日経平均は、上下とも大きくは動きにくい展開

 先週の日経平均株価は、1週間で405円上がり、2万2,696円となりました。中国景気の回復が予想よりも早いことが好感され、中国関連・景気敏感株の上昇が目立ちました。

 ただし、6月以降の日経平均を見ると、大きくは上へも下へも動けない、ボックス圏となりつつあります。米中対立の激化、経済を再開した米国・欧州・日本などで新型コロナウイルスの感染が再び拡大しつつあることが、不安材料となっています。

日経平均日足:2020年2月3日~7月17日

4-6月の中国GDPは前年比プラス、予想以上に早い回復

 16日に中国が発表した4-6月のGDP(国内総生産)は前年比+3.2%で、市場予想よりも早い回復となりました。1-3月はコロナ危機の影響で、前年比▲6.8%のマイナスと、過去最大の落ち込みとなりました。回復が見込まれていた4-6月でしたが、プラスになるのは難しいと考えられていました。発表された実績は、予想以上の急回復でした。

中国GDP成長率(前年比):2007年1-3月期~2020年4-6月期

出所:ブルームバーグより楽天証券経済研究所が作成

 中国GDPは、統計データとして信頼に欠けるところはありますが、それでも、経済が立ち直りつつあることには違いありません。以下のグラフで分かる通り、中国は、最初にコロナ感染が急拡大し、最初に感染抑え込みに成功した国です。強大な国家権力を駆使して、感染封じ込めを成功させた成果で、経済回復期待が高まっています。

中国の新型コロナ推定患者数(7日移動平均)

出所:Bing-COVID19-Dataより楽天証券経済研究所:吉田が作成
患者数は、感染者数―回復者―死亡者で計算

 下のグラフで分かる通り、中国では、製造業・非製造業(サービス業)とも、急速に景況感が改善し、5-6月には、景況の分かれ目50を超えて、好調です。

中国、財新マークイット、製造業・非製造業PMI(景況感指数):2019年6月~20年6月

出所:ブルームバーグより楽天証券経済研究所が作成

上昇が加速していた上海総合指数が、米中対立激化で反落

 中国景気の回復期待を反映して、上海総合指数は6月後半から、上昇ピッチが加速していました。ところが、先週は、米中対立の激化を受け、上海総合指数は、急反落しました。

米ナスダック総合指数・上海総合指数・日経平均・NYダウの動き比較:2019年末~20年7月17日

注:2019年末の値を100として指数化

 世界のITインフラを支配するGAFAM(グーグル・アマゾン・フェイスブック・アップル・マイクロソフト)などの構成比が高い、米ナスダック総合指数が強いのは、変わりません。ただし、同様に強い動きを見せていた上海総合指数は、先週、急反落しました。

 中国が香港自治を形骸化させつつあること、また、海洋進出を強化しつつあることに対し、米国が中国制裁を強化する動きに出ていることが響いています。先週は、英国も香港情勢への憂慮などから米国に同調し、中国ファーウェイ排除の方針を決めました。

 中国と領土問題をかかえるインドも、中国との対決色を深めています。対外積極策に出つつある中国は、近隣諸国との関係悪化で、孤立する懸念も出ています。

 したがって、たとえ中国経済が再開されても、輸出は拡大せず、あくまでも中国の内需主導の回復になると考えられます。

日本株は長期投資で買い場の判断継続

 結論は毎回述べていることと、変わりません。日本株は割安で、長期的に買い場との判断を維持します。

 ただ、短期的には急落急騰を繰り返すと思います。時間分散しながら、割安な日本株を少しずつ買い増ししていくことが、長期的な資産形成に寄与すると考えます。

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