3メガ銀行の決算出揃う。好決算と言って良いと考える

 3メガ銀行(三菱UFJ FG、三井住友FG、みずほFG)の決算が出揃いました。前期(2019年3月期)実績に加え、今期(2020年3月期)見通しも示されました。海外で稼ぐ銀行に変わりつつあることがわかったので、私は好決算だったと言って良いと思います。

3メガ銀行の連結純利益:2014年3月期実績~2020年3月期予想

出所:各社決算資料。2020年3月期は会社予想。三菱UFJは会社目標

 国内商業銀行業務は、低金利の長期化で収益低迷が続いています。国内商業銀行業務の比率が高い地方銀行の収益悪化には、歯止めがかかりません。

  ところが3メガ銀行については、上の業績表の通り、低金利でも高水準の利益を稼ぎ続けています。特に、三菱UFJ FGは、毎年9,000億~1兆円の純利益を稼いでいることが、目を引きます。海外収益の拡大と、ユニバーサルバンク経営(証券・信託・リース・投資銀行業務などの多角化)への展開が、高収益につながっています。

みずほ、前期約7,000億円の特別損失。前向きな損失処理と評価

 みずほFGは前期(2019年3月期)、構造改革による特別損失約7,000億円を計上したため、純利益が大幅に縮小し、965億円となりました。ただし、今期(2020年3月期)純利益は4,700億円まで回復する見通しです。前期の特別損失額が大きいので、投資家に不安視されましたが、内容を見ると、将来の損失を前倒しで認識する前向きな費用計上だったと評価できます。

 前期7,000億円の特別損失のうち、5,007億円は固定資産の減損です。そのほとんどが、国内商業銀行部門に属するソフトウエアの減損です。通常ならば、5年くらいかけて償却していくものを、前倒しで損失計上しました。その分、将来発生する費用が減少します。

 特別損失の残りのうち1,947億円は、保有する外債などの含み損を、損失処理したものです。みずほFGは、前期末で有価証券ポートフォリオに、含み益が1兆6,518億円あります。含み損は410億円しかありません。今回の損出しでは、含み損だけ先に計上し、含み益は温存した形です。その分、将来発生する有価証券売却損が減少し、売却益が増加します。

 前期、みずほFGは、7,000億円の特別損失を出しても赤字にならず、965億円の純利益が残りました。ゆとりがあったからこそ、将来発生する損失を前倒し計上が可能だったと言うこともできます。

3メガ銀行は、海外収益の拡大とユニバーサルバンク経営で高収益を稼ぐ

 3メガ銀行は、海外収益の拡大と、ユニバーサルバンク経営(証券・信託・リース・投資銀行業務などへの多角化)によって、高収益を保ってきたことがわかります。

 3行とも、以下の通り、海外収益の比率が高くなっています。

◆三菱UFJ FG
 2019年3月末時点で、海外貸出金の比率が、貸出金全体の42.8%を占めるまで拡大しています。低金利の長期化で、国内で預貸金利ざや(貸出金利と預金金利の差)が低下していることが懸念されていますが、海外では高い利ざやがとれています。前期の預貸金利ざやは、国内が0.8%、海外が1.34%です。
 前期の事業別営業純益に占める、グローバル事業(GCBとGCIBの合計)の比率は、30%に達しています。

◆三井住友FG
 2019年3月末時点で、海外貸出金の比率が、貸出金全体の22.4%まで拡大しています。三井住友銀行(単体)で、前期の業務粗利益のうち、国際業務が占める比率は39%に達しています。

◆みずほFG
 2019年3月期の下期平均残高ベースで、海外貸出金の比率が、貸出金全体の約33%まで拡大しています。前期の業務純益に占める海外事業の比率(グローバル・コーポレート事業のみでカウント)は、42%に達しています。

 このように、海外および多角化で稼ぐ力のある3メガ銀行は、日本の長期金利がゼロ%でも、高収益を稼いでいく力があります。

3メガ銀行の投資魅力は割安な株価と、海外業務の成長性

 3行の投資魅力は、配当利回りが高く、PER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)などの株価指標で見て、株価が割安であることです。

3メガ銀行の株価バリュエーション:2019年5月20日現在

コード 銘柄名 株価 配当
利回り
PER PBR 最小
投資金額
8306 三菱UFJ FG 504.4 4.9 7.2 0.40 50,440
8316 三井住友 FG 3,864 4.6 7.7 0.50 386,400
8411 みずほFG 158.8 4.7 8.5 0.46 15,880
※単位株価:円 配当利回り:% PER:倍 PBR:倍 最小投資金額:円
出所:配当利回り・PERは会社予想ベース、三菱UFJ FGのPERは会社目標純利益から計算、楽天証券経済研究所が作成

 3メガ銀行は、4.6~4.9%と配当利回りが高く、好配当利回り株として長期投資していく魅力が高いと判断しています。

 PBRは、0.4~0.5倍と、解散価値といわれるPBR1倍を大きく下回っています。これは、日本が金融危機の最中だった1998~2002年よりも低い評価です。当時より、不良債権比率が低下し、財務内容が格段に改善したことを考えると、低すぎる評価だと判断しています。3社とも、保有する有価証券ポートフォリオに、巨額の含み益もあります。  

 2019年3月末時点で、三菱UFJは3兆3,356億円の含み益があります。三井住友FGには、2兆4,102億円の含み益があります。みずほFGには、ネットで1兆6,108億円の含み益があります。今後、政策保有株式を減らしていく中で、長期にわたり高水準の有価証券売却益を出し続けていける見込みです。

 これだけ強固な財務を維持していることを考えると、PBRで0.4~0.5倍の評価は低すぎると考えています。将来、株価が見直されて上昇する余地が大きいと判断しています。

3メガ銀行の投資判断

以下の通りです。

【1】私は、3メガ銀行とも、長期的な投資価値は高いと判断しています。

【2】3メガ銀行の投資魅力に順位をつけると、1番が三菱UFJ、2番が三井住友FG、3番がみずほFGと判断しています。

 3メガ銀行は、収益低下が続く国内商業銀行業務だけでなく、ユニバーサルバンク経営(信託・証券・リースなどへの多角化)、海外展開(米国やアジアの銀行への出資)でも収益を稼いでいます。多角化が進んでいる三菱・三井住友の投資魅力は高いと考えています。国内商業銀行への依存が相対的に高いみずほFGの投資魅力が3番目です。

【3】3メガ銀行以外の銀行株は、保有すべきでないと考えています。

 特に地方銀行は、今のままでは将来、大半が本業で赤字に陥る懸念があり、投資は避けた方がよいと考えています。ゆうちょ銀行(7182)も、現時点で、投資魅力が低いと判断しています。

 今回、触れませんでしたが、金融セクターで、海外で収益を拡大させる期待のある東京海上HD(8766)(予想配当利回り4.5%)、オリックス(8591)(予想配当利回り5.7%)も、株価が割安で、投資価値は高いと判断しています。

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