半導体不況が続く中、半導体関連株が上昇しています。2020年に半導体ブームが復活する織り込みが始まっていると考えています。半導体関連株「買い」の投資判断を再度、強調したいと思います。

今年に入ってから、半導体関連株が大きく上昇

 日本の半導体関連株は、2017年に急騰した後、2018年は年初から急落しました。これは、2018年末に半導体ブームがピークアウトすることを織り込む動きだったと考えられます。

  今も半導体不況は続いています。ところが、2019年初から、半導体関連株は急反発しています。これは、2020年に半導体産業が再びブームを迎えることを織り込む最初の動きと判断しています。

日経平均株価と半導体関連5社(合成株価)の動きを比較:2017年1月4日~2019年7月24日

注:半導体5社は、東京エレクトロン・アドバンテスト・信越化学・SUMCO・ルネサスエレクトロニクスの合成株価。2017年1月4日を100として指数化。楽天証券経済研究所が作成

 半導体業界が、世界的なブームに沸いていたのは2018年前半まで。年後半は、ブームの中心にあったフラッシュメモリ(データセンターやスマホの記憶媒体に使われる半導体)やDRAM(一時的なデータ保存に使われる半導体)の需給が緩み、市況下落が続きました。さらに、米中ハイテク戦争の影響を受けて、中国での需要鈍化が鮮明になりました。半導体ブームの終焉を先取りするように、日本の半導体関連株は、2017年末から1年以上にわたり、大きく下がりました。

 日本の半導体関連株がピークアウトした時は、まだ空前の半導体ブームが続いていました。半導体関連株は、半導体産業のピークアウトを1年近く早く織り込み始めていたことになります。これは過去の経験則通りです。半導体関連株は、シリコン・サイクル(半導体ブームと半導体不況を繰り返す、半導体産業のサイクル)を1年以上、先取りして動く傾向があります。

 今、半導体関連株が急反発しているのは、2020年の回復先取りの動きと判断しています。

半導体関連、投資の参考銘柄

コード 銘柄名 半導体関連事業 株価 PER 配当利回り
3436 SUMCO シリコンウエハ 1,478 9.7 3.5
4063 信越化学工業 シリコンウエハ 10,290 13.6 2.1
8035 東京エレクトロン 半導体製造装置 17,900 17.5 2.8
6857 アドバンテスト 半導体製造装置 3,460 26.3 2.7
6723 ルネサスエレクトロニクス 自動車用半導体 645 47.6 0.1
単位 株価:円 PER:倍 配当利回り:%
出所:PERは7月24日株価を今期1株当たり利益(会社予想)で割って算出。今期利益予想を公表していないSUMCOは市場予想を使用。配当利回りは、今期1株当たり配当金(会社予想)を7月24日株価で割って算出。今期配当予想を公表していないSUMCOとルネサスは市場予想を使用。市場予想は、日経QUICKコンセンサス予想

米国の半導体株価数は高値更新

 米国の半導体株価指数(SOX指数)も同様に、急反発しています。既に昨年来高値を更新。こちらも、2020年以降に半導体ブームが復活することを、織り込む動きと考えています。

米国半導体株価指数(SOX指数)の動き:2016年末~2019年7月23日)

出所:ブルームバーグ

日韓摩擦でDRAM市況が反発し、半導体関連株の上昇が加速

 供給過剰から下落が続いていた半導体市況が反発したことが、日米で半導体株の上昇が加速するきっかけとなりました。半導体メモリの一種DRAM市況が反発しています。同じく下落が続いてきた半導体のNANDフラッシュメモリ市況にも反発機運があります。

 世界的に、第四次産業革命(IT活用による技術革新)が進む中、その基幹部品である半導体への需要は増加の一途をたどっています。昨年末に一時的に供給過剰となった半導体メモリですが、在庫調整が進んでおり、来年にかけて再び供給不足になる可能性があると判断しています。

 米中貿易戦争・ハイテク戦争の影響で、今、5G(第5次移動体通信)や半導体への投資が人為的に抑えられている状態ですが、貿易戦争がなんらかの形で休戦すれば、抑えられていた投資需要が急拡大すると考えています。

 ただし、足元、DRAM市況が反発した直接のきっかけは、米中対立緩和の思惑ではありません。皮肉にも日韓摩擦です。日本政府が半導体製造に欠かせない化学品(高純度フッ化水素)の韓国への輸出管理を強化したため、韓国の半導体メーカーであるサムソンとSKハイニックスが減産に追い込まれる思惑が出ました。韓国の2社で、DRAMの世界シェア約7割を占めていることから、DRAMが品不足におちいる懸念が生じ、需要家が早めに調達に動きました。
韓国メーカーが本当に半導体の減産に追い込まれるのか、現時点ではっきりしません。半導体の在庫調整が進んでいる中で出たニュースだったので、市況反発のきっかけとなりました。

  それでは、日韓摩擦がなければ、DRAM市況は、今でも低迷が続いていたのでしょうか?日韓摩擦が市況反発のきっかけになったのは事実です。摩擦がなければ、まだ市況は反発していなかったかもしれません。ただし、在庫調整がかなり進んでいたこと、需要増加が続いていたことから、市況反発は、時間の問題だったと思います。

2020年に半導体ブームが復活すると予想する理由

 2020年にブームが復活すると予想する理由を述べます。3つあります。

【1】次世代NANDフラッシュメモリ(3次元96層)の歩留まりが簡単には上がらないと予想
 前回の半導体ブームが予想以上に長期化したのは、当時の最先端フラッシュ(3次元64層)の歩留まりがなかなか上がらなかったためです。それでは、次の最先端フラッシュの量産は、どうなるでしょう。次世代NANDフラッシュの量産は、今年秋から始まる予定です。量産が始まっても、すぐには歩留まりが上がらない可能性もあります。そうなると、旧世代フラッシュの寿命が長期化し、再び、需給逼迫につながる可能性もあります。

【2】米中貿易・ハイテク戦争が一定の「落としどころ」に
 米中貿易・ハイテク戦争が解決することはあり得ませんが、協議が進む中で、なんらかの落としどころは見つかると予想しています。そうなると、貿易戦争への不安で止まっているハイテク関連の投資も復活すると考えられます。

【3】AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット化)、ロボット、5G(第5世代移動体通信)の普及進む
 世界で、AI、IoT、ロボット、5Gの普及が進む流れは変わらないと考えています。貿易戦争や世界景気減速の影響で、一時的に進行が鈍っているだけで、2020年にかけて、再び普及が加速すると見ています。

 私は26歳だった1987年に、投資顧問会社で、日本株ファンドマネージャー兼アナリストとなりました。その時、アナリストとして最初に担当したのが、半導体産業でした。それから、いろいろな業種を担当しましたが、半導体業界について、常に考え続けてきました。

 半導体産業、厳密に言うと、半導体メモリは波の大きいビジネスです。誰もが強気で半導体メモリの好調が続くと思っているときに突然ピークアウトし、半導体不況が始まります。もう、半導体メモリでは稼げないと思われている、半導体不況の大底から、突然、急回復が始まります。

 将来の予測はとても難しいですが、私は過去の経験も踏まえた上で、今、半導体関連株を買っていくべきタイミングが訪れたと判断しています。

 

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