先週の日経平均は、米中「部分合意」の発表を受けて、買い戻される

 先週の日経平均は1週間で388円上昇し、2万1,798円となりました。米中貿易協議で、トランプ米大統領が「部分合意」(合意できない問題を継続協議とし、合意可能な部分に限定して合意)に意欲を示しているとの見方が広がり、NYダウが上昇し、日経平均も買い戻されました。

 実際、11日の協議で、米中は貿易協議で部分合意に達したと発表されました。中国は、米国からの農産物輸入を拡大させ、米国は10月15日に予定していた対中制裁関税の引き上げ(2,500億ドル相当の輸入品にかけている関税率25%の30%への引き上げ)を見送ると発表しました。

日経平均株価週足:2018年初~2019年10月11日 

出所:楽天証券経済研究所

 

 日経平均は、戻り売りの出やすい「2万2,000~3,000円のゾーン」を前に足踏みしている状態ですが、世界のハイテク投資を抑圧している米中貿易戦争が緩和する方向がはっきりすれば、レンジを上抜けていくと考えています。貿易戦争が緩和すれば、AI(人工知能)・IoT(モノのインターネット化)・5G(第5世代移動体通信)・半導体の投資が世界的に盛り上がり、2020年4月ころから世界景気は回復に向かうと予想しています。

 ただし、現時点で、まだ米中対立が緩和に向かうかはっきりしていません。重要な問題はほとんど先送りして「部分合意」を発表したのは明らかです。15日の対中関税引き上げが回避されたことで、対立がエスカレートしていくのが避けられただけです。

 その部分合意すらまだ、確定しているわけではありません。

部分合意はまだ口約束。文書に署名したわけではない

 現時点でまだ、部分合意は確定していません。合意文書を作成するのにまだ3~5週間かかる見通しです。合意文書にトランプ大統領と習近平中国国家主席が署名するのに、かなり時間を要します。今回の「部分合意」劇があまりに米国主導だったので、合意文書作成の過程で、中国側が追加で要求を出す可能性もあります。そうなると、部分合意の成立に不安が出る可能性もあります。

 中国側が問題にしそうなのは、米国が12月15日に予定している「対中制裁関税第4弾」(輸入品1,600億ドル相当に10-15%の制裁関税をかける)を撤回していないことです。また、米国は中国通信大手ファーウェイへの禁輸も解いていないし、10月7日には中国の監視カメラ大手ハイクビジョンなどへの禁輸措置も新たに決定しています。米国主導で強引に部分合意に持ち込まれたように見えることを、中国政府が好まない可能性もあります。

為替市場では、「リスクオンの円安」進む

 最近、世界的に株が下がると「リスクオフの円高」が進み、世界的に株が上がると「リスクオンの円安」が進む傾向が鮮明です。先週は、部分合意を好感し、円安が進みました。

ドル/円為替レートの動き:2018年1月2日~2019年10月14日

出所:楽天証券経済研究所

 

日本株「買い場」の判断を再び強調


 日本株は、配当利回りや買収価値から見て、割安と判断しています。私は来年の4月ころから半導体などのハイテク景気が回復し、世界的な景気回復につながると予想しています。その実現性は少しずつ高まってきています。したがって、日本株は今が「買い場」と考えています。

 米中対立緩和がはっきりすれば、日経平均は昨年来高値を超えて、上昇していくと予想しています。米中対立がエスカレートする不安が残っていて、株価が割安なうちに日本株にしっかり投資していくことが、長期的な資産形成に寄与すると考えています。

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