「対中制裁関税」第4弾、9月1日発動へ

 8月2日、日経平均株価は前日比453円下落し、2万1,087円となりました。トランプ米大統領が8月1日、対中制裁関税の第4弾として、「中国からの輸入品3,000億ドル(約33兆円)に9月1日から10%の関税をかける」と発表したことから米中対立が深まり、世界景気が悪化する懸念が広がり、世界的に株が売られました。為替市場では、リスクオフの円高が進みました。 

 日本、米国、中国株の年初から先週までの動きを、以下に示します。

 日経平均・NYダウ・上海総合株価指数の動き比較:2018年末~2019年8月2日

注:2018年末の値を100として指数化

 2019年に入ってから、米中対立が緩和するか激化するか、トランプ発言によって思惑が変わり、世界の株式市場が振り回されていることがわかります。1~4月まで、米中協議の「合意が近い」とのトランプ発言を受け、世界株高が進みました。ところが5月、トランプ大統領が、中国が合意を守らないという理由で、制裁関税(2,000億ドル相当)の税率を10%から25%に引き上げると、世界的に株が急落しました。

 その後、トランプ大統領が「米中協議を再開する」と発表すると、合意を目指すとの思惑が出て、世界的に株が反発しました。ところが先週、トランプ大統領が、またしても中国が約束を守らないと主張して対中制裁第4弾を公表したことからまた、世界株安となりました。

参考:米国による、対中制裁関税発動の経緯

◆制裁第1弾(2018年7月):中国からの輸入340億ドルに25%の制裁関税
◆制裁第2弾(2018年8月):同160億ドルに25%の制裁関税
◆制裁第3弾(2018年9月):同2,000億ドルに10%の制裁関税
◆制裁第3弾の税率引き上げ(2019年5月):2,000億ドルへの関税を10%から25%に引き上げ
◆制裁第4弾(2019年8月):中国からの輸入品3,000億ドルに9月から10%の関税をかけると公表

先週は利下げに後ろ向きなパウエル発言で一時円安が進むも、トランプ・ショックで円高に

 先週のドル/円は、0.25%の利下げを決めた7月31日の米FOMC(連邦公開市場委員会)の後、パウエルFRB(連邦準備制度理事会)議長が、さらなる利下げに後ろ向きな発言をしたことを受けて、円安(一時1ドル109円台)が進みました。ところが、その後トランプ・ショックで世界株安になると、リスクオフの円高(一時1ドル106円台)が進みました。

 ドル/円の動き:2018年1月2日~2019年8月2日

出所:楽天証券経済研究所

 

日本株は買い場の判断を継続

 結論は、毎週述べていることと変わりません。日本株は買い場との判断を継続します。先週、日経平均が急落したことで、投資魅力がさらに高まったと考えます。

 今の日本株は、2019年の世界景気悪化を織り込む最終局面で、2020年の景気回復を織り込む初期段階との判断は変わりません。 

 2020年に回復を予想する理由は、以下3点です。

【1】米中休戦へ
 米中経済戦争は、来年にかけて何らかの「落としどころ」に落ち着くと予想。このまま米中対立をどんどんエスカレートさせていくと、世界景気が一段と悪化し、世界的に株が暴落するリスクが高まる。トランプ大統領は、2020年に大統領選を控えているが、大統領選前に、「景気を悪化させ株を暴落させた大統領」と呼ばれたくないことは確か。 対立先鋭化を辞さない構えを見せつつ、どこかでタイミングを計って、米中合意を導こうとすると予想。抜本的解決にほど遠い内容となるだろうが、大統領選前に、一時休戦を目指すと考える。

【2】第4次産業革命進む
米中対立が緩和されれば、米中対立によって人為的に抑圧されているAI(人工知能)、IoT(モノのインターネット化)、5G(第5世代移動体通信)、ロボットの投資が世界的に盛り上がると予想。なお、米中対立が長期化しても、5Gの投資は2020年には盛り上がると予想。

【3】資源安メリット続く
 2015年に世界的に原油をはじめ、天然ガス、石炭、銅、ニッケル、鉄鉱石などの天然資源が一斉に急落。資源安メリットが、世界の消費を盛り上げる効果は続いている。

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