普通の人が「資産1億円」は実現可能なのだろうか。ベストセラー『10万円から始める!小型株集中投資で1億円』の著者である遠藤洋さんは、大学生のときに、知識ゼロから投資をスタートし、失敗を繰り返しながらも、「普通の会社員でも、10年あれば1億円作れる」投資戦略を確立したという。「資産1億円」が夢ではなくなるという、投資セオリーに迫る後編!

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値上がり期待の小型株の探し方

――値上がりが期待できる小型株の探し方ですが、「自分が関与している業界」「好きな業界に絞る」「企業のウェブサイトを見る」「第三者の情報を参考にする」というお話でしたが、その他に銘柄選びの条件はありますか。。

 創業社長が現役の会社というのが私の中の重要な条件です。私が大学を卒業して就職したオープンドアという会社は、松下電器産業(現パナソニック)創業者・松下幸之助さんのひ孫にあたる関根大介さんが創業社長でした。就職した当時は小さなベンチャー企業だったので、私の直属の上司として、いろいろ教えていただきました。その時に感じたのが、いわゆるサラリーマン社長と創業社長では「目線が違う」「経営に対する覚悟が違う」「経営判断のスピード感が違う」といったことでした。

 また、創業社長はたいがい多くの自社株を持っているので、業績を上げて株価も上げたいという熱意が違います。一方、数々の企業を見ていく中で、サラリーマン社長は自社の株を持っていないことが多く、優先されるのは、退任まで穏便に経営して退職金を満額もらうことだと感じたのです(笑)。真面目に言えば、小型株投資の半分は人への投資。だから創業社長に注目しているのです。

――株式投資は好きな会社を応援することだという考え方もあります。好きな会社という視点で投資するのはどうですか。

 自分が応援したい会社を買うという価値観は大事ですが、その会社の商品・サービスが自分以外の人たちも応援してくれるかという視点が大事だと思います。多くの投資家がその会社の株を買うから値上がりするわけで、応援する人が少ないと利益を上げることはできません。

成長し続ける保有銘柄の売り時を見極める

――1億円達成に貢献した銘柄は何ですか。

 ゲーム銘柄でした。「パズドラ(パズル&ドラゴンズ)」や「モンスト(モンスターストライク)」がはやっていたころで、銘柄はガンホーやミクシィですね。自分の中で「値上がりする」という確信がありました。

――例えばミクシィですが、主力事業がSNSの会社からゲームの会社に変わりました。遠藤さんはどんなタイミングでミクシィを売買したのですか。

 SNS初期の頃なら、SNSの会社としてミクシィに投資するのはありだと思います。その後、ツイッターやフェイスブックなど多くのSNSも出てきましたが、もうこの時点では、たとえミクシィの株価が上昇し続けていても買いません。多くのユーザーが、やがてツイッターやフェイスブックに移行していくことが予想できたからです。

 私がミクシィを買ったのはその後。「モンスト」の発売時です。その時の私は、会社ではなくゲームに投資をしたつもりでした。だから、ゲームが伸びている間は保有していましたが、ゲームの寿命はせいぜい2~3年。投資の寿命はもっと短くてマックス1年だろうと思ったので、7カ月保有して6倍になったところで売りました。そこから先は買っていません。ゲームは飽和していて伸びしろがないと判断したからです。もし次に投資する可能性があるとしたら、違うゲームや違う商品サービスを出してきたときですね。

――ゲームを例にとると、ゲームが飽きられるということの他に、ガチャ規制(課金しすぎを防ぐための規制)のような業界を取り巻く環境の変化が起こったときも売りますか。

 ケースバイケースですね。企業がルールの隙間を縫って成長する余地があるなら保有を続けます。そうした情報は、その業界に詳しい人に話を聞くのが一番。私が投資コミュニティー「iXi(イクシィ)」を運営しているのも、コミュニティー内で情報を交換することが目的です。一人でカバーできる業界は限られますからね。

――ところで、時価総額200億~300億円の会社を買って順調に株価が上昇している、格別悪い材料も出ていないとして、売り時はどう判断していますか。

 時価総額が1,000億円に近づいてきたら売り時と考えています。小型株が中型株に成長したら売り時ですね。もちろん、時価総額の多寡(たか)だけで判断するわけではありませんが。

――匿名のネット掲示板とは違って、運営者の顔が見えるコミュニティーは情報精度も高そうですね。さすがにポジショントーク(自分に有利になるような発言)をする参加者はいないと思いますが。

 メンバー全員の身元がはっきりしており、投稿も実名なので情報精度はかなり高いと思います。ネットの匿名掲示板では、好き勝手に無責任な情報を発信しても、罰則はありませんよね。でも、実名で無責任な発言をすると自分の信用を減らすだけなので、みんなしっかり調べた上で情報を発信しています。

資産増は人の器も大きくする

――銘柄を探すときのアドバイスをお願いします。

 投資情報誌のようなメディアがおすすめする銘柄をうのみにして買うのは避けるべきですね。まず自分の目で世の中を見てほしいと思います。

 今なら新型コロナウイルスの影響によって人々の行動や生活スタイルがどう変わったのか、これからどう変わっていくのか、自分の周りを見ても気づきがあります。周りの飲食店がつぶれているとか、食事のデリバリーが目立つようになったとか。人々が健康に気を遣うようになったので、予防医療の会社が買われるかもしれないとか、テレワークになれば都心のオフィスがいらなくなるから、東京の不動産業は経営が厳しいかもとか。さらに東京から自然豊かな地方へ移住が加速したら、東京の企業株を売って、地方のいい企業株を買おうとか。こういった感覚を大切にしてほしいと思います。

――では、保有銘柄の情報チェックはどうしていますか。

 企業のウェブサイトのIR(投資家向け広報)情報をチェックします。そしてたまに会社名と商品名でツイッター検索。どういう情報が発信されているのかを確認する目的です。会社名だけでは株の情報に寄ってしまうので、商品名でも探しますね。採用情報なども見ますよ。

――最後に資産1億円を達成して感じたことを教えてください。

 今、私は「1億円」は単なる数字に過ぎないと思っています。消費欲に走れば家でも車でもなんでも買える金額ですが、1億円でモノを買っても世の中が変わることはない。だからもっと資産を増やして未来をおもしろくするための投資にしていきたいと考えています。資産が増えたことで自分の「器」を広げることができたと感じていますが、未来をおもしろくするためには、もっと「器」を大きくする必要があると思っています。

――特別編「遠藤洋さんがいま注目する小型株5選」へ続く

――前編「普通の人でも小型株投資で1億円への道」を読む

遠藤洋(えんどう・ひろし)氏プロフィール

 6年前まで普通のサラリーマン、いまは投資家・自由人。大学卒業後、ベンチャー企業に入社するも、投資で得たばく大な資金を元手に26歳で独立。本質的な価値を見極め「1年以内に株価3倍以上になる小型株」へ集中投資するスタイルで、最大年間利回り+600%、1銘柄の最大投資益+1,200%など、1銘柄だけでも億単位のリターンを達成。その投資経験をベースに、経営者、上場企業役員、医者、弁護士、ビジネスパーソンなど、これまで1,200人以上の個人投資家を指導し「勝てる投資家」を数多く輩出中。

『10万円から始める!小型株集中投資で1億円』(ダイヤモンド社刊行)