日本株は配当利回りから見て割安と判断
日本株は、配当利回りや買収価値から見て、割安と判断しています。長期投資で、資産形成に貢献する投資対象と考えています。
日本の長期金利(10年もの新発国債利回り)と東証一部予想配当利回りの推移:1993年5月~2020年7月(29日まで)
1993年当時、長期金利が5%あった時、東証一部配当利回りは1%未満でした。この時、長期国債は割安で、日本株は割高でした。ところが、現在、長期金利はゼロ近くに低下しましたが、配当利回りは2.3%まで上昇しています。今は、長期国債が割高で、日本株が割安と判断しています。
10万円から始める高利回り株投資
日本株は、配当利回りから見て割安で、長期投資対象として魅力的と考えています。ただし、銘柄選択は大切です。人気株に飛び乗って高値づかみとなり、株価が急落すると大きな損失を被ることもあります。
これから日本株への投資を考える初心者は、日経平均株価に連動するインデックスファンドや、10万円以下で買える株への小口投資から始めたらいいと思います。一度に大きな金額を買うのではなく、毎月一定額を買い付けるなど、堅実に投資を増やしていく買い方が良いと思います。
そこで、今日は、10万円以下で買える高配当利回り株をご紹介します。
スーパースクリーナーを使って銘柄選択
楽天証券では、さまざまな条件を指定して、その条件に合った銘柄をスクリーニング(抽出)する「スーパースクリーナー」というツールを提供しています。スーパースクリーナーの使い方は、以下をご参照ください。
「スーパースクリーナーを使った銘柄分析方法を動画で解説」
※スーパースクリーナーは楽天証券にログイン後に利用できます
今日は、スーパースクリーナーを使って選ぶ、10万円以下で投資できる高配当利回り株を、ご紹介します。以下の手順で絞り込みます。
【1】10万円以下で買える1,641銘柄を抽出
まず、東証一部・二部・東証マザーズ・ジャスダック・名証に上場する銘柄について、「投資金額10万円以下」の条件を指定すると、1,641銘柄が出てきます。この1,641銘柄が、2020年7月29日時点で、最小投資単位が10万円以下の銘柄です。
【2】予想配当利回り3.5%以上6.5%以下の銘柄に絞り込む、証券業を除き112銘柄を抽出
10万円以下で買える銘柄から、配当利回りが高いものを抽出します。「配当利回り(予想)が3.5%以上」という条件を加えると、銘柄数は、一気に124まで減ります。これが、10万円以下で買える高配当利回り株の候補となります。
配当利回り(予想)は高ければ高いほど、良いというわけではありません。なぜならば、株の配当利回りは、確定利回りではないからです。業績が悪化して、減配(1株当たり配当金を減らすこと)になり、株価が下がることもあります。高配当利回りを選別する時は、なるべく減配リスクの低い銘柄を選ぶべきです。
予想配当利回りが高すぎる(6.5%超)銘柄には、減配リスクが高いものが多いので注意が必要です。きちんと調査して選別する場合は良いが、そうでない場合は投資を避けた方が無難です。予想配当利回り6.5%超の7銘柄を除外します。
また、私は、コンプライアンス上の理由で、証券業に属する銘柄の投資判断を述べることができませんので、証券業に入る5社も除外します。すると、112銘柄が残ります。
【3】さらに、時価総額が1,500億円以上、今期の配当金予想を公表している19銘柄に絞り込む
減配リスクの低い銘柄にさらに絞りこむ方法は、いろいろあります。減配リスクが低い銘柄には、一般的に以下の特色があります。
◆時価総額が大きい
◆経常利益率が高い
◆自己資本比率が高い(借金が少ない)
◆景気の影響を受けにくい業種(ディフェンシブ株)
◆経営者が株主への利益配分に積極的
すべてを満たす銘柄はありません。上記の1つか2つを満たせば十分と考えます。今日は、一番単純でわかりやすい「時価総額が大きい」(時価総額1,500億円以上)という条件で絞り込みます。
今期に限り、もう1つ、絞り込みの条件を加えます。「今期の配当金予想を会社が公表している」という条件です。
今期は、コロナショックの影響で、配当金の予想を公表していない企業がたくさんあります。配当金の予想を公表していない企業は、前期実績よりも配当金を大きく減らすリスクもあると判断します。
その方法で絞り込むと、19銘柄が抽出されます。
10万円以下で買える、時価総額1,500億円以上、配当利回り(会社が公表している予想ベース)3.5%~6.5%の19銘柄(証券業は除く)
スーパースクリーナーで抽出した19銘柄:2020年7月29日時点
コード | 銘柄名 | 株価 | 配当 利回り |
1株当たり 配当金 |
---|---|---|---|---|
1605 | 国際石油開発帝石 | 648.1 | 3.7% | 24.0 |
1893 | 五洋建設 | 569.0 | 4.4% | 25.0 |
3003 | ヒューリック | 970.0 | 3.6% | 34.5 |
3086 | J.フロントリテイリング | 691.0 | 3.9% | 27.0 |
3289 | 東急不動産HD | 435.0 | 3.7% | 16.0 |
4188 | 三菱ケミカルHD | 606.8 | 4.0% | 24.0 |
5020 | ENEOS HD | 386.2 | 5.7% | 22.0 |
