2020年3月に新潮社から出版された『33歳で手取り22万円の僕が1億円を貯められた理由』。著者の井上はじめさんは、約10年で1億円の資産を築きました。ただし、井上さんは、チャートの達人でも投資の天才でもなく、ごくごく普通の一般人。しかも、今も一般企業に勤める会社員です。「証券会社の口座をチェックするのは月に10分程度、投資の専門知識はほとんどない」と言う井上さん、いったいどうやったら1億円の資産が築けるのでしょう?
▼井上はじめさんProfile
1985年、宮崎県生まれ。社会人になってから、生死をさまよう大事故にあったことをきっかけに、お金を増やす方法を発見。「投資家ではなく節約家」をモットーに、コツコツと無理せず積み立て投資を続け、ついに1億円の資産形成を達成。現在はファイナンシャルアカデミーで勤務している。
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一生、大金には縁がないとあきらめるのは早い!
──33歳で1億円!すごいですね。庶民の夢ですが、どうやって叶えたのでしょうか?
僕は、今もそうですけど、ごく普通のサラリーマンです。33歳で月収22万といえば、お察しかと思いますが、有名企業に勤めているわけではないし、出世街道を突っ走っているわけでもありません。さらに言えば、特別、投資に詳しいわけでもありません。もちろん、まったくの初心者というわけではありませんが、投資中上級者からみれば、僕がやっていることはとても簡単な方法ばかりです。でも、そんな僕でも1億円の資産を築くことができました。3月に出版した書籍『33歳で手取り22万円の僕が1億円を貯められた理由』では、僕と似たような境遇の方たちに、アナタでも大金を得ることが可能なんですよ、と伝えたかったんです。
──たしかに、自分は一生、大金とは縁がないと思っている人が多いでしょうね。
いや、むしろ大多数はそう考えていると思いますよ。
──普通のサラリーマンでも1億円の資産を築き上げることは不可能ではないんでしょうか?
僕としては、諦めてしまっている人がたくさんいるのがとても残念です。もちろん、誰でも1億円稼げると言うつもりはありません。僕が1億円を貯めた方法はいくつかあって、そのなかには不動産投資もありますが、不動産投資というのはすぐにマネができるものではないし、成功できるとも限りません。でも、僕の投資のベースになっている、「投資信託の積み立て」なら、誰でも今すぐ始められるし、リスクを心配しすぎる必要もありません。どれだけ積み立てができるかにもよりますが、着実にお金を増やすことができる方法だと僕は思っています。
──ひと口に投資信託といってもいろいろありますが、井上さんは世界経済の成長に連動するインデックスファンドを積み立てているんですよね。
はい、長い目で見れば世界経済は成長を続ける。だったらその成長の恩恵を受けられる金融商品に投資しよう、というのが僕の考えです。
──新型コロナウイルスの発生以降、世界経済は停滞しています。2020年度の実質GDP(国内総生産)伸び率はマイナスと予想されていますが…?
はい、確かに、今回のように予測不可能なリスクも起こります。ただし、過去を振り返ると、世界恐慌時にせよ、リーマン・ショック時にせよ、いったん落ち込んでも経済は復活し、そこからまた成長を遂げています。これはなぜかというと、好不況の波はあっても、地球の人口は増え続けているからです。人口が増えれば、当然、経済規模は拡大していきます。
──これからも世界の人口は増える。だから、今回のコロナ・ショックのようなことがあっても不安はないと?
