いよいよ今年も恒例の、3月決算企業の本決算発表のシーズンがやってきました。それまでの株価のトレンドが変わることも多いのが決算発表。今回は「2つの変数」に注目し、決算発表前後の乗り切り方を考えてみたいと思います。
決算発表でなぜ株価が大きく動くのか、その理由が分かりますか?
決算発表前後の乗り切り方は、ちょうど1年前、「総点検!決算発表前後の波乱相場を乗り切る方法(その1)(その2)」と題して、こちらコラムおよびこちらのコラムにて詳しく解説しています。
今年の決算発表の乗り切り方も、原則は変わりませんので1年前のコラムも参考にしていただきたいのですが、今回はそれに補足した解説をしたいと思っております。
そもそも、決算発表でなぜ株価が大きく動くことが多いか、その理由をしっかりと理解できていますか?
「当期の業績が絶好調だったから株価が大きく上昇した」、「当期の業績が非常に悪かったから株価が大きく下落した」、というのは理由になりません。なぜなら、株価はすでに終わった過去ではなく、将来を見据えて動くものだからです。「当期の業績」というのは、3月に終わった、すでに過去の話です。
そうではなく、「来期が減益の業績予想だから急落した」とか、「来期が大幅増益予想だから急騰した」、というのが理由と思われている方も多いと思います。でも、これも実は正しい解答とはいえないのです。
株価が大きく動く理由は2つの予想の間の「かい離」が大きいから
決算発表で株価が大きく動く理由の正解は次のとおりです。
- 「来期」の「企業発表の業績予想」が、「市場参加者の予想」とどの程度かい離しているかで株価が動く。
ここでのキーワードが、「来期」、「企業発表の業績予想」、「市場参加者の予想」の3つです。このうち、すでに終わった当期の実績よりも、「来期」の業績に注目が集まる、というのはすでに先ほど説明しましたからご理解いただけると思います。
重要なのは残りの2つ、「企業発表の業績予想」と「市場参加者の予想」です。「市場参加者の予想」は、機関投資家やファンドマネージャーといったプロの予想である、と置き換えていただいて結構です。ただし、プロ投資家が投資しない、流動性の低い中小型株の場合は個人投資家の予想に強く影響を受けることになります。
さらに難しいのが、この「企業発表の業績予想」と、「市場参加者の予想」は変数であること、つまり、時間の経過や状況・環境の変化に応じて変動するということなのです。これについては、次回のコラムで詳しく見ていくことにします。
「減益予想=株価下落」、「増益予想=株価上昇」、だけではない
「企業発表の業績予想」と「市場参加者の予想」によって決算発表時期の株価が大きく動くとはこういうことです。
(1)企業発表:来期は減益、市場参加者の予想:来期は増益
⇒株価は大きく下落する可能性大
(2)企業発表:来期は50%の増益、市場参加者の予想:来期は10%の増益⇒株価は大きく上昇する可能性大
この(1)と(2)のケースだけであれば、「来期が減益の業績予想だから急落した」とか、「来期が大幅増益予想だから急騰した」、というのが決算時期に株価が大きく変動する理由として一見正しいように見えます。
ところが、(1)(2)以外に次のようなケースがあるのです。
(3)企業発表:来期は10%減益、市場参加者の予想:来期は30%の減益
⇒株価は大きく上昇する可能性大
(4)企業発表:来期は20%の増益、市場参加者の予想:来期は50%の増益
⇒株価は大きく下落する可能性大
なぜ減益予想で株価が急騰し、増益予想で株価が急落するのか?
(3)のケースは、来期が減益の業績予想にもかかわらず、株価が「急騰」することになります。また、(4)のケースでは、来期が大幅増益予想であるにもかかわらず、株価が「急落」してしまいます。いずれも、上記の理由とは逆の結果となるのです。
なぜこんなことが起こるかといえば、株価の変動が、「企業発表の業績予想」と「市場参加者の予想」とにギャップが生じていることによりもたらされるからです。
大幅増益予想を企業側が発表しても、それ以上の増益を市場参加者が期待していれば、「期待外れだった」となり、株価は急落するのです。逆に、減益の予想を企業側が発表しても、市場参加者がそれ以上の減益を予想していれば、「思ったほど悪くない」と見直され、株価は急騰するのです。
次回は、2つの変数、特に市場参加者の予想の変化が株価にどういう影響をもたらすか、そしてそれに個人投資家がどう対応していくのかを考えていきたいと思います。
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