経済再開への期待で、日経平均は2万2,000円に迫る

 5月最終週の日経平均株価は、1週間で1,489円(7.3%)上昇し、2万1,877円となりました。全都道府県で緊急事態宣言が解除され、日本経済が回復に向かう期待から、外国人投資家が日本株の買い戻しに動いたと考えられます。空運・海運・自動車など、コロナ・ショックで売り込まれた景気敏感株の上昇率が高くなりました。

日経平均日足:2020年1月4日~5月29日

 

 米国株式も、コロナ感染鈍化に伴う、経済再開期待で上昇しています。ただし、5月後半は、日本株の方が、米国株より上昇率が高くなりました。

日経平均・NYダウ・米ナスダック総合指数の週次推移:2019年12月末~20年5月末

注:2019年末の値を100として指数化

 上のグラフをご覧いただくとわかる通り、米ナスダック総合指数は、昨年末の水準を超えて、史上最高値に迫っています。グーグル・アマゾン・フェイスブック・マイクロソフトなど、世界のITインフラを支配するハイテク株の比率が高いことが、ナスダックの上昇率が高い理由です。

 コロナ感染防止のため、世界中でリモートワーク、リモート会議、Eコマースの活用が一段と拡大していますが、アフター・コロナ(コロナ終息後)の世界で、ITによる技術革新が一段と進み、米IT大手の支配力、成長性がさらに高まると期待されています。

 一方、NYダウ平均株価は、日経平均よりも戻りが鈍くなっています。NYダウには、コロナ危機で、経営悪化が著しい航空機大手ボーイング、業績へのダメージが大きいウォルト・ディズニー、建機大手キャタピラーなどが含まれているからです。

 ただし、5月だけで見ると、一番勢いよく戻っているのは、日経平均です。特に5月最終週の上昇率が高くなっています。

日経平均・NYダウ・米ナスダック総合指数の週次推移:2020年5月1日~29日

 

 コロナ・ショックが起こってから、一貫して日本株を売り越してきた外国人投資家が、5月後半は日本株を買い戻し始めていると、推定しています。

外国人が日本株を買い戻し始めている?

 2月25日からコロナ・ショックで日本株を暴落させたのは、外国人投資家でした。3月23日以降、日経平均は急反発していますが、5月15日まで、外国人は一貫して日本株を売り越しています。ただし、5月の後半は、買い戻しに転じている模様です。

外国人投資家の日本株売買動向(売買差額):2020年2月25日~5月22日

出所:東京証券取引所「主体別売買動向」より作成

 まだ、統計データが出ていませんが、日経平均が1,489円上昇した5月最終週(25~29日)には、外国人投資家が、日本株を大幅に買い越していると推定しています。日本株は、外国人から見ると「世界景気敏感株」であり、先行きの世界景気回復を織り込んで、外国人は日本株の買い戻しに入っていると考えています。

 経済を再開しつつある日本・米国・欧州・中国で、新型コロナ感染が再び拡大したらどうなる、という不安もあります。ただ、それでも、もはや再び都市封鎖することはない、との見方が広がっています。都市封鎖のコストがいかに大きいか、世界中が骨身に染みてわかった今、ワクチンが完成して普及するまで、コロナと共存(ウィズ・コロナ)しながら、経済を動かしていくしかない、との社会的コンセンサスができつつあると考えています。

 世界の株式市場は、ウィズ・コロナで経済の回復が続くシナリオを織り込み始めています。

最大の悪材料は、米中対立の再燃

 コロナ後を考えると、株式市場の最大の悪材料は、米中対立の激化だと思います。現在、世界を苦しめている新型コロナは、たぶん、1年後には先進国では終息に向かっていると思います(新興国ではさらに長引くかもしれません)。

 ところが、米中対立は、終息しません。20世紀後半の米ソ冷戦のように、50年は続くと考えられます。米中対立がもたらす、世界経済の分断は、世界経済に長期にわたり暗い影を落とすことになるでしょう。ちょうど、新型コロナの流行で、グローバル分業が高リスクだと、多くの国が思い始めているタイミングです。ここに、米中対立による分断が加われば、グローバリズム(国際的な協業・分業の推進)はかなり後退することになるでしょう。

 コロナ以上に、米中対立の激化に注意が必要と思います。

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