米ダウ平均の堅調を支えているのは適温相場

 先週に続き今週も米国市場ではダウ平均、S&P500指数、ナスダック総合指数が最高値を更新しました。15日のダウ平均の終値は2万7359.16ドルと年初来で+17.3%、値幅では年初来4,031ドル上昇となりました。

 FRB(米連邦準備制度理事会)の早期利下げ期待が根強いなか、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)が底堅いことが株高要因となっています。実際、FRBが17日に公表した地区連銀経済報告書(通称:ベージュブック)によると、「米経済は過去数週間、引き続き穏やかに拡大」し、貿易摩擦による影響やリスクはあっても「全般的な見通しはおおむね明るい」との認識が示されました。

 一方、パウエルFRB議長は11日の下院議会証言で、「日本の教訓から得られたのは、(金融政策が)後手に回らず、物価上昇率が目標の2%を下回らないようにすること」と述べ、貿易摩擦だけでなくインフレ低迷を阻止するための「予防的な金融緩和」に意欲をみせています。

 低インフレ・低金利と業績(EPS)拡大期待の組み合わせによる「適温相場」が米国株高を支えている状況です(図表1)。一方、中国を中心とした外需の低迷、円高観測、消費増税、五輪特需の剥落不安などが重石となり、日経平均は米ダウ平均に対し劣勢を余儀なくされています。

<図表1>米ダウ平均の優勢を支える業績拡大見通し

*市場予想平均はBloomberg集計。出所:Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2019/7/17)

構成銘柄のダウ平均堅調への貢献度をチェック

 ダウ平均(ダウ工業株30種平均株価指数)は、1896年にダウ・ジョーンズ社が12銘柄による単純平均株価として開発したものです。1928年から、現在のように30銘柄で構成される単純平均株価指数(実際は除数で修正)となりました。

 ダウ平均は、米国経済や各業界を象徴する大型優良株30銘柄で構成されており、その時価総額(30銘柄合計)は約7.52兆ドル(約812兆円)と、東証1部全体の時価総額(約586兆円)、日経平均(225銘柄)の時価総額(約356兆円)はもちろん、日本の名目GDP(国内総生産=約554兆円/2019年3月時点の年率換算)を大きく凌ぐ規模となっています(時価総額は7月17日)。

 ダウ平均は、S&P500指数やTOPIXのような時価総額加重平均指数ではなく、単純平均株価指数(過去の株式分割などを調整する除数で修正)ですので、時価総額が大きい銘柄よりも、株価の高い値嵩(がさ)銘柄の構成ウエイトが大きく、ダウ平均の変動に対する寄与度(構成ウエイト)も高くなります。換言すると、株価水準が高い銘柄の指数寄与度は大きく、株価が低い銘柄の寄与度は小さくなります。

 図表2は、ダウ平均を構成する銘柄の構成ウエイトの降順(高い順番)で一覧したものです。例えば、ウエイト1位のボーイングの株価は369ドル台と30銘柄中で最も高く、ファイザーの株価は42ドル台と最も低いので寄与度は小さくなっています。

 注目点としては、ダウ平均の年初来上昇率(+16.7%)を大きく上回る上昇率を示している銘柄には、ビザ(+35.8%)、マイクロソフト(+34.2%)、アメリカン・エキスプレス(+33.3%)、シスコシステムズ(+32.0%)、アップル(+28.9%)などデジタル革命の進展に伴い収益を伸ばしている企業群が多いことです。

