日経平均は一時2万3,000円超え

 先週の日経平均株価は1週間で50円上昇し、2万2,850円となりました。10月29日に一時、2万3,008円まで上昇しましたが、上値抵抗線として意識されていた2万3,000円を超えたところでは戻り売りが出ました。

日経平均株価週足:2018年初~2019年11月1日

出所:楽天証券経済研究所


 
 日経平均が順調に上昇してきている背景は、2つあります。1つは、半導体・5G(第5世代移動体通信)への投資が来年にかけて盛り上がり、ハイテク景気が世界的に回復する期待が高まってきていることです。足元の世界景気は減速が鮮明ですが、先行きに一筋の光が見えてきたところです。

 もう1つの強材料は、米中貿易戦争が「一時休戦」となる期待があることです。すでに「部分合意」に進む方針が示されていますが、まだ正式に締結はされていません。その後の協議で、「第1段階の合意」として正式に調印に進む可能性が高まっています。

 11日1日に行われた米中の閣僚級電話協議で「農業や金融サービスで大筋合意した」と伝わったことで期待が高まりました。中国商務省は2日、原則合意に達したと発表しました。さらに3日、ロス米商務長官は、中国との第1段階の合意が月内にまとまるとの見通しを示すとともに、中国通信大手ファーウェイへの禁輸が、近く部分的に解除される可能性にも言及しました。

 簡単に、2018年以降の日経平均の動きを振り返ります。

【1】2018年1~9月:世界まるごと好景気
 好景気でも米金利上昇・米中貿易戦争への不安で、日経平均は上値重い。

【2】2018年10~12月:世界景気悪化
 米中貿易戦争の影響で世界景気が悪化。世界株安を受け、日経平均も急落。

【3】2019年1~10月:米中対立緩和の期待
 米中対立が緩和する期待から、世界的に株が反発し、日経平均も反発しつつあります。世界のハイテク投資を抑圧している米中貿易戦争が緩和すれば、AI(人工知能)・IoT(モノのインターネット化)・5G(第5世代移動体通信)・半導体の投資が世界的に盛り上がり、2020年4月ころから世界景気は回復に向かうと私は予想しています。今の株高は、2020年の景気回復を織り込む、最初の動きと考えています。

NYダウは3カ月半ぶりに最高値を更新

 NYダウの最高値更新が続いていることも、日経平均の外国人による買い戻しを呼ぶ要因となっています。10月30日に今年3回目の米利下げ【注】が実施されたこと、11月1日に発表された10月の米雇用統計で米景気堅調が再確認されたこと、ことなどが、NYダウ上昇の支援材料となっています。

【注】今年3回目の米利下げ
10月30日、米FRB(連邦準備制度理事会)は政策金利であるFF金利の誘導水準を1.75~2.00%から、1.50~1.75%へ0.25%引き下げ

 11月4日のNYダウは、前週末比114ドル高の2万7,462ドルとなり、3カ月半ぶりに最高値を更新しました。

NYダウ週足:2018年初~2019年11月1日
 

出所:楽天証券経済研究所

 簡単に、2018年以降のNYダウの動きも振り返ります。2018年中は、日経平均とほぼ同じ動きですが、2019年の上昇が日経平均とは大きく異なります。

【1】2018年1~9月:世界まるごと好景気
 好景気でも米金利上昇・米中貿易戦争への不安で、NYダウは上値重い。

【2】2018年10~12月:世界景気悪化
 米中貿易戦争の影響で世界景気が悪化。NYダウ急落。12月に、2018年に入って4回目の米利上げが実施されたことも逆風。

【3】2019年1~10月:米中対立緩和の期待
 米利下げが3回行われたこと、米景気はやや減速するも堅調であること、米中貿易戦争が緩和に向かう期待があることが追い風となって、NYダウは急反発し、史上最高値を更新。

日本株「買い場」の判断を再び強調

 結論は毎回述べていることと同じです。日本株は、配当利回りや買収価値から見て、割安と判断しています。私は来年の4月ころから半導体などのハイテク景気が回復し、世界的な景気回復につながると予想しています。その実現性は少しずつ高まってきています。日本株は「買い場」との判断を、改めて強調したいと思います。

 1つリスクとして、米国が12月15日に予定している「対中制裁関税第4弾」(輸入品1,600億ドル相当に10~15%の制裁関税をかける)をまだ撤回していないことです。これには、これまで避けてきたスマートフォンなどの消費財が幅広く含まれます。これを実施すると、中国だけでなく米国の景気にも悪影響が及びます。米中対立は一段とエスカレートすることになります。

 私は、来年の大統領選を強く意識し始めているトランプ大統領は、12月15日の制裁第4弾も、何らかの理由をつけて発動しないものと予想しています。本当にそうなるか、今後の米中交渉の進展を注意深く見ていく必要があります。

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