「裁定買い残」は5,124億円まで低下、「裁定売り残」は9,583億円に増加。投機筋の買いポジションは整理され、売りポジションが積み上がった状態
私がファンドマネージャー時代に、日経平均先物のトレーディングをする上で、重視していた需給指標に、「裁定買い残」があります。詳しい説明は割愛しますが、裁定買い残の変化に、外国人による投機的な先物売買の変化が表れます。
外国人が先物を買うと、日経平均が上昇し、(裁定取引を通じて)裁定買い残が増加します。外国人が先物を売ると、日経平均が下落、(裁定解消売りを通じて)裁定買い残が減少します。
近年の日経平均株価と裁定買い残は、以下のように推移しています。
日経平均株価と裁定買い残の推移:2007年1月4日~2019年7月16日(裁定買い残は2019年7月5日まで)
裁定買い残は、2007年以降でみると、3,000~6,000億円まで減少すると、増加に転じていました。リーマンショック後の安値(2009年)、ブレグジットショック後の安値(2016年)に、裁定残は3,000~6,000億円まで減少してから底を打っています。
日経平均は、裁定買い残が減少している間(裁定売り残が増加している間)、つまり外国人が先物を売っている間は下落します。ところが、裁定買い残が増加に転じる、つまり外国人が先物買いに転じると、上昇に転じます。
2007~2019年では、裁定買い残が3,000~6,000億円まで減少したところで、日経平均先物を買えば、タイミングよく日経平均が反発に転じ、利益を得られる可能性が高かったと言えます。
7月5日時点で、裁定買い残は、再び5,124億円まで低下しています。一方、裁定売り残は、9,583億円まで積み上がっています。差し引きすると、裁定売り残が4,459億円、上回っています。投機筋の先物買いポジションはほとんど整理され、先物売りポジションが積みあがっている状態です。短期的な需給指標として、「売られ過ぎ」を示唆しています。
ここまで、裁定買い残が減ったということは、外国人の投機筋は、リーマンショック時、ブレグジットショック時と同じくらい、日本株にネガティブと判断しているということです。ここからさらに悪材料が出ても、追加で大量の先物売りは出にくいと言えます。少しでもファンダメンタルズに改善の兆しが見えれば、外国人の先物買い戻しが出やすいと言えるでしょう。
裁定残を見ながらトレーディングする際の注意事項
裁定買い残はかなり低い水準まで減少しましたが、裁定残だけで投資判断すべきではありません。裁定残がいくらまで減ったら増加に転じるという明確な法則はないからです。その時々で、裁定残が底を打つ水準は異なります。
短期筋の買いポジションがほとんど整理されていることを意識しつつ、ファンダメンタルズ(景気・企業業績)の変化も見ながら、日経平均反転の時期を探っていくことになります。
株の動く方向を決める一番大切な要素は、ファンダメンタルズです。投機筋のポジションだけでは決まりません。ファンダメンタルズの変化を見つつ、外国人が日本株を見る目が変わるタイミングを図っていく必要があります。
裁定買い残が3.5兆~4兆円まで増加すると、減少に転じることが多い
2007年以降で見ると、裁定買い残が3.5兆~4兆円まで増加した後、日経平均は反落局面に入っていました。裁定買い残3.5兆~4兆円は、投機筋の先物買い建てが高水準になっていることを示し、短期的な「買われ過ぎ」を警戒した方が良いレベルです。
日経平均株価と裁定買い残の推移:2007年1月4日~2019年7月16日(裁定買い残は2019年7月5日まで)
ただし、今は、裁定買い残高が低すぎる状態です。短期的需給シグナルとして見ると、日経平均は「売られ過ぎ」と判断できます。需給指標だけで、将来の日経平均の方向が決まるわけではありません。
ただし、私は、今が2019年の世界景気悪化を織り込む最終局面で、2020年には世界景気は回復に向かうと予想しています。私の予想が正しいとすると、日経平均先物には、年末にかけて外国人の買い戻しが入っていくことになります。そうなれば、後から振り返って、「裁定買い残5,000億円」は買いシグナルだったということになります。
私の予想通りになるか否か、今後のファンダメンタルズの変化を注視していきたいと思います。
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