菅氏が、自民党総裁選に圧勝
安倍晋三総裁(首相)の後継を選ぶ14日の自民党総裁選で、アベノミクス継承を前面に打ち出している菅氏が新総裁に選出されました。菅氏は、明日16日の衆参両院本会議の首相指名選挙で、内閣総理大臣に就任する見通しです。
総裁選は、国会議員票394票と地方票141票の合わせて535票で争われました。結果、菅氏が377票、岸田氏が89票、石破氏が68票獲得し、菅氏の圧勝となりました。7派閥のうち5派閥の支持を得ている菅氏が国会議員票をほとんど獲得するのは、織り込み済みでした。今回、注目されたのは、地方票の動きでした。菅氏は、地方票で89票獲得し、石破氏42票、岸田氏10票を圧倒しました。ほぼ全国的に支持を得たということで、菅氏がリーダーシップを発揮しやすい勝利となりました。
菅総裁が誕生し、アベノミクスを継承するスガノミクスが始動することまでは、菅氏が主要派閥の支持を固めた時点で、株式市場では織り込み済みとなっていました。安倍首相が辞任の意向と報道された8月28日、アベノミクスが続かなくなる不安から、日経平均は一時2万2,594円まで売り込まれましたが、9月14日には2万3,559円まで上昇しています。菅氏優勢の報道が、日経平均上昇に寄与しました。安倍政権の財政・金融政策が維持される見通しとなったことを、株式市場は好感しました。
国際的に信認される強いリーダーになるための3つのハードル:最初のハードルは「解散総選挙」
菅氏が総裁選で圧勝できたのは、「アベノミクス継承」を前面に打ち出したからです。実際に菅氏が強いリーダーシップを発揮できるかは、これから試されます。3つのハードルを越える必要があります。
【1】 解散総選挙で安倍首相のように大勝できるか?
【2】 組閣人事で、官邸主導を貫く強力布陣を構築できるか?
【3】 長期安定政権を作れるか?来年9月で終わりの短命政権と思われないか?
最初のハードルは、解散総選挙です。菅氏は自民党総裁選で圧勝して総裁に就任、首相に就任する見込みです。ただし、国民によって選ばれたわけではないので、通常ならば、国民に信を問うために、近く衆院解散総選挙が行われます。そこで、自民党が大勝して始めて、国民の信を得た強い政権と、国内外で認められることになります。
【参考】解散総選挙に強かった小泉元首相と、安倍首相
外国人投資家は、強いリーダーシップを発揮して長期安定政権を作った安倍内閣を高く評価してきました。また、郵政解散で勝利した小泉政権の強いリーダーシップも、外国人は高く評価してきました。実際、安倍首相・小泉首相がからむ解散総選挙では、以下の通り、自民党大勝が決まる都度、それを好感した外国人の買いで、日経平均は上昇していました。
衆院解散総選挙の前後の日経平均の動き:2005年―17年に行われた5回の解散総選挙を比較
第2のハードル:官邸主導を貫く、強い内閣を作れるか
菅氏自身は無派閥で、主力派閥すべての支持を得て新総裁に就きました。それだけに、組閣人事では各派閥の意向を斟酌する必要があると考えられます。ただ、各派閥の都合を優先した年功序列人事では、強いリーダーシップは発揮できません。スガノミクスを強力に推し進める、強い政権を作れるか、注目されます。
官邸主導の強い政権を作った安倍内閣でも、最近は求心力がやや低下していました。新内閣が、まず、コロナ対策で、その先は日米・日中外交で、強いリーダーシップを発揮できるか、注目されます。
第3のハードル:長期政権を作れるか?
安倍首相が任期を残して辞任したため、次期首相の任期は、安倍首相が残した任期、2021年9月までとなります。そこまでの短命内閣と思われると、日米・日中外交でまともに相手にしてもらえなくなります。外交では、長期政権を作っていく力があるとみなされることが重要です。
日本株式市場にとっての不安材料は、また、かつてのような短命内閣が続く時代に戻ることです。次期首相が、強いリーダーシップを発揮できず、2021年9月の任期切れで退任し、その後も短命内閣が続くようだと、昔に逆戻りです。
2001年以降の内閣総理大臣の在任期間
安倍首相は、中国との関係を改善し、トランプ米大統領とも強い絆を築きました。ただ、米中対立が今後激化する中、日本の外交政策は非常に難しい局面を迎えます。日本は、米国と中国との間で、踏み絵を踏まされる局面も出てくるでしょう。
強いリーダーシップを発揮できない短命政権に戻ってしまうと外交で不利になるし、日本株に投資する外国人の失望を買うことになるでしょう。
日本株投資戦略
結論は毎回述べていることと、変わりません。日本株は割安で、長期的に買い場との判断を維持します。ただ、短期的には急落急騰を繰り返すと思います。時間分散しながら、割安な日本株を少しずつ買い増ししていくことが、長期的な資産形成に寄与すると考えます。
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