先週の日経平均は「トランプ発言」を受けて急落

 先週の日経平均株価は1週間で455円下落し、2万333円となりました。2月7日、対中関税引き上げ回避に向けた米中通商協議の交渉期限である3月1日までに、中国の習近平国家主席と会談することにはならないだろうと、トランプ米大統領が述べたことから、貿易戦争がエスカレートする不安が再燃。8日の日経平均は、前日比418円安の2万333円と急落しました。

日経平均週足:2018年1月4日~2019年2月8日

 

 2万1,000~4,000円のボックス圏で推移していた2018年の日経平均は、12月にボックスから下放れした後、2019年に入ってからボックスに向かって急反発していました。ところが「2万1,000円の壁」に打ち返されて、いったん反落した形です。

トランプ発言に反応した日経平均急落は、過剰反応と考える

 8日の日経平均急落(418円安)は過剰反応と考えますが、これには3つの理由があります。

1:交渉決裂を匂わせるのはいつもの手口、米中通商協議は何らかの「落としどころ」に向けて協議が進んでいるとの見方を継続

 米中通商協議で、トランプ大統領はツイッターやメディアでの発言を通じ、たびたび株式市場を混乱させてきました。急に楽観的な発言をしたり、急に悲観的な発言をしたりしてきました。

 1月には、「習近平国家主席と、2月後半に会う予定」とトランプ大統領は発言し、株式市場を安心させました。しかし、今回は交渉決裂を匂わせる発言。これは、これまで何回も使ってきた交渉のテクニックと考えられます。

 中国側にも米国側にも、交渉を決裂させる気はないものと考えられます。2月中に交渉がまとまらなくても、米国は期限を延長して交渉を続け、3月1日に追加関税を発動することはないと考えています。

 中国はこれまでに、かなり米国に歩み寄りの姿勢を見せています。貿易戦争の影響で中国経済が大きなダメージを受けているため、なんとかして通商協議を決着させたいわけですがそれだけではありません。中国政府自体、輸出で稼ぐビジネスモデルをやめ、経済の構造改革を進める必要があると認識していることにもよります。中国政府の一部には、「外圧(米国の圧力)を利用して中国経済の構造改革を進めるべき」との考えもあるようです。

 トランプ大統領は、閉鎖的だった中国市場をこじ開けることで、既に一定の成果は得つつあります。ただ、ここで簡単に合意することなく、粘り腰で交渉を続けているわけです。中国企業による「知的財産権の侵害」や「技術移転の強制」の問題も一気に解決しようとしています。そのために、交渉決裂も匂わせる「ハ-ド・ネゴシエーション」をやっているわけです。本当に交渉を決裂させる意思はないと考えられます。

2:2月14~15日に閣僚級の通商協議が行われる

 トランプ米政権は8日には、北京に代表団を派遣し、14~15日には閣僚級の通商協議を行うことを発表しました。米側の交渉責任者であるUSTR(米通商代表部)のライトハイザー代表が中国側と交渉します。それに先立ち、11日から北京で次官級協議が開かれています。ギリギリの交渉が続いています。

 トランプ大統領は、米中首脳会談(トランプ大統領と習近平国家主席の会談)が実現するまでは最終合意とはならないと表明しています。2月中に最終合意にならなくとも、交渉は続けると考えられます。

3:NYダウは日経平均ほど下がっていない、リスクオフの円高も進んでいない

 NYダウ平均もトランプ発言で下がりましたが、日経平均ほど大きく下げていません。NYダウは堅調です。

NYダウ週足:2018年1月2日~2019年2月8日

 

ドル円為替レート日足:2018年10月1日~2019年2月11日

 

世界景気は「2019年悪化(減速)、2020年回復」の見方を継続

 昨年2018年末のレポートに書いた通り、私は世界景気は2019年悪化、2020年回復と見ています。1~3月は2019年の景気悪化を織り込む最終局面になると予想しています。

 そしてその見方を前提に、今年の日経平均は1~3月に安値をつけ、4月以降上昇すると予想しています。先週は貿易戦争の不安で、日経平均が大きく下がりました。下がったところは買い場と判断しています。

▼もっと読む!著者おすすめのバックナンバー

2018年12月25日:2019年の日本株:どんな年になるか?投資戦略は?

▼他の新着オススメ連載

今日、あの日:バレンタインデーイベントが発祥【61年前の2月12日】