はい、今回のコロナ・ショック後も、乗り越えた先には再び成長が待っていると確信しています。
世界のGDPは2050年に250兆ドルに達する
──井上さんが世界経済に投資しようと最初に考えたのは、大学生のときなんですよね。
僕はろくに新聞も読まないような学生でしたが、大学3年になり、就職活動の時事問題対策で読むようになったんです。で、あるとき「世界の人口が66億人に達した」という記事を目にしました。たしか2006年のことです。そして「人口の増加にともない、世界のGDPも、ものすごい勢いで伸びている」と書かれていたんです。当時、というか常にですが、日本は不況下にあり、世界の経済も停滞しているものだと思っていたので、それを知ってちょっと驚きました。
──2006年といえば、ライブドア・ショックの年ですね。景気が悪化していると思っても仕方がない頃ですよね。
はい。日本は下り坂でも、世界は上り坂、と書かれていてびっくりしたんです。これからも世界の人口は増え続けるのだろうかと思い、いろいろ調べてみました。そしたら、「世界戦争が勃発したり、巨大な隕石が落ちたりしない限り、2050年には100億人に達する」と書かれていました。加えて、ある世界的な金融会社では、「2050年に全世界のGDPが250兆ドルになる」と試算していました。2006年当時、世界のGDPは47兆ドルでしたから、5倍に膨れあがるということになります。それで、世界経済の成長に連動する金融商品に投資すれば、お金を増やしていけるのではないかと考えたんです。
──ちなみに現在、世界人口は約77億人、世界のGDPは約80兆ドル(2017年末)ですから、今のところ、その予測通りになっていますね。
はい。だからといって2050年にGDPが250兆ドルに達するとは限りません。しかし、今後も成長を続けるのは間違いないと思います。
──それにしても、普通の大学生だったら、世界人口が増えていると知っても、そんなことは考えないと思うのですが(笑)。
就職活動を通して自分の将来を真剣に考えるようになったんです。大学は普通の成績だし、英語が話せるわけでもないし、仮にそこそこの会社に入れたとしても将来は知れているだろうと(笑)。会社員としてのサクセスストーリーを描けなかったんですよ。だとしたら、自分で何かやらなきゃいけないかな、と考えたわけです。
──その1つが、お金を貯めることだったんですね。
僕は学生時代、家賃を別とすると月3万円で暮らしていて、節約生活が身についていたんです。だから、節約してお金を貯めることなら自分にもできるかなと考えていました。お金が貯められるのなら、その貯まったお金を銀行ではなく世界経済に預けてみようかな、と思ったんです。
予測できないなら、いっそ全世界に投資すればいい
──世界経済の成長に連動する金融商品に投資しようと思った、とのことですが、そういう金融商品があることを知っていたのですか?
いえ、全然知りませんでした。だから、ネットで検索して調べてみました。そうしたら、「投資信託」という金融商品があり、そのなかに「世界経済の成長に連動するタイプ」があることを知ったんです。
──それで就職してすぐに積み立てを始めたわけですね。
はい、入社した年の8月から始めました。
──具体的にはどんな商品を選んだのですか?
今は世界経済全体に投資する商品はたくさんあります。「全世界株式」とか「世界経済インデックスファンド」といった名称がついているものがそうです。ただ、当時は日本株や米国株、あるいは先進国株、新興国株といったくくりの商品はありましたが、それらすべてをひっくるめたタイプはあまりなかったんです。だから、その少ない中から、手数料などを考慮して選びました。
──米国株ファンドや先進国ファンドは考えなかった?
特定の地域に投資する商品だと、その国や地域の成長が滞ったら、魅力がなくなってしまいます。世界経済全体に投資すれば、どこかが衰退しても、ほかのどこかが発展すれば補ってくれるので、安定性が高いんです。
──投資の基本は分散投資だと思ったんですね?
はい。ただし、例えば、「米国経済は世界の平均より成長する」という確信があるならば、米国株ファンドを選べばいいと思います。同じように「先進国より新興国のほうが成長する」と考えているなら、新興国ファンドを選べばいい。僕の場合は、どの国、どの地域が成長するかなんて、さっぱり分からないので(笑)、どこが成長してもある程度の恩恵を受けられる商品に投資しているということです。
──ちなみに日本株のファンドに投資する気はないんですか?
日本は人口が減少していて、今後、少なくとも飛躍的な経済成長は期待できないと思うので、ちょっと…僕は、その気になれないですね…。
──多くの投資信託のなかで井上さんが世界経済に投資するタイプを選択する理由がよく分かりました。では、次回は実際にどれくらいの金額を投資していたのか。さらには積み立てたお金がどのように増えていったかについてお伺いします。
>>中編:月10万円の積み立てが全ての始まりだった
>>後編:井上さん流 投信積み立て術を公開
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