普通の人が「資産1億円」は実現可能なのだろうか。ベストセラー『10万円から始める!小型株集中投資で1億円』の著者である遠藤洋さんは、大学生のときに、知識ゼロから投資をスタートし、失敗を繰り返しながらも、「普通の会社員でも、10年あれば1億円作れる」投資戦略を確立したという。「資産1億円」が夢ではなくなるという、投資セオリーに迫る前編!

投資初心者も株式投資をすべき、たった一つの理由

――初心者は「まずは投資信託から始めて、慣れてきたら株式投資に挑戦する」。一般的にはこのような順序があるイメージです。でも、遠藤さんは「初心者でも個別株式投資」を勧めていますね。

 投資信託やETF(上場投資信託)に投資する方法を否定しているわけではありませんが、例えば資産1億円を目指したいという人が、投資信託やETFを買って目標を達成したという話はあまり聞いたことがありません。

 一方、数十万円から100万円前後の資金で株式投資を始めて、億単位の資産を築いた人は私の周りにも何人もいます。資産を大きく増やしたいという目標があるのなら、「時価総額200億~300億円の小型株に集中投資」するのが効率がいいと考えています。

――おすすめは小型株1~3銘柄に集中投資ということですが、かなりリスクが高い印象があります。

 もちろん株価が大きく値下がりするリスクはあります。1銘柄に資金を集中投資すると、1週間で株価が20%も30%も値上がりすることがあるし、逆に同じくらい値下がりすることもあります。ハイリスク、ハイリターンですね。

 こういうことは投資信託ではほぼ起こり得ない。だからこそ、株ではできるけれど、投資信託にできないこともあるんです。

 それに投資信託にお金を預けると、第三者(ファンドマネジャー)に「リスクのコントロールを任せる」というリスクを負うことになります。自分で銘柄を選んで投資する個別株式投資は、1週間や1日でも株価が大きく動くということを理解してさえいれば、リスクをコントロールすることは個人投資家でも可能だと思います。

――大学生のころにFX(外国為替証拠金取引)や株式投資を始めたそうですね。最初から資産1億円と目標があったのですか。

 大学生のころ、親しい教授がGT-R(日産のスポーツカー)に乗っていました。私もGT-Rが欲しいと思って値段を調べたら800万円だった。この車のため、つまり遊ぶ金欲しさに投資を始めたようなものです(笑)。ところがFXで失敗し、次に大企業の株式(大型株)を買ったものの、中々値上がりせず、もくろみが外れたという体験をしました。

――そうした試行錯誤を経て、小型株投資に行き着いたのですね。

 一般的に、大企業は成長し切っているので伸びしろが小さく、また、その株式を持つ多くの投資家は保有したままなので、株価が上にも下にも大きくは動きにくい。一方、時価総額が小さい企業はまだ成長の途中で、目を付けている投資家の絶対数も少ないので、将来株価が何倍にもなる可能性があることに気がつきました。

――遠藤さんが1億円を達成したのは、投資を始めてどれくらいでしたか。

 投資を始めて6~7年後くらいです。もちろん、最初の投資資金だけで1億円になったというわけではなく、その頃は会社員として給料をいただいていたので、生活に必要なお金を残してほとんど全部、株式投資につぎ込んでいました。銀行口座にお金を置いていても増えないし、目先で使う予定もなくて。独り身ということで余剰資金は全部投資に回しましたが、結果オーライでしたね。家族のいる人にはあまりお勧めはできませんが(笑)。

SNSの盛り上がりに左右されてはならない!銘柄の選定のポイント

――初心者がいきなり小型株を買っても大丈夫でしょうか。

 不安は理解できますが、銘柄の選定さえ間違えなければ、おかしなことにはならないと思います。銘柄の選定とは、その会社を調べて、経営者の考え方がしっかりしていて、商品サービスが良くて、売り上げ・業績が伸びている会社を選ぶこと。逆に、知らない人たちがSNS(交流サイト)で「あの株がいい」と盛り上がっているのを見て、とりあえず買ってみようというような投資の仕方はダメですね。

――企業のウェブサイトを見ると、商品・サービスは業界で一番で、素晴らしい志を持っている社長ばかりのように思えます。

 誰が情報を発信しているか重視した方がいいですね。企業のウェブサイトの情報は企業が発信しているので、悪いことは書いてないどころか、ある程度“盛っている”と考えた方がいい。IR(投資家向け広報)ページにある決算情報にはうそを書けないはずですが、それでも時々粉飾決算を指摘されることもあります。

