35歳、彼氏なし、カネなしのアイドルオタク。老後不安が高まる中、肉親の孤独死、しかもお風呂で。明日は我が身…?
不安から婚活、やっぱり、ひとりで生きていくために終活、でも必要経費が惜しめない、老後資金2,000万円が遠い…。
今どき当てはまる人が多いだろう、おひとりさま女性の生き抜く葛藤を描いたカレー沢薫の『ひとりでしにたい』(モーニングKC)。
「老後」「孤独死」「終活」がテーマのこの作品は、35歳独身女が主人公。伯母の「孤独死」(浴槽でスープ状になっていた)から「婚活」、そして「終活」を考えはじめる物語だ。
人間死ぬときはひとりだと強がっていても、孤独死(さらにスープ状)となれば話は別。「どうする自分?どうする老後?」
ひたむきに生きる主人公・山口鳴海(35歳・学芸員・独身)とともに、優しくない現実をユーモラスに描くフォービューティフルヒューマンライフストーリー。
今回、作者のカレー沢さんに「生きること」「お金のこと」について取材しました。
ひとりで生きるということ
――「おひとりさま」という言葉が定着し、未婚者が増加しています。主人公はオタク活動など充実した日々を送っていますが、どこか「結婚したい」「孤独死が怖い」という葛藤がありますね。
そもそも、なぜこのテーマで漫画を描こうと思ったのですか?
カレー沢:新連載を構想するにあたり、いま自分の一番の関心事は何かと考えたところ、やはり老後や死に対する漠然とした不安が常にあると感じました。
そう言うと、「30代で考えるのは早すぎる」「結婚しているのに何が不安なのか」と言われるのですが、「はたしてそうなのか」という疑問もあったのです。
自分の不安や疑問を払拭するためにも、漫画にしてみるのがいいかな、と思いました。
――おひとりさまで生きることについてどう思いますか?
カレー沢:経済的、生活的に自立できていれば、ひとりで生きていくほうが圧倒的自由で、結婚し家族を持つより楽でたのしいかもしれません。
でも年をとって、生活に不安が出てきたとき、一気に孤独や不自由さを感じることになるかもしれません。
自由を謳歌(おうか)するだけでなく、そういう未来がくることを予見して、若いうちに考えて動くことが大事だと思います。
――「若い」という、比較できない価値に気づいてほしいですね。そして、今がいちばん若いんです、この先の中で…。
ひとりで生きぬくということ
――漫画の内容で特に描くのが難しい点、こだわっている点はありますか。
カレー沢:世の中全体があまり明るいとは言えないので、内容がどうしても暗くなってしまう。
でも暗いだけ、不安にさせるだけの漫画にはしたくないし、よりよい最期を迎えるためにどうしたらよいかという希望、考えるきっかけになるような物語にしようと思いました。
――たしかに、主題は重いですが、主人公鳴海の明るさもあり、現実を薄めて見ることができました。「『希望』への『投資』 一番ケチっちゃだめですよね」(第6話より)は希望でしかなかったです!
――第1話で主人公が婚活をはじめます。家族を持って、老後不安を解消して孤独死を回避しようと動きますが失敗。「『結婚すれば安心』は昭和の発想」(第1話より)という若いエリートから草を生やされましたね。
――不安が高まる中でも、推しメンへ「お布施」投資が止まらない主人公。どうなんでしょう?
カレー沢:自分の支出と価値観を一度見直した方がよいかなと思います。
他人から見たら浪費でも自分にとっては生きる気力になる出費は惜しむべきではない、でも「よく考えたら、これはそれほどいらないな」という出費もある。
自分にとって絶対必要なものと、それほどでもないものをはっきりさせておけば、無駄な出費はなくなる気がします。
――出費の抑制方法を考えなくてはいけないですね。オタクは義務感が高いので、推しメンへのお布施の前に「孤独死」をよぎらせて、客観的に見ていきたいですね。
将来を考えるということ
――ところで、ご自身は資産形成やっているんですか?
カレー沢:昔は本当にお金に関して無知もいいところで、税金なんかもメチャクチャよけいに払っていたのですが、数年前から税理士さんを入れて、節税を考えるようになりました。
iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)、つみたてNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)、倒産防止共済、退職金共済など、個人事業主の節税になることはだいたいやってます。
他にも、積み立てで投資信託を運用しています。一時的な値動きに一喜一憂するのは辛いから、時間はかかっても低リスクなものがよかったので。
――そうだったのですね。投資をしていたとは、正直驚きです。
たしかに、ほったらかしでもできる、税金控除もあるiDeCoや積立投資など、将来を見据えて始めるのはありですね。
――最後に、ひとりで生きていくわたしたちにアドバイスを!
カレー沢:たぶん、100年も生きたくない、ちょうどいいところで死にたいと思っている人の方が多いことでしょうが、そう都合よく死ねないと思うので、あきらめて100年生きることも考えて準備しておいた方がいいかなと思います。
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カレー沢薫『ひとりでしにたい』
月刊モーニング・ツーからコミックDAYSへ連載媒体が移転
2020年10月4日(日)配信分より新作公開スタート>>
『ひとりでしにたい』(モーニングKC)著者:カレー沢薫
長州出身の維新派。
モーニングの新人賞「MANGA OPEN」に応募した作品が落選ほぼ即モーニング・ツーで連載決定。本名→カレー沢薫、無題→『クレムリン』と改め、晴れて漫画家デビュー。
時間差攻撃によって連載開始の『負ける技術』で、コラムニストとの二足の草鞋を履く。
以来、多数の媒体で連載を抱え、モーニング系には『ひとりでしにたい』で久々の里帰り。
主な作品に『バイトのコーメイくん』、『やわらかい。課長 起田総司』などがある。東京都写真美術館広報誌別冊「ニァイズ」=『クレムリン』出張版(月刊)は長期継続中。
トップ画像に「死にたい」と大きく掲げられた公式ツイッターは、つぶやき約12万発、フォロワー約2万9,000人を誇る。コラムも執筆中!カレー沢薫のほがらか家庭生活>>
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