これから業績悪化のニュースが増えることに注意

 昨年12月25日に一時1万9,117円まで売られた日経平均株価は、その後、反発が続き、2万円台を回復しています。外国人投資家による大量の先物売りで一気に下げ過ぎた分、反動が出ていると考えられます。

 ただし、このまま一本調子の上昇が続くとは考えていません。1-3月は、日本企業の業績悪化を示すニュースが増える見込みだからです。米中貿易戦争の影響を受けて、中国関連・設備投資関連株には、業績見通しの下方修正が増えると予想しています。また、米中ハイテク戦争、ファーウェイ・ショック【注1】、アップル・ショック【注2】の影響で、電子部品や半導体関連株でも業績悪化が増えそうです。

 それに加え、足元、原油など資源価格が急落した影響も、1-3月の企業業績にマイナス影響を及ぼします。石油精製・石油化学・鉄鋼・非鉄などで業績の下方修正が増える可能性があります。

 1月後半から、10~12月期決算発表が本格化しますが、そこでネガティブ・サプライズ(悪くて驚き)となる決算が増える可能性に注意が必要です。

【注1】ファーウェイ・ショック
米国政府が中国の通信大手ファーウェイ社を、安全保障上の理由から政府調達から締め出し、それに同調する動きがオーストラリア、ニュージーランド、日本、ドイツ、フランスに広がっている。ファーウェイ社は売上高で約10兆円規模、スマホ生産で世界第2位、携帯電話基地局世界トップの巨大企業。ファーウェイ向けに部品などを納入している日本企業(パナソニック、京セラ、村田製作所、JDIなど)に、悪影響が及ぶ見込み。

【注2】アップル・ショック
米国政府によるファーウェイ社への制裁に反発し、中国で米アップル社のiPhone不買運動が広がっている。その影響に加え、2018年秋に発売した新型iPhone3機種の販売不振もあり、アップル社は、1-3月の新型iPhone生産を当初計画から10%下方修正したと伝わっている。アップル社の高級スマホには、日本製電子部品が多く使われており、関連企業に悪影響が及ぶ見込み。

 

これから回復が見込まれる「インバウンド消費」に注目

 世界景気の減速を受け、これから悪化が見込まれるセクターが増えている中、逆に、これから回復が見込まれる分野もあります。それが、インバウンド消費【注3】です。電鉄・化粧品など、その恩恵を受けるインバウンド関連株には投資しても良いと考えています。

【注3】インバウンド消費
訪日外国人観光客による日本国内での消費支出を「インバウンド消費」と呼びぶ。インバウンド消費の増加で恩恵を受ける銘柄が「インバウンド関連株」。

訪日外国人観光客数の推移:2011年1月~2018年11月

出所:日本政府観光局(JNTO)より楽天証券経済研究所が作成

 昨年6月から9月まで、豪雨・地震などの天災が集中した影響が出て、訪日外国人数が減少しました。大阪府北部地震、西日本豪雨、大型台風の相次ぐ来襲、関西国際空港閉鎖、北海道地震などが影響しました。

 ただし、10月以降は回復に転じています。日本が観光地として魅力的であること、アジアで海外旅行ができるくらいまで中間層の所得が増加したことから、今年も訪日外国人数は伸び続けると予想しています。

 ちなみに、2011年3月の東日本大震災の後は、外国人観光客の減少が1年あまり続きました。地震後に発生した福島第二原発の事故による風評被害の影響が長引きました。天然災害のみの影響ならば、過去の経験則から数カ月で一巡すると考えています。

 

2015年にインバウンド・バブル、16年にバブル崩壊があった

 一口にインバウンド・ブームと言っても、2015年以前と2016年以降では、内容が異なります。

◆2015年のインバウンド・バブル

 中国人観光客の爆買いに牽引されてインバウンド消費が急激に拡大し、「インバウンド・バブル」が生じました。高額商品を売る銀座の百貨店などが、大きな恩恵を受けました。中国人観光客の爆買いには、実質「個人輸入」とみられる買い物が含まれていました。たとえば、1人で高級炊飯ジャーをまとめて10個買うような観光客も。中国に持ち帰って転売して利益を得ることが目的であったと考えられます。