 そこで企業を見極めるために一番大事なことは、商品・サービスをユーザーが欲しいと思っているかどうかです。さらに「会社四季報」のような第三者の情報も集める。自分が詳しい業界、好きな業界に絞り込めば、情報の真偽も判断しやすくなります。

――ユーザーが欲しいかどうか、どういう手段で知ればいいでしょうか。

 ベストなのは自分で使ってみて、本当にいい商品かどうかを判断すること。さらに家族や友人のように信頼できる人が、使ってみて「いい」と言っているとか、リピートしているかどうか。ネット上の評判は信じません。いい評判を広めるためにお金が支払われていたり、ポジショントーク(自分に有利になるような発言)だったりすることもありますから。

「1銘柄に集中投資」のメリット

――「10万円から始める!」のタイトル通り、10万円で1銘柄に集中投資すべきですか。

 株式投資をするには10万円では銘柄の選択肢が狭いので、できれば30万円くらいあったほうがいいですが、どちらにしろ1銘柄に集中投資します。例えば30万円の資金を10万円ずつ3銘柄に投資する場合、これもおもしろそう、こちらも良さそうとなって、どうしても銘柄選びに甘さが出てしまう。1銘柄しか選べないという縛りがあれば本気で銘柄を探すはずです。1年以内に株価3倍以上になる「小型株」を見つけて、1銘柄に集中投資することが基本戦略です。

 また、1銘柄に集中することによって銘柄の癖(値動きの傾向)が分かるようになるはずです。たくさんの銘柄を保有すると癖を把握することが難しくなりますが、1銘柄をずっと見ていれば、この状況ならこう動く可能性が高いということが分かってくるのです。

――最初は少額から始めたいという気持ちがある一方で、10万円の資金では、値上がりしても大して利益が出ないよな、という思いもあります。

 10万円スタートの場合、株価が10%値上がりしても利益は1万円、10%値下がりしても損失は1万円。それならアルバイトをしたほうが確実にもうかると考えるかもしれません。でも、10%増やした、損をしたという経験が大事なのです。自転車に補助輪なしで乗る練習をしているようなものだと考えるとどうでしょうか。最初は必ず転びますが、資金が小さいからケガも小さくて済む。しかも失敗した経験が糧になって、同じ失敗を繰り返さないから、歴史的なマーケットの下落がない限り、大きな資金を運用しても大損することがないのです。

 利益が出たときも気づきを得られます。そろそろ値下がりすると思って売ったところ、さらに値上がりが続いている。悔しいからその理由を探っていくうちに、自分の勘がチューニングされていくはずです。

 反対に最初から1,000万円をつぎ込んだとすると10%値下がりで100万円の損失。転んだときに致命傷を負って株式投資をやめたくなります。もったいないですよね。

――投資がうまくいったとして、資産は右肩上がりで増えますか。

 スタートが10万円でも、給料から生活費を除いた分を追加して投資額を増やしていけば、1年で元手資金を含めて100万~200万円は十分目指せる金額です。100万円になると銘柄の選択肢が広がって、資産も急角度で増やせる可能性がアップしますが、1,000万円近辺で壁にぶつかります。経験上、この壁を超えるのが難しいのですが、1,000万円を突破できれば、100万円を1,000万円に増やした感覚で1,000万円を1億円に増やせました。

――後編「1億円達成のための銘柄選びの極意」へ続く

遠藤洋(えんどう・ひろし)氏プロフィール

 6年前まで普通のサラリーマン、いまは投資家・自由人。大学卒業後、ベンチャー企業に入社するも、投資で得たばく大な資金を元手に26歳で独立。本質的な価値を見極め「1年以内に株価3倍以上になる小型株」へ集中投資するスタイルで、最大年間利回り+600%、1銘柄の最大投資益+1,200%など、1銘柄だけでも億単位のリターンを達成。その投資経験をベースに、経営者、上場企業役員、医者、弁護士、ビジネスパーソンなど、これまで1,200人以上の個人投資家を指導し「勝てる投資家」を数多く輩出中。

『10万円から始める!小型株集中投資で1億円』(ダイヤモンド社刊行)