勢をにらむ動き
10月の米国市場ではダウ平均、S&P500指数、ナスダック総合指数などが反転。国内市場でも日経平均は2万3,500円程度で底堅く推移しています。
オクトーバー・サプライズがトランプ大統領の新型コロナ感染とホワイトハウスのクラスター化だったことで、バイデン民主党候補の優勢が鮮明に。香港株式が上昇に転じたこともリスク選好要因です(図表1)。
とはいえ、米国ではホワイトハウス(共和党)と下院議会(民主党)が追加経済対策を巡る協議で難航。大統領選挙・議会選挙(11月3日)を控えた政治的な駆け引きが続くワシントン情勢が株価の上値を抑える地合いとなっています。
なお、最新の世界ファンドマネジャー調査(BofA/10月13日発表)によると、機関投資家は概して米選挙直後の混迷を警戒しています。
調査に答えたファンドマネジャーの約6割(61%)が「選挙結果に対して異議が申し立てられ、11~12月の株式市場に高いボラティリティーをもたらす」との予想を示しました。
選挙動向はいまだ予断を許さず、目先は政治経済を巡る思惑と不確実性が相場の重石となりそうです。ただ、中期的な観点でみると米国株式市場も国内株式市場も、コロナ禍の長期化で「過剰流動性相場」が当面続くとの見方に変わりはありません。
雇用情勢と企業の資金繰りを配慮し、超低金利の継続とマネーサプライ(マネーストック)の増加に象徴される金融緩和の長期化と景気刺激策が株式市場を下支える相場を見込んでいるからです。
<図表1>10月は米国株式と香港株式が反転した
東証1部上場銘柄で「本年度の時価総額増加トップ銘柄」は?
本稿では、「コロナ禍が拭えない本年度(2020年4月以降)の日本市場で相対的評価が高まった銘柄群」に注目したいと思います。
具体的には、TOPIX(東証1部上場企業)と東証マザーズ指数の構成銘柄で時価総額を増やしてきた企業を「トップ銘柄」と呼びます。
まずは、TOPIXの構成銘柄(約2,196銘柄)をベースに、本年度(2020年4月以降)に時価総額を増やしてきた銘柄を「時価総額増加額順」に記載します。
株式市場における「時価総額(株価×発行済株式数)」は、事業(ビジネス)の成長性、収益性、社会への貢献度を集約する企業価値を反映するとされます。
増資や株式分割で発行済株式数が増加しない限り、株価の好調・不調が時価総額の増減を左右します。時価総額の変化(増減)は、企業に対する投資家の評価・期待の変化を示します。
図表2に示す「時価総額増加ランキング15社」は「本年度に投資家からの評価や期待が高まった(改善した)銘柄群」と言えるでしょう。
<図表2>TOPIX銘柄の時価総額増加ランキング(上位15社)
図表2の上段が示すとおり、本年度にTOPIXの時価総額は約92.8兆円増加しました(約536.9兆円→約629.6兆円)。同じ期間に、ランキング1位のSBG(ソフトバンクグループ)は時価総額が約7.1兆円(約7.9兆円→約15.0兆円)増加。増加率は約9割でした。
SBGの時価総額は、国内上場企業でトヨタ自動車(約22.7兆円)に次ぐ評価を受けています。その他、2位のキーエンス(時価総額は+3.8兆円)、3位のエムスリー(同+2.8兆円)、4位の日本電産(同+2.7兆円)と「日経平均に採用されていない注目企業」が続いています。
こうした「本年度に時価総額が増加している企業群」の共通点として、コロナ禍でも優れたビジネスモデルや商品・サービスの競争力で、業績の改善・成長が見込まれている企業群が多いことが挙げられます。
デジタル化の進展やDX(デジタル・トランスフォーメーション)の普及が進むなか、国内市場でも「第4次産業革命」を映す物色が進んでいると言えそうです。図表2は「時価総額の増額面でみた本年度のトップ銘柄群」として注目したいと思います。
出遅れていた中小型株に投資マネーが流入
一方、国内の新興中小型企業で構成される東証マザーズ指数の堅調をけん引する銘柄群にも注目です。東証マザーズ指数とは、東京証券取引所・マザーズに上場されている約322社の時価総額加重平均指数です。
図表3は、2018年初以降の東証マザーズ指数とTOPIXの推移を示したものです。本年度、東証マザーズ指数はTOPIXよりも優勢に推移し、10月には2006年8月以来14年ぶり高値に到達する強気トレンドを形成しています。
<図表3>東証マザーズ指数は約14年ぶり高値を更新
東証マザーズ指数は6月、2018年12月以来約1年半ぶりに1,000ポイントの大台を回復。本年度は、出遅れ感があった新興中小型株に投資マネーが回帰する動きが強まりました。
東証マザーズ銘柄で「本年度の時価総額増加トップ銘柄」は?
世界経済や米国政治を巡る不透明感が日経平均やTOPIXの重石となるリスクがある一方、東証マザーズには海外(外部)環境に左右されにくい内需型企業、Eコマース(電子商取引)、法人向け・個人向けITサービスなどデジタル化加速から恩恵を受けやすい企業が多いことが特徴です。
図表4は、東証マザーズ指数を構成する銘柄のうち「本年度に時価総額が増加した上位15銘柄(増加額の降順)」を一覧したものです。
本年度、東証マザーズ指数の時価総額は約6.4兆円増加しました。同期間にメルカリ、BASE、フリー、弁護士ドットコム、ラクスの時価総額は2,000億円以上増えてきました。
新しいビジネスモデルやデジタル化で日本社会に高い付加価値を提供。日本経済の構造改革に寄与することで、投資家が収益の成長期待に確信度を高めている銘柄が多く含まれています。
<図表4>東証マザーズでも「デジタルシフト」が鮮明に
世界市場は、新型コロナウイルスの感染動向、米国、中国、欧州の政治経済を巡る不確実性が波乱要因となる可能性があります。投資環境の変化次第で株価が短期的に乱高下する場面もありそうです。
こうしたなか、時価総額を増やしている企業群を「市場内で存在感を高めている銘柄群」として注目したいと思います。
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