5929 | 三和HD | 936.0 | 3.6% | 34.0 |
6113 | アマダ | 759.0 | 4.0% | 30.0 |
7167 | めぶきFG | 247.0 | 4.5% | 11.0 |
7186 | コンコルディアFG | 334.0 | 5.1% | 17.0 |
8306 | 三菱UFJ FG | 412.3 | 6.1% | 25.0 |
8308 | りそなHD | 369.8 | 5.7% | 21.0 |
8331 | 千葉銀行 | 506.0 | 3.6% | 18.0 |
8334 | 群馬銀行 | 347.0 | 3.7% | 13.0 |
8379 | 広島銀行 | 510.0 | 4.7% | 24.0 |
8411 | みずほFG | 137.2 | 5.5% | 7.5 |
8418 | 山口FG | 653.0 | 4.0% | 26.0 |
8795 | T&D HD | 907.0 | 4.9% | 44.0 |
出所:銘柄は楽天証券スーパースクリーナーで抽出、配当利回りは1株当たり年間配当金(会社予想)を7月29日株価で割って算出。配当金と株価の単位は円 |
私が投資してみたいと考える6銘柄
スクリーニングで選んだ銘柄に、機械的に投資するのは得策とは言えません。配当利回りが高い銘柄には、将来、減配になるリスクもあるからです。ここから、さらに絞り込む必要があります。
私は、1987年から2013年まで、日本株ファンドマネージャーをやっていました。私がもし今、ファンドマネージャーならば買ってみたいと思う銘柄は、6銘柄あります。以下の通りです。
筆者がファンドマネージャーならば買ってみたい6銘柄
コード | 銘柄名 | 配当 利回り |
業種 | 最低 投資額 |
---|---|---|---|---|
3003 | ヒューリック | 3.6% | 不動産 | 97,000 |
3289 | 東急不動産HD | 3.7% | 不動産 | 43,500 |
4188 | 三菱ケミカルHd | 4.0% | 化学 | 60,680 |
5020 | ENEOS Hd | 5.7% | 石油 | 38,620 |
8306 | 三菱UFJ FG | 6.1% | 銀行 | 41,230 |
8411 | みずほFG | 5.5% | 銀行 | 13,720 |
出所:筆者作成、配当利回りの根拠は前表、最低投資額は29日株価で最低投資単位100株を買うのに必要な金額(円) |
上記リストは、業種(不動産・化学・石油・銀行)別に、色分けしています。上記より、複数の投資銘柄を選ぶ際、特定のセクターに集中せず、さまざまなセクターに分散投資した方が良いと思います。
欧米の相場格言に、「1つの籠に、すべての卵を入れるな」があります。これは、投資において分散投資が重要という意味です。1つの銘柄、同じ業種の銘柄に集中せず、さまざまな業種に分散すべきと思います。
それでは、上記6銘柄について、簡単にコメントします。
【1】不動産2銘柄(ヒューリック・東急不動産HD)
都心のオフィスビルは、昨年まで需給が逼迫し、空室率の低下・賃料の上昇が続き、業績好調が続いていました。ところが、コロナ・ショックを受け、不動産需給は徐々に緩み始めています。在宅勤務の普及で、都心のオフィスビル需要は、長期的に減少が見込まれます。
ただし、ここで選んだ2銘柄は、株価が買収価値から見て割安な水準まで下がっていると判断しています。ヒューリックには、2019年末時点で、保有する賃貸不動産に3,700億円の含み益があります(出所:同社有価証券報告書)。また、東急不動産HDには、2020年3月末時点で、保有する不動産に2,570億円の含み益があります(出所:同社有価証券報告書)。
含み益を考慮すると、現株価は買収価値から割安で、不動産需給が緩和する見通しを考慮しても、現株価で投資する価値があると判断しています。
【2】三菱ケミカルHD
リチウムイオン電池材料など電子部材や医薬品など高付加価値品で稼いでいく力があり、コロナ・ショックで売り込まれた現株価は、割安と判断しています。
【3】ENEOS HD
エネルギ-分野で、川上(原油資源開発)から川下(石油製品)まで、一貫生産できる強みを持ちます。原油備蓄義務があり、前期は、原油急落で在庫評価損が出て収益が急激に悪化しました。ただし、原油価格が反発しつつある今期は、在庫評価損がなくなり、逆に在庫評価益が出る可能性もあり、収益の急回復が見込まれます。高配当利回り株としてじっくり長期投資して良いと考えています。
【4】メガバンク2社(三菱UFJとみずほ)
銀行に投資するならば、海外で収益を拡大させている3メガ銀行に限定すべきと考えています。日銀の低金利政策でダメージを受け、収益悪化が長引く地方銀行には、投資すべきでないと考えています。
3メガ銀行では、三菱UFJ FGとみずほFGのほか、三井住友FG(8316)も、予想配当利回りが6.4%と高く、投資魅力は高いと考えています。ただし、三井住友FGは、最低投資金額が約30万円と大きいので、上記リストには入りません。3メガ銀行の中で比較すると、海外収益拡大で先行する三菱UFJの魅力が一番高いと判断しています。
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