 一方、ウエイトが高くて年初来上昇率も高いホーム・デポ、マクドナルド、ゴールドマン・サックス・グループなどは、ダウ平均の年初来堅調を牽引してきた銘柄群と言えます。

<図表2>ダウ平均の構成銘柄【指数寄与率(ウエイト)の降順】

ティッカー 銘柄名 ウエイト 直近
株価
年初来
騰落率
PER 配当
利回り
INDU ダウ工業株30種平均指数 100.0 27,219.85 16.7 17.1 2.3
BA ボーイング 9.21 369.52 14.6 25.2 2.2
UNH ユナイテッドヘルス・グループ 6.64 266.65 7.0 17.7 1.5
HD ホーム・デポ 5.37 215.61 25.5 21.1 2.5
MCD マクドナルド 5.32 213.71 20.4 26.0 2.2
GS ゴールドマン・サックス・グループ 5.31 213.30 27.7 8.8 1.9
AAPL アップル 5.07 203.35 28.9 17.0 1.5
V ビザ 4.46 179.15 35.8 31.3 0.6
MMM 3M 4.35 174.67 -8.3 18.5 3.2
TRV トラベラーズ 3.80 152.38 27.2 13.5 2.1
IBM IBM 3.56 143.07 25.9 10.2 4.5
DIS ザ・ウォルト・ディズニー・カンパニー 3.55 142.57 30.0 22.6 1.2
MSFT マイクロソフト 3.40 136.27 34.2 27.8 1.3
CAT キャタピラー 3.38 135.73 6.8 11.1 2.7
JNJ ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J) 3.29 131.86 2.2 15.6 2.8
UTX ユナイテッド・テクノロジーズ 3.24 130.10 22.2 16.1 2.3
AXP アメリカン・エキスプレス 3.17 127.08 33.3 15.4 1.3
CVX シェブロン 3.09 124.14 14.1 15.9 3.8
PG プロクター・アンド・ギャンブル(P&G) 2.89 115.94 26.1 24.8 2.5
WMT ウォルマート 2.86 114.60 23.0 23.6 1.9
JPM JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー 2.84 113.99 16.8 11.2 3.0
NKE ナイキ 2.18 87.50 18.0 30.2 1.1
MRK メルク 2.04 81.92 7.2 16.9 2.7
XOM エクソンモービル 1.88 75.48 10.7 18.4 4.5
VZ ベライゾン・コミュニケーションズ 1.43 57.22 1.8 12.0 4.2
CSCO シスコシステムズ  1.43 57.21 32.0 17.2 2.4
WBA ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス 1.36 54.52 -20.2 9.2 3.3
KO コカ・コーラ 1.30 52.18 10.2 24.4 3.0
DOW ダウ・インク 1.29 51.60 NA 12.1 5.3
INTC インテル 1.23 49.39 5.2 11.2 2.5
PFE ファイザー 1.06 42.74 -2.1 15.0 3.4
※上記はダウ平均の構成銘柄をウエイト(指数寄与率)の降順に示した一覧。*PER(株価収益率)と配当利回りは市場予想平均(Bloomberg集計)。※単位は、ウエイト、年初来騰落率、配当利回りは「%」、株価は「ドル」、PERは「倍」。※ダウ・インク(DOW)は2019年4月にダウ・デュポンから分離して構成銘柄となった。
出所:Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2019/7/17)

3万円程度でダウ平均の30銘柄に分散投資できる

 世界で最も有名な株価指数とも言える「ダウ平均」を構成する30銘柄に分散投資できる方法があります。「SPDRダウ工業株平均ETF」(SPDR Dow Jones Industrial ETF Trust)は、1998年1月に設定された米国で最も古いETF(上場投資信託)で、ダウ平均に連動する投資成果を目指し運用されています(ティッカーはDIA)。

 運用会社はステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズで、SPDR(スパイダー)は同運用会社によるETFシリーズのブランド名です。

 ETFの上場市場は、2008年11月にアメリカン取引所からNYSE(NY証取)Arcaに変更されました。DIAは、ダウ平均を構成する30銘柄を、ダウ平均とほぼ同じウエイトで株式を保有しています(図表2を参照)。

 同ETFの特徴としては、年間経費(信託報酬)率が0.17%と比較的低いことに加え、ドル建ての米国籍ETFでありながら毎月実績分配型ファンドであるということです。指数を構成する大型優良株から得られる配当金を原資として、毎月ほぼ確実に分配金が支払われます。

 図表3は、同ETFの一口当り取引価格と一口当り分配金の12カ月累計実績の推移を示したものです。価格パフォーマンスも分配金も、景気動向や相場変動によるブレを経ながら、長期の視点に立てば増加傾向を辿ってきたことがわかります。

 なお、東証上場ETFでも、ダウ平均に分散できるETF(NEXT FUNDSダウ・ジョーンズ工業株ETF/コード:1546=手数料0円ETF)もあります。DIAも1546も最低投資金額で3万円程度からダウ平均に分散投資できるツールとして注目したいと思います。

<図表3>ダウ平均に連動を目指す米国籍ETF<参考情報>

*上記は米国籍ETF(DIA)の取引価格と分配金実績(12カ月累計)の推移を示したものです。
*上記のETFは構成銘柄の配当金を実績分配金として支払う毎月分配型ETFです。
*上記は参考情報であり特定の銘柄を推奨する目的のものではありません。
出所:Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2019/7/17)

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