 

◆2016年のインバウンド・バブル崩壊と、17年以降のブーム復活

 中国政府は、海外で購入した商品を中国に持ち込む際にかかる関税を2016年4月に大幅に引き上げました。その後、中国人による日本での爆買いは鳴りを潜めました。そのため、2016年は、「インバウンド・バブル崩壊」の年に。ただし、その後も訪日外国人の数は増え続け、2017年以降、インバウンド・ブームが復活。このタイミングでは、自分のための買い物が増えました。日本製品の安全性への信頼が高いことから、化粧品、食料品、医薬品など自分の体に取り込むものがよく売れるようになりました。また、日本での体験にも、お金をかけるようになりました。「コト消費」といわれるものです。その恩恵を受ける銘柄の業績が好調です。

 

いろんな種類があるインバウンド関連株:今は電鉄と化粧品に注目

 インバウンド消費拡大で恩恵を受ける企業は、電鉄、化粧品、食料品、テーマパーク、旅行代理店、ドラッグストア、家電量販店、百貨店などの業態に幅広く存在します。世界景気減速リスクが高まった今、投資するのは、世界景気変動の影響が相対的に小さいJR各社、化粧品が良いと判断しています。JR、化粧品各社には、魅力的な株主優待を実施している企業が多いことも評価できます。

 ただし、JR東海は、ディフェンシブな好業績株として、昨年、日経平均が上昇する中で逆行高しているので、今、投資するのはあまりタイミングが良くないかもしれません。JRでは、東日本、西日本、九州に投資妙味があると考えています。

参考:インバウンド消費拡大で恩恵を受ける銘柄

コード 銘柄名 業態
9020 JR東日本 電鉄
9021 JR西日本 電鉄
9022 JR東海 電鉄
9142 JR九州 電鉄
4911 資生堂 化粧品
4922 コーセー 化粧品
3048 ビックカメラ 家電量販
3086 J.フロントリテイリング 百貨店
4530 久光製薬 医薬品
4661 オリエンタルランド テーマパーク
7532 ドンキホーテHD 雑貨小売
9201 日本航空 空運
9202 ANA HD 空運

 

「コト消費」拡大で恩恵を受けるJR4社

 JR4社は、前期(2018年3月期)、そろって最高益を更新しました。ところが、今期(2019年3月期)は地震や西日本豪雨の影響で、2社(西日本、九州)が減益となる見通しです。JR東日本、東海も増益率が鈍化します。

 ただし、天災の影響は今期の特殊要因です。来期(2020年3月期)は、大規模災害が特別に多い年にならない限り、JR西日本は、最高益を更新すると予想しています。JR九州は来期も減益が続く見通しですが、九州新幹線や観光・不動産事業を伸ばしていくことで、いずれ最高益を更新していく力があると判断しています。

 新幹線収入の拡大によって、JR東海・東日本・西日本は、安定的に最高益を更新してきました。新幹線は、かつてビジネス客中心の乗り物でしたが、今や「国民の足」として、利用が拡大。そこに、外国人観光客の利用拡大がさらに追い風となっています。グリーン席の利用率増加も収益拡大に寄与しています。

 JR九州が導入で先行した豪華寝台列車(クルーズトレイン)「ななつ星」の旅は、予約倍率が10倍前後で好調です。動くホテルのような快適さが受けています。JR九州の成功を見て、JR西日本・東日本も豪華寝台列車の旅を導入しましたが、いずれも好評です。

 

◆「モノ消費」では化粧品の成長が続くと期待

 日本の化粧品がアジアで好調です。グローバル・ブランドとして成長を始めました。化粧品は、インバウンド需要拡大の恩恵をフルに受けています。日本で買った後、帰国してからも、越境EC(国をまたいでの無店舗販売)を使って、リピート需要も入ります。資生堂やコーセーなどがその恩恵を受けています。

 

 

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